第2話 約束を約束した日

 彼氏のいる子をデートに連れ出したら、それは浮気なのだろうか。


 僕はバイト先の後輩であるリサを、デートに連れ出した。


 初対面から少し気になっていた子であり、そこから話をするうちに、好きになっていった。

 引っ込み思案で少々ドジ。なんだか守ってあげたくなるような子だった。

 しかし彼氏がいることは、リサと仲のよい同じく後輩のマイから聞いた。それを聞いて僕は落胆した。いても不思議はないよな、と思いながら。


 しかし、マイからこんな言葉をもらった。


「先輩諦めよすぎるよ。とっちゃえばいいじゃないですか。とっちゃえとっちゃえ!」


 そしてその言葉の勢いを借り、リサをデートに誘ったのだ。断られる不安は抱えたままだったが、返事はOKだった。


 大型ショッピングセンターで買い物に付き合ってもらう。服、雑貨、本、CDを見、そして言葉を交わす。初めてのデートとしては、模範的なデートだったと言える。


 どれくらい店内を歩いただろう。僕はふと、目に映った光景に心を奪われた。それは手をつないで幸せそうに歩くカップルの姿。


 僕も手がつなぎたい。思うが先か、僕は手をリサの手に近づける。


「あ、だめです。私、彼氏いますから……」


 しかしそんな、当然と言えば当然の答えが返ってくる。予想はしていたが、目の前に出されると少しだけ心が苦しい。


「でも……これならいいです」


 と言うと、リサは僕の小指に小指を絡ませた。ゆびきりげんまんをするように、だ。


「あはは。なんか約束するみたいだね」


「そうですね。だったらなんか約束しましょうか」


「約束ね。何がいいかな」


「じゃあ私からいいですか?」


「いいよ。ちなみに僕は約束は果たす男です」


「……また誘ってください」


「え?」


「……またデートに誘ってください。」


「え、あ、はい。うん、約束する。またデートしよう」


「……はい。」


 リサは顔を少し俯いたまま微笑んだ。かわいらしい笑顔だった。


「うん、決めた。いつか恋人つなぎできるように、がんばるよ」


 これはもちろん言葉にしなかった。僕が僕にする約束だった。絡んだ小指を見ながら。


(了)

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