CODE15.5 監視者たち

 フト、目覚メルト、オレハアル場所ヲ上カラ眺メテイタ。

 フワフワト、体ガ動クタメ、何トナク落チ着カナイ。空中ヲ飛ビ交ウ電気ノ信号ニ乗ッカッテイルヨウナ、ソンナ感覚ダ。


 決マッテ、コウイウ時ニ見タコトハ、忘レテシマウ。記憶スルコトノデキル媒体ニ繋ガッテイナイカラダロウ……。

「オイ、ケイタ」

 オレハケイタニ呼ビカケテミタ。シバラク待ッテミタガ、返事ハナイ。


「オイ。聞コエナイノカ? 怪シイ男タチガ、オレタチノコトヲ話シテイルゼ……」

 ヤハリ返事ハナク、繋ガラナイ感ジダッタ。離レテイルセイカモ、シレナイ――

 オレハタメ息ヲツイタ。


 ソコハ暗クテ、狭イ所ダッタ。数人ノ男タチガイテ、ケイタノ様子ヲモニターシテイル。良カラヌコトヲ相談シテイルコトハ、直感デ分カッタ。


 クソ。体ガ安定シナイ……。

 コノ状態ヲ維持スルノモ限界ダッタ。モウ少シ、見テイタカッタガ、ケイタノ脳ニ戻ルシカナイ。


 イツマデ、見テイラレルカ、分カラナカッタガ、オレハ、薄レユク意識ニ耐エナガラ、男タチノ監視ヲ続ケタ。内容ヲ覚エテイラレルカドウカハ、随分ト怪シカッタガ。


      *


 暗闇の中、PCモニターの微かな光が辺りを照らしていた。そこは、ワンボックスカーの後部座席のようだったが、窓は遮光されていた。


 ヘッドセットを頭に付けた男が二人いて、それぞれがノートパソコンに向かっている。

 車内には、キーボードを打つ音だけ響き、張り詰めた緊張感のような空気で満たされていた。


 ガラッと音を立て、スライドドアが開き、精悍な男が、一人入ってきた。外の光で車内の男の一人が黒のパーカーを着ているのが見える。

「Kの様子はどうだった?」

 パーカーの男が、乗り込んできた男に声を掛けた。


「ああ、凄いもんだ。事前の情報以上だったよ」

「情報以上?」

「ああ、彼自身、変態したんだ」

「武器を出すだけじゃなくか?」

「ああ、そうだ」

 パーカーの男が頭を振った。


「Mも出たんだな?」

「そうだ」

「実際目に見えるのか? こっちの世界でも?」


「予想通りだ。音の結界の範囲内なら目に見える。というか、あれの攻撃を受けると、そのままダメージを受けるだろうな。映っていないと思うが、動画も撮ってある。音も、録ってあるから、後で再現できると思うよ」


「そうか……やはり、音か。デジタルのデータを音によって人が感受し、さらにそれが現実と間違うほどに脳に錯覚を起こさせるなんてな。最近の事件から想定していたとは言え、衝撃的だな」

 パーカーの男が口笛を吹いた。


「これから、このデータの解析だが、仮説通りかな?」

「さて、それは結果次第だが、解析が終わるのを待ってる暇はないぞ」

「ああ、だが、死んじまっちゃ元も子もないぜ」


「分かってるさ。だから、対策を打ったんじゃないか」

「そうだな。じゃあ、作戦を開始しよう」

「了解」

 セルモーターの音が響き、エンジンが掛かる。


 パーカーの男が、音を鳴らして首を回した。

「さて、慎重にいかないとな」

 誰に言うとも無く、男が呟いた

 男たちの空気が、一際引き締まり、自動車が動き出した。

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