江戸時代は沿岸地域の農民、吾作が吸血鬼の心と人間の心のあいだを行ったり来たりしながら過ごしていく物語です。見た目が変わったことで化け物扱いされたり、怪物としての本能に心を侵されたりするシーンがいちいち細かく何度も描かれるおかげて、読めば読むほど臨場感が出てきます。村人たちがころころ意見を変えるあたりも、良くも悪くもリアリティが感じられて素晴らしいです。総じて、地味ながらも続きが楽しみでならない人外化モノと言えます。吾作の社会性や吾作たち夫婦の心の動きをメインに据えた、人外化モノです。