八十三・三センチ
「じゃあな、朝葉。おまえのことは、きっと忘れない」
消え入りそうな姿で手を振る朝葉に、聖が言葉を送る。
「ひじりん……」
「いや、忘れるかも」
「うそ……」
つゆが浅いため息をつく。
「茶番はいいから、早く戻ってきて」
「だって……数えるの忘れちゃった……」
朝葉がうわずった声を出す。
つゆは困った顔で聖に助けを求める。
「いや、こいつ本気で言ってるから」
「高羽さん……」
つゆが朝葉に歩み寄り、目の前にスマホの画面を突きつける。
「これを見て。何秒になってる?」
画面にはストップウォッチの表示が煌々と映し出されている。
「〇・二四秒……」
「いいわ。じゃあもう一台分進んで」
わけがわからず、つゆに背中を押されるまま非常口の鏡をくぐる。
待ち構えていたつゆが、また画面を見せる。
「これは?」
「〇・二七……」
「オッケーよ。そのまま十台分進んで」
「十台も?」
「そうよ。不満なら十一台でもいいわよ」
「いや、十台で……」
歩き出そうとした朝葉が、つゆを振り返る。
「姫も数えといてよ……?」
「適当でいいのよ」
「そんなバカな!」
「いいから早く行けよ」
大きな声で一から数えながら、朝葉がバスの中を行き来する。二人から見れば同じバスの中を右往左往しているようにしか見えないが、朝葉からすれば一直線に進んでいるのだ。
「……十! はい、十台進んだよ!」
息を切らす朝葉に、落ち着き払ったつゆが画面を提示する。
「えーと……、〇・五八です」
「わかったかしら?」
「数字が、増えてってる」
「それで?」
「それだけ」
つゆがたっぷりと時間をかけて肩を落とす。
しばらく待ってもつゆが顔を上げようとしないので、聖が面倒臭そうに引き継いだ。
「あと十一台進んでみな」
「やっぱり十一台?」
「ほら、行った行った」
「なんかわかんないけど、やってやる!」
鼻息を荒くして、海外のアニメキャラクターのように大振りな動きで、朝葉は再び動き出した。
つゆも聖も座席に座り、穴の空いた風船のようにびゅんびゅん飛び回る朝葉を静かに眺めている。眺め疲れたつゆが眼鏡を外し、眉間を揉んでいるところに、ようやく空気を出し切ってしぼんだ風船がひらひらと落ちてきた。
「どうだ……、きっちり十一台……走りきったぜ……」
つゆは無言で画面を見せる。
「〇・九三秒……」
「おかえりなさい」
朝葉はぽかんとした顔でつゆを見つめ返している。
最後部の座席にふんぞり返って長い足を投げ出した聖が、待ちくたびれたように吐き捨てる。
「おまえがボタン押した時点で、全部のバスのストップウォッチがちょっとずつずれた時間で止まったんだよ。それ見りゃ、あたしらがいるバスなんて、いちいち数えなくてもわかる」
「天才って、案外近くにいるんだね……」
眼鏡をかけ直したつゆが、気を引き締めるように座り直した。
「高羽さんも戻ってきたことだし、どうするか考えましょう」
「朝葉が走ったおかげで、時間がずれてることもわかったしな」
呼吸の落ち着いた朝葉が、つゆの通路向かいの座席につく。
「……それで、結局なんなんだろ、このバス? 鏡じゃないなら、全部ほんとにあるってこと?」
「本当に存在してるかは、わたしと市井さんも入れないし、何とも言えないわね。高羽さんは別として」
「鏡じゃねえとしても、コピーだよな。一回おきに反転してることを除けば」
「そうね。内容に違いがある以上、光学的な意味で鏡とは言えないわ。このオリジナルのバスを、常に〇・〇三秒ずつ遅れて鏡写しでコピーし続ける、何かよ」
聖が思い付いたように身を乗り出す。
