第8.5話 四角関係 野々宮 葵の場合②

 自分の好きな人から切なげに『好き』と言われた

 普通なら叫びたくなる位に嬉しいはずなのに

 別な意味で叫びたくなる


 女慣れしてるれんが野々宮さんから好意を持たれてる事に気付かない訳がない

 知ってて俺をけしかけた?


 だとしても俺が野々宮さんを好きなことは事実な訳で


 もう訳分からねーよ 何なんだよ

 告白する前に振られてんじゃねーか

 何で俺に言ってくんだよ


「蓮には言わないの? 」

「自信ない。自信ないけど、誰かに言いたかったんですかね。ごめんなさい」



 ハンカチで涙を拭いながら力なく笑う野々宮さんが見たかった訳じゃない


「何で自信ないの? 野々宮さんは可愛いし賢いし、気配り上手だし」

愛梨あいりちゃんみたいに、明るくポジティブじゃないですし、自分の意見も真っ直ぐに伝えられません」


「吉沢さんと比べなくても野々宮さんは野々宮さんでしょ」

「自分のこともそんなに好きじゃないです」


 心の奥底から勝手に言葉と想いが溢れ出てくる


「俺は野々宮さんが好きだよ」



 あれ? 今なんつった?? 心と脳がダメだと抑えつけるのが間に合わなかった

 こんなタイミングで言うか俺!

 人生初の告白だぞ!!


 思わず俯いてしまったけど絶対に今、俺の顔真っ赤になってるよね? 凄い顔が火照ってるのが分かる 手汗がヤバい


 上目遣いにチラッと野々宮さんの様子を伺ってみる


 野々宮さんも凄い顔が真っ赤になってらっしゃっる!


「か からかわないで下さい」


 顔を上げると視線が合った

 両頬を両手で抑える野々宮さんが可愛すぎる


 保存しときたい! 目に焼き付けておこう


「そんなに見られると……照れます」

「あまりにも野々宮さんが可愛すぎて」


 普段なら絶対にこんなこと言えないのに

告白した事で歯止めがきかなくなってる


 隣で楽しそうに話してたカップルが俺たちを見てクスクスと笑ってるのが見えた   


 ハズい……あまりにも恥ずかしい


「の 野々宮さん。もうそろそろ出よう」


 野々宮さんも感じ取ったのかコクンと頷いた。

2人で出口に向かうなか、隣のカップルから『可愛いらしいね』って言葉が聞こえてきた






 何処に行ったんだよ、あの2人は? 蓮に掛けても出ないし


「吉沢さんには電話した? 」

「私、愛梨ちゃんの連絡先知らないですよ」

「そうなの? 」

「同じ中学だったけど学校内でしか話さなかったですし」   


 言われてみれば吉沢さんと野々宮さんも属性と言うかグループ違うもんな


「じゃ、俺が掛けてみるよ」

「逆に若生君が愛梨ちゃんの連絡先知ってるのにビックリですね」



 ハハハ ですよね。

 俺と吉沢さんも属性が違い過ぎるからね 


 吉沢さんのスマホに掛けるもコール音が鳴り続けるだけだ

 


「吉沢さんも出ない」

「2人で帰っちゃったのかな」 

「何の連絡もなしに帰る人たちじゃないよ」

「そうですよね」

  


 心なしか野々宮さんの表情が明るくなった気がする


「若生君。ありがとう御座います」

「なにが? 」

「私を元気付けてくれて」

「あ あぁ」


 なんかおかしいぞ とてつもない違和感を感じる


「『好き』って言われて嬉しかったです」

「ホントの事だからね」    

「『Like』でも照れてしまいますね」


 …………嘘でしょ? 


 本当に『Like』の方だと思ってる?

 それとも『Love』の方だと気まずいから『Like』の方にしようとしてる??



「愛梨ちゃんと若生君。私は有りだと思いますよ」

「はい? 」

「愛梨ちゃん。テスト勉強中も若生君ばっかり気にしてるようでしたし」


 ホワイ? 待って。

 マジで分からないんだけど

 俺の告白は本当に元気付けで言ったと思ってるの?


「でも、愛梨ちゃんに告白する時は、さらっと言わないで、しっかり言ってくだいよ」

「う うん」  


 良く分からないから頷いちゃったじゃん

 何でアドバイスされてるの?

 あまりにも自然に言い過ぎてしまって本気だと思われてなかった??


「若生君も愛梨ちゃんの事を気にしてましたよね」


 気にしてた。というか元気ないな。って、思ってはいたけど


 告白したのに本気だと思われてなくて 吉沢さんが好きなんだ。って思っわれちゃってるじゃん!

 野々宮さんっぽいと言えば野々宮さんっぽい気もする


 俺の人生初の告白が……野々宮さんには道化になれないと思ってたけど、やっぱ俺ってとんだピエロ野郎だった。



「若生君に話せて良かったです。松岡君の事は諦らめません」

「そっか」

「今は告白する自信ないですが、自分をもっと好きになれた時に松岡君に告白します」



 今までで1番晴れやかな野々宮さんの笑顔が見れた


 俺は泣きたいよ。

 一目惚れした相手から、幼馴染の事は諦めない。言われてるんだからね。



「松岡君と愛梨ちゃんは、いったん連絡待ちにして、あれ乗りましょう」


 野々宮さんが指差したのは、蓮が吉沢さんに告白する。って言ってた観覧車だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る