第2章 這い寄る混沌

第7話 ギャル含めての四角関係?

 さっそく月曜日からテスト勉強を開始したのは良いが


 メンバー的に嬉しいのと気まずいのがごちゃまぜで集中出来ない



 俺の隣には野々宮ののみやさん。向かいにはれんがいて、蓮の隣に吉沢さん。

 4人揃ったことで図書館の密度が一気に濃くなってる気がするんだが

 ってか、吉沢さん睨んでくるの怖い……


 土曜日に真っ赤な顔になった吉沢さんを置いて帰ったら

 吉沢さんは記憶を飛ばしてたのか、俺が勝手に帰った。みたいになってたし

 何とか誤解は解けたけど





 そして吉沢さんと衝撃的な別れをした翌日、日曜の夜の事だった。


「頼む! 吉沢さんと繋いでくれ」


 俺に対して珍しく必死に頼み込むれんだけど


「だから、自分で言えって」

「クラスの奴らも言ってっけど颯太そうたと吉沢さん。最近仲良いじゃん」

「隣の席ってだけだ」



 ヤバイなぁ 俺からは話し掛けない様にしてるけど

 吉沢さん最近やたらと絡んで来るようになったしな


 薄々気付いてはいた。

吉沢さんと喋ってると、聞き耳というか何とな~く。クラスメイトたちから見られてる気分がして落ち着かない



「他の女の子ならグイグイ行けんだけど、吉沢さんには出来ねぇんだよ」


 それは分かる カラコンで睨まれたりネイルで引っ掻いて来たりしそうだし……てか、してくるし……女慣れしてる蓮でも、怖いよな吉沢さん。


「俺、本気で好きになってる……と、思う」

「え? 」


「美化委員で少しずつ話すようにはなったけど」

「なったけど? 」

「ど、どの女とも違うんだ、吉沢さん……」


 語尾が小声になってるし恥ずかしそうに視線をそらすな! 

 恋する乙女が出てる!! 


「誰よりも真面目にゴミ拾ったり、誰にでも優しかったり。必要以上に踏み込むとツンツンするけど、そこも可愛いなって」



 遊び人の蓮にここまでさせるとは

 まっ 吉沢さんの派手なビジュアルも蓮の好みだしな 



「もし、吉沢さんを誘えるなら、野々宮さん誘ってやるよ」

「な ななな 何で野々宮さん!? 」

「分かりやすっ! 何年幼馴染やってっと思ってんだよ」



 くっ 幼少の頃の嫌な想い出が蘇る

 いっつも俺が惚れた女の子は、蓮を好きになる

 最初から蓮に惚れてる女の子を俺が好きになってただけかもしれんが


「吉沢さんはお前が。で、野々宮さんは俺が」

「ても、土曜日はけい……」


 っぶね! 競馬に夢中だから。って、言いそうになった。


「土曜日がなんだよ。颯太が競馬観てんのは知ってるけど、競馬は一生続くが、青春は一瞬だ」

 

 さすが陽キャの考え方だ、青春とやらを味わってみるのも悪くないのかも

 野々宮さんを誘えない根性無しな俺には むしろ有りだ

 図書委員以外でも繋がり出来ちゃったら、ほとんど一緒にいるみたいなもんじゃん!



「よっしゃ! ダメ元で吉沢さんに言ってみる」

「さすが颯太! 野々宮さんの事は任せておけ」






 で、何とか勉強会を理由に4人揃ったけども


あおいちゃん。この文章、全然分からない」

「えっと。助動詞を暗記するしかないですよ」

「エグっ! 」



「颯太、式が全然分かんねー」

「円の半径…………」



 何故こうなった

 4人の得意教科と苦手教科の絶妙なハーモニーの結果

 野々宮さんが吉沢さんに教えて

 俺が蓮に教えてるだけじゃねーか!


「ま 松岡君……席、交換して良いですか? その方が教えやすいので」

「だな。俺も颯太の隣行くわ」 



 はぁ〜 もはや蓮とマンツーマン

 野々宮さんの隣が良かったのに

 野々宮さんカムバック!!