「ほんとにこのバスがオリジナルなのか? 朝葉が行った方は確かに遅れてたけど、逆側はどうなんだ?」
そう言って、ちらりと朝葉を見る。
「はいはい。行ってきますよ」
朝葉はしぶしぶ立ち上がる。
非常口から入れ替わりに現れた朝葉が、つゆのスマホを見て、
「〇・九〇」と読み上げる。
「やっぱり〇・〇三秒遅れてるわね」
「ここがオリジナルで間違いねえな」
ふと、隣のバスで車内を見回していた朝葉がつぶやく。
「このバスを爆破してさ、ほんのちょっとのずれの間に脱出できない?」
「どうやって爆破するかは置いといて、おまえの行動は全部のバスで同時に起こってるんだから、全部のバスがもれなく爆発して終わりだろ」
「ずれも〇・〇三秒しかないから、その間に何かができるって時間じゃないわね」
「だいたいそっちのバス爆破したら、おまえはどうすんだよ」
「走って逃げる」
「〇・〇三秒で逃げるのか?」
「タイムポリスだよ? ロケットエンジンくらい搭載してるよ」
最後部に座っていた聖の姿は、二人には見えていなかった。そのため、聖の目つきがとつぜん変わったことにも気がつかなかった。
急に押し黙り、神妙な顔でバスの前方を見つめている。その視線は、運転手の後頭部、いや、運転席の計器類に注がれているようだった。
「そうだ……エンジンだ……」
囁くようなつぶやきに、つゆが振り返った時、聖が勢いよく立ち上がった。
「ただの箱じゃねえんだ。部屋じゃねえんだよ。こいつは、バスなんだ」
「何よ、どうしたの?」
「このバスを中心に、周りのバスがちょっとずつ遅れてコピーされてるってんなら、このバスを動かしたら、どうなる?」
つゆと朝葉の表情も、同時に変わった。
「なるほど、そうだわ……。このバスとコピーが、もし三次元空間上に並んでるとしたら……」
「うそ……他のバスぶっちぎって、逃げれる……?」
わずかに差しはじめた光明を互いの瞳の中に探すように、三人は目を合わせる。
「けど、ぶっちぎって、どうするの?」
朝葉の言葉で、その光がかき消えた。聖も再びシートに身体を預ける。
「……そうだよな。あたしらはバスから出なきゃいけねえのに、バスで爆走したって意味ねえよな」
「惜しいところまで来てる気はするんだけど……」
「なんにしても、やるのはわたしがそっちにいる時にしてね。戻れなくなっちゃうから」
再び、聖の表情が変わった。座席から背中を起こし、朝葉を見つめる。
「戻れない……? なんでだ?」
「だって、入口もずれちゃうじゃん」
つゆも何かに気づいたように立ち上がる。
「そうよ……。入口もずれるんだわ」
「朝葉、すぐ戻ってこい」
最後部の座席から、最前部の運転席へ、聖が車内を走る。つゆも遅れて追いかける。朝葉は腑に落ちない顔をして、非常口から戻ってくる。
「市井さん、バスの動かし方なんてわかるの……?」
「親父も兄貴も車好きだから、あたしも運転自体はなんとなくわかる」
傾いた運転手を突き倒し、聖が運転席に入る。
「バスも同じだといいんだけどな……」
細かく並んだ計器類を一つ一つ確認しながら、聖がエンジンキーを探す。
「あったぞ。これで……」
キーを回すと、耳馴染みのある破擦音の連続に次いで、車体を細かく震わせるエンジンの振動が起こった。
「かかった……!」
倒れた運転手の顔に座り、足元を確認する。
「アクセル、ブレーキ……、これがクラッチだよな……。ギアは一速からでいいのか……ってか、ドア開けたまま走れるのか……? 全然わかんねえ……、けど、適当にやってみるしかねえな」
「ひじりん、大丈夫? 事故んないでよ?」
「事故るもなにも、前が見えねえからな」
