幼馴染の許嫁?!

僕の名前は、一条いちじょう 楓希ふうき

信楽しがらき高校に通う高校二年生。

いつも教室の中では、誰とも話さず一人でいることが多い陰キャだ。

でも、クラスが変わってから一人でいる時間が、少なくなってきている。

なぜなら...


「お〜いっ!ふーうーちゃーんー!!」


「おっ...おいっ!!教室内で抱きつくなよっ!!みんなが見てるからっ!!」


「え〜良いじゃん!だって私たち幼馴染なんだしっ!」


「幼馴染でも限度ってものがあるよっ!」


今俺に抱きついてるやつは、僕の幼馴染 逢詠あいよみ 真音まお

昔から僕の隣の家に住んでいて、保育園の頃から二人で一緒にいる。

高一の頃は、クラスが違ったためか、話す機会があまりなかったけど、2年で同じクラスになってから、何故か積極的に絡んでくるようになった。


「限度って言われてもね〜。あっ、でも!小学何年か忘れちゃったけど、ふうちゃん今のようにしたら喜んでたじゃん!」


「今と昔を一緒にしないでくれよっ!」


クラスが一緒にになってから、いっつもこんな感じだ。

確かに昔は、真音に抱きつかれたりするのは、とても嬉しかったけど高校になってからは違う。周りの目が、気になるのもあるけど抱きつかれるたびに真音の豊富な胸が当たって落ち着かない...

胸も当たっているし、教室内の空気感に耐えられなくなって抱きついている真音の両肩を掴んで離した。


「今と昔なんて関係ないのっ!だって、楓ちゃんは私のっ...!」


「おはよ〜真音っ!」


突然、僕たちの後ろ方から、大きな声で真音の名前を呼ぶ声が聞こえた。

声の高さからすると女子だ。多分、真音といつも一緒にいる女子の一人だと思う。僕は、後ろを振り向かず真音が、僕から離れるのをずっと待っていた。

でも真音は、振り返るどころか、体を一つも動かそうとしてこなかった。


「もう少しだけ、楓ちゃんと一緒に居たかったなー...」


小声で、真音は何かを呟いていた。真音の表情は暗く、暗く落ち込んでいるように見えた。

もしかして、僕が気づいていないだけで、真音に悪いことでもしたのか。

もし本当に真音を傷つけたのなら、謝るしかない。,,,けど、何に対して怒っているのか、さっぱりだ。


「さっき、何か言った?」


「......ううんっ!ただの独り言。それじゃ、楓ちゃんまた後でっ!」


「う...うん。」


話しかけて、真音が反応してくれるまでに少し間があった。反応を示してくれた時には、さっきまで見せていた暗い表情は消え、いつもの明るい真音に戻っていた。真音は、一方的に話を終了させ、僕に手を振りながら友達の方へ、足早に去ってしまった。


「さっき、何を言おうとしていたんだよ...」


僕は、真音が何を言おうとしていたのか授業中や休み時間を使って必死になって考えた。

...考えたが、結局何を答えは出なかった。







「ただいま...父さん」


「おかえり楓希。いきなりで悪いんだが、大事な話がある。ソファーに座ってゆっくり話をしたいんだが、いいか?」


「分かったよ。でも、学校終わったばっかでヘトヘトだから手短にお願い。」


玄関で迎えてくれているのは僕の父さん。名前は、一条 汰一たいち

いつも父さんは、僕が帰ってくると元気な声で迎えてくれるのに今日は違った。

いつもよりも話すトーンは、低く真面目な面持ちで僕のことを迎えている。父さんが、こんな顔をするのを初めてみた。何を言うつもりなのか、父さんと対面する形でソファーに座って待っていると予想だにしない言葉が返ってきた。


「なぁ楓希、真音ちゃんと結婚してくれないか?」


「真音と結婚かー。...って..........はぁぁぁぁぁぁっーーー!?」


驚くには十分すぎる内容だった。

父さんは、なんてことを言ってるんだ?!僕達まだ、17歳だ。結婚するには、18歳にならないといけないはずなのに何で?!


「なっ...なんで結婚なの?」


「えーっとな、正確に言えば結婚じゃないんだ。どちらかといえば、許嫁というやつだ。」


「僕と、真音が許嫁なのか?!そんな話ひとつも聞いてないよっ!それに真音は知ってるのか!?」


「真音ちゃんは、ずっと前からお父さんに聞かされたらしい。そして、楓希に今まで言わなかったことは悪いと思っている。でも楓希と真音ちゃんいつも一緒にいるから、言わなくてもすんなりと受け入れてくれると思ったんだ。」


その後、父さんは、僕と真音が許嫁になった経緯を教えてくれた。

僕が生まれて間もない頃、真音のお父さんは、僕の父さんの上司だった。いつも仕事のことに関してお世話になっていたらしく、許嫁の件を真音のお父さんから切り出された時、断れなかったらしい。


「何となく理解したけど、今になって許嫁の件を話したんだ?いつだって、言える機会あったはずだろ?」


「最初は、高校を卒業するか真音ちゃんが言うまでずっと黙ってるつもりだった。でも楓希は、高校2年になって進路を決めなければいけない時期だろ。だからこそ、このことを頭に入れてどうするか考えて欲しかったんだ。」


そういえば今日のホームルームでも、「今の内にどの道に進みたいか少しは考えた方が良い。」て担任が言ってたっけ。

確かに父さんの言いたいことは少しだけ分かったが、母さんはこの許嫁のことは知っているのだろうか?今、母さんのいないこの場で話しているのに少し疑問を覚えるけど、それは流石にないよな...