 それにしても向かいに座る2人を見るとホント真逆だよな


 派手な髪にネイルにハーフ顔の吉沢さん。スタイルも良いし、お洒落な服屋のマネキンみたい


 黒髪清楚でおしとやか前髪ぱっつんな野々宮さん。小柄で華奢きゃしゃで着物姿ならお姫様みたい


 1年の頃は遠くからしか野々宮さんを見られなかったけど

 こんなに近くでご尊顔そんがんを拝めるとは、話もしちゃってるし

 あわよくば、ずっと見ていたい




 ん? 吉沢さんが睨んでくる


 イタっ!!   


 このマネキン、机の下からすねを蹴ってきやがる

 口パクしてるように見えるが

 ……『おいで?』って言ってる動きに見える



 良く分かんないけど、挑発してやがるな

 いつも怖がってると思うなよ

 お返しだ! 俺も蹴ってやる!!



 見えない所での醜い応酬が続いてるが


 くそっ 吉沢さんにガードされた……あれ、俺の足って吉沢さんの足に絡まれてない?


 吉沢さんの美脚で締め付けられてると思うと……俺も生足だったらヤバい



「アタシ『トイレ』行ってくる」

愛梨あいりちゃん。声が」 

「ごめっ。静かにしなきゃだね」


 俺の事を睨んだまま出てったが、やたらと『トイレ』にだけ力を込めてたな……

『おいで』『トイレ』 あれ?

『トイレ』『おいで』


 ふぁ? 最初っから『トイレ』言ってたのか!?


「俺も行ってくる」



 慌てて吉沢さんの後を追った


「吉沢さん」

「……」

「怒ってるの? 」

「別に」


 速歩きになってるし絶対に


「いや、怒ってるじゃん」

「じゃあ。怒ってるかもね! 」

「なんで? 」

「…………ってか、もう女子トイレなんだけど」



 あっぶな! ドアの手前で吉沢さんが立ち止まってくれたから良かったけど

 流れのままに女子トイレに入ってくとろこだった 


 少し待つと吉沢さんは出てきた


「何か俺、気にさわる事した? してたら謝るよ」

「別に、もう良いよ」

「良くないって。自分で分からず人を不快にさせてたら嫌だし」


「じゃ、若生わこう君。テスト終わったら、遊びに行かない? 」


 なんだ突然? 別に断る理由もないし

 遊びに行くなら4人でだよな?? 


「良いけど。4人で行くとなると何処が良いかな」

「なんっ……アタシ考えとくよ」




 そこからの2週間、放課後は図書館で勉強してたが

 吉沢さんは元気がなかったように見えた


 必死に蓮が盛り上げようと、勉強の合間合間に吉沢さんに話し掛けていたが……


 そしてテストも無事に終えた週の金曜日


 蓮が放課後に家にやって来ては驚くことを言ってきた



「明日、吉沢さんに告る」

「え? だって、お前彼女何人もいるんじゃ」


 蓮はスマホの電話帳を見せてきた


 男の名前しかない!


「捏造もしてねーぞ。全員、別れて来た」

「おまっ! 別れたって、女の子も納得しねーだろ」


「納得するまで話して謝って別れた」

「そこまで吉沢さんに本気なのかよ」



 女好きな蓮が全員を切って

 吉沢さん1人と付き合う。ってことか?


「正直、今は付き合える自信はないけど」

「じゃあ、何で告るんだよ」

「あの人。俺の事を全然みてねーの。全く意識してねーでやんの」



 良く分かんねー それで告るってどういうこと?


「颯太には分かんねーかもな」

「全く、分からん」


「告って、まずは意識させんだよ。スタート地点に立つってこと」  

「ゲート入りと同じか。ゲートに入んなきゃスタートも出来ねーもんな」


「吉沢さんは人気あるから他に狙ってる奴も多いだろうし、ぼーっとしてっと告ってくる奴もいるだろうし」

「既にゲート入りしてスタートを待つだけの奴らも多いってことか」


「告ってからがスタートだと思ってる」

「なるほど。告ってからレースが始まると……フルゲートは何人なんだ? めちゃくちゃ多そうだけど」

「競馬に例えんな! 競馬知らねーから、余計に分かんねー」



 ってことは、俺も野々宮さんに意識して貰えてないよね?

 ゲート入りすらしてないよね?

 これってダメ元で俺も人生初の告白しちゃう??




 

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