第22話 ホントおもしれー女


「おぉ! バリ海じゃん。ウケる」


 ギラギラと眩しい太陽とキラキラと輝く海。サラサラと白い砂浜を歩くギャル。

 組み合わせの芸術点は高めだな。

 ってか、吉沢さん目立つからチラチラと見られてる気もする


「暑っ。上だけ脱ぐわ」


 そう言って吉沢さんは羽織ってたシャツを腰巻きにした。


 手足が長いしスタイルの良さが余計に分かってしまう

 デニムのショートパンツに白のノースリーブに薄いピンク色のキャップ。


 野々宮さんの作戦のまま海辺まで来たは良い。

 来たは良いが告白するキッカケが分からない

 まず、落ち着いて話せる感じが良いよな?



「吉沢さん、あそこの流木りゅうぼく座りやすそうだし日陰だから座らない? 」

「オッケー」



 流木に座るなり海風と波音が心地良い。的な事を吉沢さんは言ってるけど、緊張してそれどころじゃない 吉沢さんの髪の毛から良い匂いが香ってくるのは分かるけど。


 告白ってどうやれば良いんだ? 突然『好きです』『付き合って下さい』言うのもおかしいよな?



「砂浜歩いて分かったけど、ダートってやっぱ走るの力いるよね」

「そりゃ まぁ」


 なに言ってんだこの人? 


「波打ちぎわで走ると、砂が水分を含んでるから、ペタッペタってして走りやすいじゃん」

「そうだね」


「乾いた砂だとパサパサして力強く蹴り上げないと、砂に足を取られて早く前に進めない……」

「だから米国血統の馬が成績良いんじゃない」


「あぁね。米国血統でパワー型……ミスプロ系かエーピーインディ系じゃん」

「フォーティーナイナーとかパイロだね……」 


 こんなとこまで来て血統の話になる?

 太陽と海と互いを意識してる男女だよ!? この組み合わせで、男女が話してる内容を推測しなさい。で、競馬や血統の話は絶対に出てこない


 おもむろに吉沢さんは立ち上がる。

 そのまま波打ち際に向かって行くと、サンダルを脱いで砂を足の指で摘んでるように見える。



 今度は砂浜まで戻ってきては同じ動きをする


 砂浜熱くないのかな? 

 ってか、なにしてんの??


 片手を上げるとこっちを見る吉沢さん


「濡れた砂と乾いた砂だと。ぜんっぜん、パワーの必要性が違う!! 」



 コイツ……ホントおもしれー女


 違う! 面白いよ。面白いのは間違いないけど違うんだよ! そんなはじけまくってる笑顔で言われても違うんだよ!

 ロマンチックに攻めるのってどうすんだよ!?

 会話まで野々宮さんは教えてくれなかった。



 今度はなんだ? 小枝を拾って砂浜に何か書き出したけど

 吉沢さんの事だから、何かのレース展開とか書いてそう


 砂浜に何か書いている吉沢さんをずっと見てた。

 吉沢さんは思ったことはやらないと気がすまないタイプだ。


 楽観主義者で快楽主義者とでも言えば良いのか?

 あまり後先考えないで行動してしまう


 ようやく何かを書き終えたのか、小枝を片手に戻ってきた。


「おぉ。見事に、こっちからだと何書いてるか、全然分かんないし」

「吉沢さん書いてたのあれでしょ? ド定番のいつの時代だよ。って、突っ込みたくなるやつ」


 ん? 驚いてるのか、猫目を丸くさせる吉沢さん


「砂浜に『好き』って書いて。んで、波が寄せてきちゃって、書いた文字が半分消えて『あっ……アタシこんなとこまで来て何してんだろ』みたいな」


 顔どころか耳まで赤くなってるけど、本当にそんなこと書いてた?

 そんな くっそ恥ずかしいことしてたの??


