第8話 私と一緒に冒険者活動しようよ
「プフッ、フフフッ」
手で口を押えて笑いを
笑いの対象はもちろん俺のファイアだ。
そんな少女に俺は、冷静に言う。
「おい笑うな」
「ごめんなさい。あまりにも小さくて、つい」
俺の両手から出たファイアは石ころにも満たない大きさだ。
フゥーっと息を吹きかけるだけで消えそうなレベルの火。
これじゃあ笑われても当然。
最弱と言われているスライムも倒せないだろう。
「普通のファイアってポーションくらいの大きさはあるよな? なのになんで俺のファイアはこんな小さいんだ?」
そう聞くと少女は、俺のファイアを凝視しながら答える。
「普通がよく分からないけど、ここまで小さいファイアは見たことないわね……。まぁ、ルイスさんの魔力が極端に低いんじゃないかな」
「魔力が低いと魔法は小さくなるのか?」
「ええ。見た目も威力も小さくなるわ」
見た目も威力もか……。
ほんと魔法に恵まれない人生だな。
「あれ、待てよ。って事は逆にいえば、練習でもなんでもして魔力を高くすれば魔法の見た目も威力も大きくなるって事だよな!?」
もしそうなら俺は伸びしろしかない!
今は石ころ未満の魔法でも練習しまくれば、いずれは普通くらいの魔法に!
そう俺は期待したが。
「魔力の高い低いは先天的なものだから、高くするとかは出来ないのよね」
「えっ」
なんだよそれ!
俺、全く伸びしろないじゃん……!!!
俺は膝から地面につき、分かりやすく落ち込む。
「ああけど、高くするのは無理でも魔力の扱いが上手くなれば、魔法も多少はマシになると思うわ」
「そ、そうなのか?」
「そうよ! それにルイスさんの魔法がマシになるまでは私も付き合うから、そんなに落ち込まないで?」
俺はそれを聞いた途端、スッと立ち上がり。
「じゃあ、早速教えてくれ! 魔力の扱い方!」
そう答えた。
それから二週間後。
「ど、どうだ! これ!」
「うん、マシになったんじゃない?」
「だよな!?」
俺は二週間……ただひたすらファイアを練習していた。
少女に色々と教えてもらいながら、ファイアを出しては消しの繰り返し。
それを一人でいる時も欠かさず行い……。
魔力切れとかキツイ事もあったが、その努力が実ったのだろう。
俺のファイアは……。
「ルイスさんの言う普通よりは下。下の中。スライムをぎりぎり倒せそうなファイアといった感じね」
「黙れ、細かく説明するな。今、俺は感動に浸ってたんだから」
俺のファイアは、多少マシなレベルになった。
「ってことでルイスさんの魔法もマシになったし、今日でこの付き合いも終わりね。正直、後半くらいから面倒って思う事もあったけど、全体的に見たら案外楽しかったな。魔法の基礎も復習できたし、ルイスさんと会えてよかったわ。それじゃあまたどこかで」
俺は帰ろうとする少女の腕を引っ張り、動きを止めた。
「ん、おいおい待て待て。なにペラペラ一人で喋って帰ろうとしてんだよ。約束が違うだろ?」
「約束? 約束なら果たしたじゃない。ルイスさんのファイアはマシになった。そうでしょ?」
「それはそうだが、一番最初に俺は言っただろ。魔法を教えてくれって。まだファイアボールとかウォーターボールは教えてもらってないぞ」
俺がそう言うと、少女は思い出したのか口を半開きにして。
「あ……そうだった……」
と小さく呟いた。
「忘れてたのかよ」
「ええ。いつからか、ファイアをマシにする事がゴールだと勘違いしてたわ」
「はは、そうかそうか。勘違いは誰にでもあるから仕様が無いよな、うん。ってことでファイアボール、教えてくれよ」
「え、いや……その……」
少女はひきつった顔をする。
「どうしたんだよ。そんな顔をして」
少女は少し考え込んだ後、口を開く。
「その……なんていうか、時間が減ったのよ! ルイスさんの練習に付き合ってたら、私の冒険者活動の時間が! 練習は週一だけだと思ってたのにほぼ毎日だったし、今月の収入結構きついんだからね?」
急な大声とその内容に俺は驚いた。
「そ、それは……」
「ほんとにもう……。来月分の家賃も払えないかもしれないってのに……」
「本当にすまない……」
毎日のように誘っても断らない少女に、俺は甘えていたみたいだ。
申し訳ない事をした。
そんな事を思っていると。
「あっそうだ!」
と少女が何か閃いたような声を出す。
「な、なんだ?」
「私と一緒に冒険者活動しようよ。そしたら魔法の練習にも付き合うから!」
「え?」
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