フロントガラスには、脂汗をにじませた聖の顔、不安そうな口ぶりの裏に興奮が隠しきれない朝葉の顔、裏表もなくただ不安そうなつゆの顔が映っている。
バスの前にどんな景色があるのか、道はあるのか、そもそも空間があるのかさえも、しらしらと車内灯を跳ね返すだけの鏡は、何も明かそうとしない。
それでも、彼女らはアクセルを踏み込んだ。
止まったように景色を変えない鏡の世界のバスに生まれた、ほんのわずかな慣性が、三人の身体を揺らした。
「動いたぞ!」
速度が足りないせいか、窓から見える景色は変わらない。しかし聖がギアを変えるたびに、スピードメーターの針は見る間に角度を上げていく。
闇雲な操作がたまたま奏功したのか、乗り口の扉は閉まったものの、降り口の扉は開いたままになっていた。
つゆはスマホの計算機能とにらみ合っている。
「隣のバスが、このバスを〇・〇三秒遅れてコピーしてるとしたら、ええと……時速百キロまで上げるとすると……」
「時速十万メートル割る三千六百で秒速だ! それに〇・〇三掛けてみろ!」
聖がギアを四速に入れながら叫ぶ。メーターの針は時速五十キロに掛かっている。
事実、聖が車を運転するのはこれが初めてだった。聖の兄は、父親の影響で高校在学中に普通免許を取得し、よく聖と末の弟を父親の車に乗せ、マニュアル車の運転について自慢げに見せびらかしたのだった。繰り返し見せられているうちに、聖の頭にも運転の手順はおおよそ叩き込まれていた。
それにしたところで、普通自動車よりも操作に癖のある路線バスを初めての運転でこれだけ淀みなく走らせることができているのは、聖の類まれな運動神経と鋭敏な身体感覚によるものだと言うほかない。
左手にシフトレバーをつかみ、右手はハンドルに軽く添える。どちらにハンドルを切っても、どのみち前は見えない。
靴の裏から、三人の運命を決めるドラムロールのように、限界まで燃やされたエンジンの振動が伝わってくる。聖の昂った神経と呼応して、メーターの針も急速に回っていく。
「〇・八三三三メートル……」
計算結果を見て、つゆがつぶやいた。
ギアがトップに入る。針は時速七十キロを指そうとしている。
「八十三・三センチ……。時速百キロで、隣のバスとのずれは、八十三・三センチよ!」
二人にも聞こえるように、つゆが声を張り上げる。
「見て……窓の外が!」
朝葉が指差す方を見ると、窓に映っていた車内の風景が、後方に向かってずれはじめている。それぞれの窓の形に切り取られた鏡が、窓枠から外れ、後方に押し流されていく。ずれた隙間から、別の景色らしきものがのぞいている。
「八十三・三センチ……。そんだけありゃ、人がすり抜けるにはじゅうぶんだな」
聖はアクセルを目一杯踏み込み、メーターを見た。時速は八十キロを超えている。聖はそこで初めて、開けたままにしていた降り口の扉を見た。
降り口の鏡は、既に三分の二ほどが後方に押し流されていた。その横から、見慣れた学校前の景色と、目のくらむほど鮮やかな空が現れていた。
「青空だ……」
バスは疾駆していたが、隙間からのぞいた風景は止まっている。今、あの隙間に飛び込めば、このバスから脱出できるはずだ。
聖はアクセルを限界まで踏み込む。
メーターの針は時速百キロを超えた。夏の風景が、少しずつ広がっていく。
「外が見えたぞ……! 今のうちに、飛び込め!」
手すりにつかまり成り行きを見守っていた二人に、聖が叫ぶ。
「ひじりんは、どうするの!」
「おまえらが先だ! 早く!」
両手でハンドルを握りしめ、アクセルにかけた足に力を込める。
「市井さん、そこから離れられないじゃない……!」
「そうだよ! 運転しながら脱出するなんて、無理じゃん!」
