第2話 逆行の開門
/6月28日/
「オレは殺してない。今までの27人と同様にね」
頭部だけで
「性癖と任務をどちらも満足させる手段がこれしかなかったんだけど……どちらも予想以上だよ!
ありがとう。未界クン」
目の前の情報でキャパが崩壊した僕は情報の渦に流され、もみくちゃにされて、ボロボロにされていた。
「死んで、ないのか?」
何を言っても正常な会話になり得ない状況での僕の第一声は藍の安否について。人を解体して殺そうとしていた奴がする発言とは思えない。
「ああ」
戒は世間話のような軽い口調を崩さない。
「まあさすがにダメージ受けすぎたんでね。オレはちょっと休むよ。
じゃあね。戒はごく普通の友達同士の別れ際のテンションでそのまま道脇の用水路に転がっていった。
僕は長い間放心していたように感じていたけど、実際は数分もたっていなかったのかもしれない。
19時の町内放送で我に返り、学校へ急いだ。
******
/6月29日/
この世の中には超能力者が紛れている。
高校二年生
おれは「どんな超能力を持っているかがわかる能力」を持っている。
意外と大したことないって?いやいや、自分で言うのもなんだけどこの力は素晴らしいね。自分を危険から遠ざけるのにこの上なく役に立つ。超能力は様々な"イメージ"で見えて……これは後々でいいか。
「今日は学校に行かないで。休んでほしい」
登校中に最寄り駅でそう話しかけてきたのは"無能力者"の
「なんで?体調は悪くないけど」
「それは……」
「何を言っても届かないんでしょうね」
疲れたように、彼女はそう言った。会話何ターンか飛ばしたか?
「なんだよそれ」
わけわかんねえよ。
そのまま日準とおれは微妙な空気のままお互いの友達とちょうど落合い、別々で登校した。別に一緒に登校する仲ではないからな。
教室についたのは8時半回って5分。意外とギリだ。
隣の未界がまだ来てないな、休みか?
……あいつの能力はなかなかつかみどころがないんだよね。異質じゃない能力はないけど、あいつの能力にこそ"異質"って渾名がふさわしいと思う。こういう二つ名とか好き。
いや待てその前の席の
「はーいみなさん座ってくださーい」
いつの間にかHRの時間になっていたようだ。担任の
「えー定期テストまであと1週間、というのはみなさんご存知の通りかと思いますがーー」
そもそも真忠タワーが倒れて町の被害が尋常じゃないのになんで通常通り授業があるんだよ。テスト前の大事な時期ってのはわかるけど、この学校の教師連中は気がくるってんのか?
じじじ
「私が担当する美術はあまり対策をしない。そのような方が多いとは思いますが、受験に必要ないからと言って疎かにーー」
おれの能力なら最強の能力者集団を作れる。
じじじじじじじじじじじじじ
「ああだめです。肝心なことを忘れていました。今日、このクラスに転校生が来ています!」
じじじじじじじじじじじじじじじじじじなんだ?虫の羽音か?うるせえなさっきから。
「さあじじじじさん、どうぞ!」
ドアが開くと同時に虫が溢れます。それは液体のように群れが流動的に機能していて、彼一人にこの光景を見せるのはもったいないと評価されるでしょう。 は微笑みますが、箱庭から友人を逃さない前提の笑みなのでした。光( だったもの)を媒介として毛のないネズミが侵入を試みますが、来るもの拒まず。嫌悪と架け放れたこの精神こそが健康への道しるべなのです。
「……また死んじゃった。だから言ったのに」
******
「なんでいつまでたってもニュースにならないんだ」
思わずひとりごちてしまう程度には精神が限界なんだろう。
あんな場所に人の死体(正確に言えば生きた頭部だけ逃走したが……)が散乱していてニュースにならないのは報道機関がマヒしているか、米花町くらいなものだろう。勝手なこと言ってんじゃないよ。
テレビから流れる情報はいつも通り何ら変わらない日常を映していた。天気を現場からコメントしてもしなくても同じだろ。情報は言葉だけじゃないことを教えてくれているのかなハハ。
……何故戒はこんなことをしたんだろう。性癖とか任務とか意味不明なことばかり。実際のところ僕が今抱いているのが怒りか悲しみか判別がつかない。整理できていないんだなんにも。
今頃HRが終わってそろそろ一時間目が始まる頃か? 無断で学校休んでしまった。まあ大犯罪人の僕には関係ないか。ニュース番組は淡々とノルマのように日本のニュースを取り上げて…………………いや、おかしい。おかしいぞ!
ここ数日ニュース番組で整備の不備だのなんだの擦り続けていた真忠タワー倒壊事件がなにも取り上げられてない!これは僕の幻覚やらでは説明がつかない。
なにか……何が起こっているんだ?
/6月22日/
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます