許嫁は、幼馴染と転校生
夏帆宮 ツカサ
プロローグ
許嫁とは...
…双方の親が、子供の幼い内に結婚の約束をしておくことを言う…
許嫁と言う言葉は、漫画やライトノベル、アニメを見ている人からしたら聞き慣れている人が多いと思う。...もしも、誰かから、許嫁と言う言葉について説明しろと言われれば、きっと、この文と同じことを説明する人が多いと思う。
正直僕も、あることが起きるまでは、この説明文と同じことを説明したと思う。
しかし、あることが起きたあの日....僕は、この説明文には一つだけ不備があることに気づいてしまった。...その不備とは、お互いの親と親が約束するだけで、お互いの両親が話し合って結婚の約束をするとは、一つも書かれていないことだ。
僕の母さんか父さんが、許嫁についてもっと事前に話し合いをしていれば、こんなことにはならなかった...
僕の悠々とした生活は、幕を閉じ...たった一つの不備により、私生活や学校生活は、ある日を境に一変としてしまった...
◯
「楓ちゃん、早くご飯食べたいよ〜。」
「私もです。おなかが、空いて倒れそう...」
「先輩っ!大変でしたら、私も手伝いますよー。」
「もうすぐ出来るから、座って待ってて良いよ。」
学校から帰ってすぐ、僕は、急いで夕食の準備をしていた。
何やかんやあって、この家に引っ越してから一ヶ月が経ち、やっとこの生活に慣れてきた。
そして現在、僕と同棲している
「真音さん、今日の体育疲れましたね...」
「そうだね〜。もう足がパンパンだよ...」
「先輩達、今日何したんですか?」
「「シャトルラン」」
「それは、キツイですね〜。ちなみに、シャトルラン何回行きましたか?」
「私が、45回で乃空ちゃんが、65回だったよ。」
「乃空先輩、凄いですねっ!平均値より大分、上じゃないですか!」
「中学の時、私テニス部に入ってたの。」
「え〜何それ?!一ヶ月間、乃空ちゃんと一緒にいたのに知らなかったよ!」
三人とも椅子に座ってシャトルランの話で盛り上がっている中、僕はまだ、キッチンにいる。
僕の通う学校では、男子と女子別々になって体育の授業をする。その為、男子はシャトルランではなく外でサッカーをした。殆どパスやシュートの練習だったが、一度だけ試合を行うことになった。僕はというと試合の間、先生に仮病を使い試合には出なかった。真音と乃空に比べ、楽に体育を終わらせることが出来たが...来週の体育は、女子がサッカーをして、男子がシャトルランをしなければならない...
真音と乃空のぐったりとした姿を見て、僕も来週、二人みたいになると考えるだけでも億劫に感じる。
体育の授業を見学するか、それとも学校自体を休むか迷う。
三人とも、僕が夕食を作り終えた後も、ずっと楽しげに話していた。四人分のお皿に盛り付けをした後、急いで三人のいる元へ食器を運んだ。
「やったっ!楓ちゃんのカレーが食べれる!!」
「楓希君の作るカレーは特に美味しいですもんね。」
「あの〜...私食べたことないんですけど、楓先輩のカレーってそんなに、美味しいんですか?」
「美味しいよっ!...あっ!後ね、カレー以外にも、私たちが食べたいものを言うと何んでも作ってくれるんだよっ!」
「ホントに?!。私もいつか、先輩に頼んでみよっかな〜」
千佳から、妙な視線を感じる。三人の話している内容は聞かないようにしていたから、千佳に見られている理由が一つも分からない。
エプロンを外して真音の隣の席に座り僕を含め四人とも、同時に手を合わせた。
「「「「いただきます。」」」」
真音と千佳は、黙々とカレーを口の中に運んでいたが、乃空はスプーンを持ったままカレーを食べようとしなかった。
「どうしたんだ乃空?食べてないけど、体調でも悪いのか?」
「違うの。ただ、真音さんと楓希君とここに引っ越してきてから、もう一ヶ月経つんだなーって思って。」
「ここに来てからもう一ヶ月経つの?時間経つの早いな〜。」
ここに初めて来た時は、真音と乃空の二人と過ごしていた。
実家では、妹や姉という存在がいないため、風呂上がりの二人を見てしまい、脳裏から離れず、一睡もできないこともあった。
同棲生活なんて絶対に馴染めるはずが無いって思っていたのに、いつの間にか慣れてしまっていた。
「そう言えば、ここに初めて来た時いろんな事があったよね〜。」
「そうね〜。それに、引っ越す前にも、色んな事がありましたね。」
「えっ、何それ?!すっごい気になるっ!楓先輩、一ヶ月前のこと私に教えてくれませんか?!」
真音と乃空が、この一ヶ月間のことを七瀬に話していたのに、何で僕に振るんだ。
まぁ、人には、言えないような内容ではないし、それにも七瀬には、夕食を作る時、手伝ってもらっている。七瀬のお願いを断る理由は無いが、一箇所だけ引っかかるところがある。
「何で僕なんだ?別に僕からじゃなくても、真音や乃空から、聞くこともできるのに?」」
「ん〜なんとなくですかね。」
「何となくって...」
僕に言わせたい理由があるのかと思ったら、特に理由は無いのかよ...
本当に何も理由が無いのか、問いただそうか考えたが、これ以上この無駄な会話を長引かせても意味がない。
「まぁ、良いや。何があったか教えるよ。」
「本当ですか?!」
千佳は、それを聞くと同時に興味津々な顔で、僕の方を向いた。一方の真音と乃空は、この一ヶ月のことを思い出しているのか、分からないけど、二人の顔はどこか、懐かしんでいるように見える。
「......一ヶ月前のある日、僕に許嫁が二人もいることを親に告げられた事が始まりだった。」
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