「大丈夫だ、考えがある……!」
それでも二人は動こうとしない。何か別の解決策を探そうと視線だけが泳いでいるが、この期に及んで次善策などないことは、二人にも痛いほどわかっていた。
「ああ、くそっ……」
聖に、考えなど、なかった。
自分を置いて去ろうとしない親友の優しさが、ただもどかしかった。苛立ちに任せて髪の毛をかき乱そうとしても、編み込まれた金髪の上を、指は虚しくかすめるだけだった。
焦りが募るばかりの聖をよそに、針は時速百十キロを指そうとしていた。
「朝葉! つゆ!」
二人に向かって、聖が叫ぶ。
「頼む……、今しかないんだ……。あたしを……信じてくれ」
聖とつゆの視線が交差する。張り詰めた聖の表情が、その目が、今にも噴き出しかけた焦燥を、言葉よりも切実に訴えていた。
つゆは唇を結び、朝葉の腕をつかむ。
「行きましょう。市井さんを、信じて」
「でも……」
荒く揺れるバスの中、つゆが無理やり朝葉の手を引き、降り口に迫る。目の前には朝日に照り返すバス停の景色がのぞいている。
振り返ると、運転席で計器をにらみつける聖の姿が見えた。その力強い横顔に命運を託し、つゆは降り口に飛び込んだ。
「ひじりん……!」
朝葉も引っ張られるように扉を抜ける。
二人が出て行ったのを確認すると、聖はハンドルを握り締め、じりじりと振動を続けるスピードメーターの針を見た。
「さて、どうすっかな……」
すでに針は最大目盛である百二十キロに達している。
その針の上を、聖の頬を伝った汗の雫が、小刻みに震えながら流れていった。
石畳に転がり出て、振り向いた二人の前にあったのは、何の変哲もない、いつもの市バスの扉だった。
奥には、ハンドルをにぎった運転手が見える。二人は、見慣れた世界に戻ってきた。しかし、聖の姿は、どこにも見えない。
「ひじりん!」
朝葉がバスの降り口に駆け込み、車内を見回す。乗客は一人もいない。
「どうなさいました?」
運転手が間伸びした声を出す。
「いや……友達が……」
つゆが後ろから肩に手をかける。
「高羽さん、このバスじゃない。ここに、市井さんは、いないわ……」
バスを降りた二人は、今にも発車しようとするバスに向かって、並んで立ち尽くしていた。いつ閉まるともしれない扉から、勢いよく聖が飛び出してくるのを、祈りながら待ち構えた。
バスの扉が閉まる。
聖は、降りてこなかった。
低いエンジン音を唸らせて、バスが発車した。
電源を落としたように、朝葉が膝から崩れた。ざらついた石畳の凹凸が、朝葉の白い膝に食い込んだ。
彫刻のように凍りついた朝葉の横顔を見て、つゆはふと、何もかもが薄らいでいく夢の中にあるような錯覚を覚えた。この夢が覚めた時、嫌でも押し寄せるであろう現実感と対峙するのが、ひたすら恐ろしかった。
つゆは目の前を走り去ろうとするバスを見る。車体の側面に描かれた大きな目玉が、二人を馬鹿にするように、とぼけた一瞥を残していく。
そうして、永遠とも思える時間をかけて、バスは二人の前から去っていった。
「……高羽さん、行きましょう」
そう言ったつもりだったが、言葉になっているか、つゆ自身もわからなかった。
朝葉の横に座り込み、その背中にそっと手を置く。
「わたしたちが、市井さんを、探さなきゃ……」
油の切れた機械のように、朝葉がぎこちなく首を上げる。
その朝葉の視線が、前方を捉えたまま固まった。
つゆもハッとして目を見開く。
バスが消えたあとの道路に、何かがうずくまっている。それはもぞもぞと形を変え、ゆっくりと立ち上がった。
「いてーな……、勢いあまって着地しそこねた……」
「ひじりん!」
「市井さん!」