「あのさ、母さんはこの知ってるの?」


「知らないと思う...お母さんに相談もなしに決めてしまって、言おうにも言えないんだ。」


まさかの母さんも知らないとのこと。母さんの気持ちは知らないけど、僕は真音との許嫁の関係に反対しているわけではない。むしろ真音と結婚できたらどれだけ嬉しいか。...僕みたいな陰キャが、学校一といっても良いほどの美人と付き会えるどころか、結婚まで約束されている。これ以上の幸福はないと思う。


「それなら、母さんが帰ってきてから話をしよう。そして、真音と僕のことについて説明してよ。」


「分かったよ。母さんが帰ってきたら全部話すことにする。」


父さんは、今日有給休暇で朝からずっと家にいるけど、母さんは看護師をしているため帰るのが遅い時が多い。

帰るまでの間、父さんと二人で夕食を作ることにして母さんが帰るのを待った。


「ただいまー。楓希、あなた、帰ったわよー。」


「お...おかえり、莉亜。」


父さんが、莉亜と言った人物こそ、僕の母さんだ。

玄関まで母さんを迎えに行くと疲れているのか、ぐったりとしていた。これからさっきのことを話さないといけないせいか、父さんは冷や汗をかいている。


「莉亜。楓希のことについて話さないといけないことがあるんだ。」


「今からじゃなきゃダメなの...私、お腹が減って死にそうなのよ...」


「それでもだ。」


「分かったわ。話を聞くからまずは、リビングに行きましょう。」


母さんは、これから父さんの言うことが、気になってないのか平然としていた。僕だったら、こんな状況耐えきれない。

リビングに戻って僕の隣に父さんが座り母さんは対面する形で座った。


「でっ...楓希がどうしたの?」


父さんは、さっき僕に説明したのと殆ど同じこと母さんに説明した。真音のお母さんと僕のお母さんは、母友達であるため仲がいい。

だから、この件に関しては納得すると思っていた。

でも、母さんは父さんの説明を聞けば聞くほど顔が青ざめていた。


「へー...そっ...そうなんだー。」


「だ...大丈夫。母さん顔が青ざめてるけど...もしかして楓希と真音ちゃんの許嫁に反対か?それなら俺謝るよ...母さんに今まで黙ってたし。」


「違うの...あのね。私もあなたたちに謝らないといけないの...」


「んっ...?それは...どう言うこと?」


僕と父さんは、息を合わせたかのように首を傾げた。何で母さんが、謝る必要があるんだ?父さんが、黙っていただけだから謝る理由なんてないはずなのに。


「えーっとね....私もお父さんと楓希に黙って、真音ちゃん以外の子と許嫁の約束しちゃってるの...」


「えぇぇぇっーー!!そ...それって真音以外に許嫁の約束してしまったのかっ?!」


「そ...そうです。」


僕は、母さんの発言に驚きのあまり立ち上がってしまった。

許嫁が二人だと...真音は、わかるけど一体もう一人の許嫁は誰だって言うんだ?

同じ学校に通う人?

僕の知らない人?

一人も見当がつかない。何度、考えても無駄だと思い母さんに直接聞くことにした。


「母さん。その許嫁って僕、会ったことがあるの?」


「あるわよ。でも、すごい前のことだから楓希は覚えてないかもね。あっ...でもその許嫁の子と多分会えるから話してきなさい。」


「そ...それは、分かったけどさ...父さんと母さんが約束した許嫁二人のどちらかは結婚できないけど、どうするつもりなの?」


正直、二人の話を聞いていると僕は、真音と結婚する方がいいと思う。母さんが決めた許嫁は、前会ったことがあるだけで話したことがない可能性もある。陰キャになった僕は、多分母さんが決めた許嫁とうまく話せない気がする。

だから、幼馴染の真音と結婚した方が僕は嬉しい。

父さんと母さんは、お互い見つめ合って難しい顔をしていた。


「ん〜......一旦、俺と母さんが決めた許嫁二人のご両親と話さないといけないな。」


「そうね...相手のご両親には、多大な迷惑をかけてしまうかもしれないけど話し合わないとね。」


二人が話しているのを僕は、ただ聞くことしかできなかった。家に帰って1時間も経たないうちに許嫁が二人もいるってことを告げられて、まだ頭が追いついてない。頭を抱えて必死に整理しようとしたが無理だ。あまりの展開の速さに頭が追いつけていない。


「お〜い、楓希。楓希!聞こえてるか?」


「.......あっ!ごめん...ぼーっとしてた...」


「大丈夫なの...ずっとお父さん呼んでたのに気づかないから心配しちゃったわ」


「いや...そんなことより、これからどうするんだ?」


「あぁーそうだったな。明日相手のご家族と話をしてくる。それが、今お母さんと俺が相談して決めたことだ。」


「だからね楓希。このことは、真音ちゃん達に言わないようにね。」


「僕もこのことで、面倒ごとを増やしたくないから黙っておくよ」


もしも、学校の中でそんなことを言ったら真音ともう一人の許嫁が対立するのが目に見える。


「よしっ。今日のところは、この話を終わらせて晩御飯食べようか」


「そうね。食べましょうか」


三人とも、それ以来話すことは無く、あっという間に晩御飯を食べ終わった。

それから、ずっと許嫁と言う言葉が頭から離れなかった。

自室のベッドで、仰向けになって許嫁について考えていた。真音のこと、そしてもう一人の許嫁のこと。


真音と一緒にいることを選ぶか...

もう一人の許嫁と一緒にいることを選ぶのか...

それとも...









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