第8話 ふふっと笑う
パラパラと予定帳を見返してみる。
先週は合コン。
1人の女の子と仲良くなり、連絡先を交換した。その後もやりとりは続いている。
再度、パラパラと予定帳をめくる。
先々週は女の子とデートだった。SNSで知り合った子。映画を見て、食事をし、カラオケに行った。
さらにパラパラと見返してみる。
毎週土曜日には、必ずなんらかの予定が入っていた。デートだったり、合コンだったり、男友達との食事だったり。充実している毎日、と言えた。
「でもなぁ。違うんだよなぁ」
俺は頭を掻きながら、そう呟く。俺が欲しい予定はまた違うのだ。あの人との予定が欲しいのだ。
半年ほど、友人の紹介で知り合った人がいた。背が高い、すらっとした立ち姿の綺麗な人だった。一目見て、すぐに好きになった。
「お前、映画好きだったよね? 映画が好きな子だから、多分話が合うと思う」
これは紹介者からの弁。ファミレスで会って、当然のように映画の話になり、話が弾み、連絡先を交換した。
そこまでは順調。しかしそこから話が進まないのだ。
何度かメッセージや通話でやり取りをした。メッセージを送ると返ってくるし、通話でも話は弾んだ。そこはいい。しかし、デートをしよう、となると、はぐらかされる。
俺の勘と経験が囁きかける。
「多分脈はないよ」
俺は記憶の無いところで、何か致命的なことをやらかしたのか。それとも彼女は、俺はタイプではないのか。どっちが理由にしても、今の現状は変わらない。
恋人がいない、というのは非常に寂しい。しかも好きな人がいるのに会えない寂しさは暴力的だ。
だから俺は予定を入れる。合コン、デート、男友達との食事。
寂しい。
その気持ちを埋めるには、予定を埋め、人に会う。そして予定が終わればまた寂しさに襲われる。会いたい人に会えないからだ。
「何やってるんだろうね、俺は」
またもや小さく呟いた。
「滑稽だ」
今度は違う言葉を口に出してみた。するとなんだか自虐的な感情がわき、俺は俺自身を鼻で笑うのだった。
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