 ってか、そんなテレ顔で見てこられると、俺も色んな意味でハズくなってくる。


 恥ずかしさから、2人同じタイミングで顔を海に向けた。


「「あっ」」


 ハモった……ちょうど、少し強い波が吉沢さんの書いたとこまで寄せてきた。

 アハハと声を上げて笑い出す吉沢さん


「『こんなとこまで来たんだ』波打ち際まで行こうよ、若生君」


 笑ったからなのか、目に涙を溜めた吉沢さん。

 パッと吉沢さんに手を引っ張られ波打ち際まで連れて行かれた。


「ほら。気持ちいいじゃん」


 波打ち際まで走ってる途中に見えたのですが、本当に『好き』って書いてあった……波で少し消されてたけど 


 パシャパシャとわざと水しぶきを飛ばしてくる吉沢さんに対抗して、俺もジャンプとか波を蹴り飛ばしてみた


「まだ海温なかは少しだけ冷たいな」

「海開きまで、もう少しだし」


 あれ? 吉沢さん白のノースリーブだよな?? ピクニックの時はブラ透けしてたのにしてないだと!


 俺の視線に気付いたのかニヤニヤしだす吉沢さん。


「今日はベージュだから透けにくいんだよなぁ。残念だったね若生君」

「自分で言ったら意味なくない。人類には想像力があっ」



 え? 吉沢さんが何かに滑ったのかバランスを崩した。

 咄嗟に手を伸ばしたが間に合わなかった。


 パシャン。と、一際大きな音とともに、吉沢さんは波打ち際にお尻をつけて倒れてしまった。


「冷たっ! って、何か下がヌメってた」

「大丈夫? ってか、吉沢さん着替えもってきてる訳ないよね? 」


 起き上がりやすいように手を差し伸べた。


「平気平気。まぁ、何とかなるじゃん」


 掴んだ俺の手を強く引っ張ってくる


「ちょ! 俺まで倒れる!! 」

「ここまで来たら同じっしょ」



 あぁ もう! 同じじゃねぇだろ。 吉沢さんはお尻から後ろに倒れたけど、俺は頭から前に突っ込んでるんですが!! 



 そのまま倒れ込み全身ずぶ濡れとなってしまった。

 立ち上がると吉沢さんは腹を抱えて笑っていたが、片目でしか見えない!!


「若生君ちょーウケる! ワカメ頭に乗ってるって」


 大きく手を叩き出して大爆笑じゃねぇか

 このワカメに吉沢さんは足を取られたのか? 


「吉沢さんも、ずぶ濡れだからブラ透けしてるからね! 」

「べ 別に若生君にならちょくで見せても良いんだから」



 恥ずかし顔でTシャツをまくし上げてらっしゃるけど……


「って、これ水着だし」

「はっ? 」

「ショーパンの下も水着だから」

「え? 」

「こういう事があった時のために」 


 ニヒヒと俺を小馬鹿にしたように笑う吉沢さん

 ズリぃよ! こういう事があるなんて思わんて!!


「さすがにショーパンもTシャツもずぶ濡れになるとは思わなかったんだけど」

「俺、着替えなんて持ってきてないし、これはさすがに乾くの時間かかるよね? 」

 


 流木の所まで戻ってきたは良いが、こっからどうしよう?


「ねぇ、若生君。あそこにある、お店行ってみない? 」


 吉沢さんが指差す方に目を向けると、道路沿いにサーフボードとハートの絵が書いてある看板が見えた


「サーフショップかな? 」

「だと思うよ。サーフ系の服も売ってそうじゃん」

「確かにありそう。この濡れたまま行っても良いのかな? 」

「サーファーって、大体濡れてんじゃん? 」


 いや、それはサーフィンやるときは濡れでるだろうが、お店入るときは違うだろ!


 もう良いや、店内お断りされたらされたで考えよう



「吉沢さん。行ってみよ」




17話〜22話の競馬用語を追加しました↓

https://kakuyomu.jp/works/16816927863066443213/episodes/16817139555053178551

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