第6話

 六年生の男子も一生懸命やっては、くれていると思う。でもね、所詮は、男子。細かいところに気が回らない。

 子供会の時、教務主任の高橋優先生に

 「佳惟には、苦労かけるけど、やっぱり佳惟が先頭に立ってくれると先生たちも安心できるから佳惟が率先して地区の子供会の面倒はみてもらいたい」

 と、ご指名を受けたこともあった。

 あたしは、やりたくない。冒頭でも言ったけれど、人の先頭に立つことが苦手だ。

「また、佳惟が仕切ってるよ」

 とか、誰かに言われることもシャクだし。

 だから、五年生の女子を全員巻き込んで、

「みんなで六年生の男子を手伝っている」

 という体面を保っている。

 夏休みとか冬休みとか、長期休暇の前に地区子供会の委員だけ集められて「役員会」というものがある。

 残念なことに私は、児童会にも入っているから掛け持ちでやらされている。

 児童会の新役員を決めるときに、選挙で選ばれた児童会の新会長が「副会長」に、なぜか私をご指名してくれたおかげで、私は、児童会で「副会長」になってしまった。 

 人の先頭に立つことは、嫌いだ。でも、役員の仕事自体は、嫌いではない。


 あ~、こういうとこ、母親似なんだなあ。


 気づいてしまってはっとする。

 そんな感じだから、たぶん優先生にも

「佳惟が先頭に立ってやってもらいたい」

 なんて、言われてしまう原因なんだと思う。


 うちのお母さん。

 PTAの役員とか押しつけられることがすごく多い。

「自分の仕事だけでも忙しいのに、なんだって人のための仕事なんかしなきゃいけないの?」

 端から見れば、ただ無駄に忙しがり屋な姿に映ることもある。

 でも、お母さんは、それを楽しんでいた。

 生き生きしていて、かっこよかった。

 お父さん曰く、

「自分が好きでやっているのだから、それでいいじゃないの?

 好きなことやるって一番楽しいことだよ」

 確かに。

 そういうこと。

 端からとやかく言う筋合いのものではない。


「情けは人のためならず」


 この間、国語の時間に習ったことわざ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る