二人が、叫ぶと同時に駆け寄る。
「ちょうど、車が来てなくてよかったよ」
道路の真ん中で、朝葉が聖に抱きつく。
「よかった……!」
「なんだよ、信じろって言ったろ」
聖が笑う。朝葉が聖の胸に顔をこすりつける。つゆも安堵の微笑みをたたえて、帰ってきた聖を見つめた。
しがみつく朝葉の頭に手を置き、聖が改めて、青空を見上げる。
「出れたんだな……」
背後から、車のクラクションが響く。
「ほら、行くぞ」
二人の背中を叩き歩き出した聖の後ろ姿を見て、朝葉が驚いて声を上げた。
「ひじりん、髪……」
「ん?」
聖が首の後ろに手を回す。緩みかけた三つ編みに手が触れる。
「あれ?」
そこにあるはずの髪の毛が、なかった。
つむじから指先でたどっていくと、その手触りが途中で途切れている。肩甲骨の下あたりまで伸びていたはずの髪が、首の後ろでばっさりとなくなっていた。
「あー……」
決まりが悪そうに、聖が笑う。
「髪だけ、逃げ切れなかったな」
そう言うと、大きく首を振って、絡んだ髪の毛を振りほどいた。
緩く波打った金髪が、生まれたてのようにみずみずしく踊った。
「どうやって出てきたの?」
三人は並んで校門へと歩いている。
「運転席の横の窓が開けれたって言ったろ。降りるドアより近かったからな、思い切り開けたらぎりぎり人が通れるくらいになったし、隙間が閉じる前に、そこから飛び出しただけだよ」
短くなった金髪を見ながら、つゆが小さく相槌を打つ。
「つっても、ぎりぎり過ぎて髪の毛だけ取り残されたけどな」
「わたしのせいだ……わたしが三つ編みなんてしたから……」
朝葉がどんよりとした顔でうつむく。
「むしろまとめてたから、スパッときれいに揃ったんだろ。バラバラだったら、半分だけなくなってたかもしんねえし」
「顔が半分だけ取り残されなくてよかった……」
「怖いこと言うわね……」
冗談とも知れない朝葉の言葉に、つゆが顔をしかめる。
三人は校門を抜けた。通学する女生徒たちが、同じようにぱらぱらと吸い込まれていく。
「ま、けど、なんとかなったな」
「うん」
「そうね。どうにか、なったわね」
三人は憑き物の落ちたような晴れやかな顔を並べて歩いていく。
「一限、なんだっけな」
「体育よ」
「よっしゃ、プール!」
「寒そうだな」
「髪の毛、乾くの早そうね」
「ああ、そうだな。このくらいなら、髪くくらなくてもよさそうだ」
「その……」
「ん?」
「……似合ってるわよ。短くても」
「そうか? 自分じゃわかんねえ」
つゆは鞄から手鏡を取り出して、聖に渡す。
「ああ、確かに、短くなったな……」
聖は鏡をのぞき込んで、乱れた髪型を直している。
ふと、その鏡に、指先でそっと触れる。
そして、笑ってつゆに手渡す。
「サンキュ。こいつは、普通の鏡だな」
「しばらくは、鏡見たら触ってしまいそうね」
「もっかい鏡に入れたら、ひじりんの髪の毛取り戻してくるのに!」
「取り戻してどうすんだよ」
「一回切れたら、繋げれないわよ」
「えっ……、植えるけど?」
「増えるだけだろ」
「増えるだけね」
梅雨明けを告げるニュースはまだ流れていなかったが、空はもうすっかり青さを取り戻しているようだった。
校門から続く石畳の道が、朝日を照り返して鏡のように光っている。
「さー、プール行くぞーっ」
光に向かって思い切り背伸びをした朝葉の影が、さらさらと揺れる木々の葉影に混じり合う。
ちょうど同じくらいに切りそろえられた、黄金色と、鳶色と、黒い後ろ髪が、校舎の影の中に溶け込むように消えていった。
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