子連れオフ会

瓜頭

スーパーろくでもない友達のせいで

 未婚なのに子供を育てている。


 スーパーろくでもないヤツだった友達が未婚の母だったのと、ろくでもなかったはずのヤツが節約と健康のために自転車通勤してたのと、あとは某県の交通死亡事故の件数が何故か北海道を抜いてワーストなのがいけなかった。

 ついでに言えば個人的なアレで児童養護施設にあまり良い印象が無かった。


 信号待ちを狙って凛太郎が話しかけてくる。


「祥子さんは寿司は何が好き?」

「うーん、好きじゃないのがあんまりねえな」

「好きじゃないのあるの?」

「ハンバーグ乗ってるヤツ」

 酢飯に常温のハンバーグ乗せて美味いわけない。


「えー、美味しいけどなー」


 個人的にはDNAが拒絶するレベルなんだけど、まぁ凛太郎とは一片たりともDNAを共有してないのでそういうこともあるだろう。


 凛太郎は当時小学2年生で、かなりサルに近いけれど一応コミュニケーションは可能だった。ので、最初に色々話した。


 自分はお前の新しい母親になってしまうけどそれで良いか。

 でもお前のお母さんは友梨なのでお前は私をお母さんと呼ぶな。

 子育ては「一回自分がされた事があるなー」程度しか分からないので気に入らない事があれば自分でやれ。

 金はあんまり無いので耐えるか稼げ。


 今4年生だけど基本的によくやっていると思う。

「運転中にごちゃごちゃ言うな。私運転下手なので死ぬか誰か殺すぞ」と言った事をちゃんと覚えている。


 駐車場から入り口までの間で手を繋いでくる程度には甘ったれだけど。


「なんで回転寿司屋でオフ会?」

「むしろ子連れでオフ会ってどこでやんのが正解なの?」

「あー」


 テーブルの番号を連絡すると、程なくして明らかにそれっぽいヤツが入り口できょろきょろしている。手を振る。


「ShoさんとRinくん?」

「あってるあってる。はじめまして」

 なんとなく想像していた通りの、眼鏡の気弱そうな理系ボーイ。頭は良さそう。


「ロキロキは何してる人なん?」

「げ、この人開幕個人情報聞いてくる」

「だめなん?」

「祥子さんオフ会であんまりプライベートの事聞いちゃダメだよ」

 お前が私の本名言うのは良いのか?



「え、24歳で医大卒ってストレートじゃん。スーパーエリートじゃん」

 Vtuber好きな時点でなんとなくバカだと思い込んでた。

「いや、そうでもないですよ」

 敬語じゃなくて良いって言ってみたけど無理だった。そりゃそうだ。急に子連れのアラサーとタイマンで面談になってタメ口きける訳ないよな。よく来たなコイツ。


「やはりVは知性を養う」

「やめろやめろ。コイツがレアケースだろ」

「Rinくん4年生なのに推し活はヤバいと思います」

「やめて親にバラさないで」

「じゃあこの会なんなんだよ。なんだ親同伴って」


 キッズどもの付き合いだし車だしで酒飲めないので早々に解散した。


「ロキロキさん良い人だった」

「そうだね」

「今度ネットでゲームやる約束した」

「ええやん」

 ディスコード交換してたな。


「あとさ、オレ気づいたよ」


「祥子さんよく見つけてきたね」


「ロキロキさん将来性ヤバかった。お母さんスーパーろくでもなかったけどめちゃくちゃ見る目あったね」

「それな」


 2人がハンバーグ寿司食っててなんか泣いた。

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子連れオフ会 瓜頭 @maskedmelon

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