第33話 与平と合流

 与平は、隣村の庄屋さんの態度が妙に引っかかっており、それについてずっと考えながら村へ向かって歩いていた。


 すると前方から何やらパタパタと音が聞こえてきた。


(何だ?)


 与平は、持っていた提灯を前方に掲げてみたが、提灯の灯りが乏しい事もあり、何も見えない。


(ん~……? なんだろな?)


 与平がそう思った時、目の前に大量のネズミとその上に乗った吾作が現れた!


「ひ~~~~!」


 突然の事に驚いた与平は、その場で腰を抜かした。


「あ、びっくりした? ごめんっ」


「お、おまえ、さっきといいっっ、まあちょい普通に現れれんのか!」


 吾作は謝ったが、腰を抜かしたままの与平は怒鳴った。

 しかし提灯で照らされた吾作の右横腹の矢がブッサリと刺さっている。


「は? 何? そ、それ、どしたん?」


 それを見つけた与平は動揺しまくった。吾作は隣村の庄屋さんの所で矢を射抜かれた話をした。


(だからあの時、わしを早く屋敷から追い出したんか! 何かどえらい腹立ってきたわあ~!)


 その話を聞いた与平は、怒りが込み上げてきた。しかし与平はふと、ある疑念を抱いた。


「なあ吾作。まだ分からんだけど、ひょっとすると、ひょっとするとだぞ? ウチの庄屋さんもグルかも知れん」


「ええええ~!」


「いいか。ほいだもんでとりあえず吾作は自分の家に帰りん。おサエちゃんも心配するといかんに。ほいでわしは、一回和尚さんトコへ行って話をしてくる」


「ほ、ほんな事するかやあ?」


 険しい表情で話す与平に吾作は言ってみたものの、


(庄屋さんは頭がいいからあるのかも?)


と、少し疑ってみた。


 そんな訳で、二人は村に向かって帰り始めた。吾作は横になり、ネズミに運ばれていたのだが、歩いて移動するよりも速いし楽だ。与平もネズミに乗ってみるか吾作は聞いてみた。しかし、


「いや、ほんな気持ち悪いの乗りたかないわ」


 与平はしっかり拒否をした。残念と思いながら吾作は与平の速さに合わせて移動した。そしてしばらくすると自分達の村に着いた。


「ほいじゃわしは和尚さんトコ行くで」


 与平はそう言うと、そのままお寺に向かって行ってしまった。


「和尚さんは嫌なんだけどなあ~……」


 吾作はさっき少し仏さんを嫌ったから罰を食らったと思ったはずなのに、そんな事はすっかり忘れ、家に向かって行った。

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