第110話 人生2度目の近衛騎士団長
さてはて、三日三晩の爛れた生活をした私は普通に気絶していた。むっつりとかそう言う次元じゃ無い。化け物よ。
エルフを犯していた思ったらいつの間にか犯されていたとかそう言う可愛い問題じゃ無い。オークだって赤玉出して死ぬし、泣いて逃げるレベルだ。
「サブリーンの奴がそんなに窶れた姿を見れるたぁ、中々無いよコレは」
私の隣を歩くドラクロア団長は実に楽しそう。
「ドラクロア団長もコルネットとやればこうなりますぅー
まだ、お股がスースーする気がする」
「まったく下品だね」
ガハハと笑うドラクロア団長も上品とは程遠い。
「ドラクロアだんちょー程ではないかとー」
「相変わらず腹立つ奴だねアンタは。
まぁ、いいさね。私はアンタのそう言うところが好きだよ」
ハッハッハッと笑いながら肩をバシバシ叩かれる。
「私もードラクロアだんちょーは好きですよー」
ハッハッハッと笑いながら答えると、ドラクロア団長は不審そうな目を向けてきた。
「信じてなーい」
「胡散臭いんだよアンタは」
「所でどこに向かってるのでー?」
「お前の近衛龍騎士団を再編するってのは知ってるな?」
ドラクロア団長がこちらを見る。
「私のでは有りませんー陛下の軍隊でーす」
「ああ、そうだな。
お前があっちで楽しくやってる時に志願兵のみで編成した」
ほう。
「まー良いのでわ?
何人来ました?1000人くらい?」
「バカ言え。
士官学校の奴等全員志願したし、王立軍や国中の志願者からも1万人来たんだぞ?
お前が団長をすると言うだけでこんなに集まるんだ」
大したもんだよ、とドラクロアが首を振った。てんやわんやしたんだろう。
「選抜大会楽しかったですかー?」
「楽しくねーよ。
あんだけ来たらもう苦痛だよ。しかも素人ばっかだから手を抜くのが大変だったよ」
へー団長も大変だなー
「なるほどー
それで、私は何処に向かってんでー?」
ドラクロア団長は呆れた顔をする。それからやって来た闘技場の扉を開ける。中には数百人、いや数千人を超える兵士達が並んでいた。緊張した顔で。
「おー……すっげぇー
何やってんでー?」
「アンタの騎士団だよ。
おめでとう竜近衛騎士団長様」
あー、そう言うこと。
「えー?
言ってくれればいーのにー
もうちょっとちゃんとした格好して来たのにー?」
「言ってもちゃんとした服を着てこないだろうアンタ。
ほら、陛下がお待ちだ」
やれやれ。
用意された壇上には陛下が私を睨みつける様に待っていた。早く来いと言う顔だ。
なので、少し足早に近付いて壇上に登る。壇上に登ると、遠くに全近衛騎士団長や王立軍将軍、クリスティーナにさっきまで寝ていたはずのコルネットまでいた。
「えー?知らないの私だけぇー?」
「ああ、そうだな。
本来はしっかりとした式手順があるが、貴様はそう言う儀式も長ったらしい文言を覚えるのが無理なのは知っている。
さっさと傅け」
言われた通りに傅くと陛下は剣を抜いて私の肩に置く。
「汝を近衛龍騎士団長に任命する」
「ありがたく拝命致します」
深々と頭を下げ、剣を受け取る。
「演説しろ」
そして、陛下は壇上から降りる。
私は立ち上がって私の部下達を見た。一身にその視線を浴び、全員が私を羨望と尊敬の眼差しを持って見ている。
「おはよう諸君」
全員を見ながら挨拶する。緊張感が一気に高まった。
「さて、再び私は近衛竜騎士団団長として戻って来た。
前回、聖王国で暴れ過ぎて近衛騎士団長を解任されたのは皆の知っての通り。
正直私はホッとした」
ざわつく。そりゃそうだ。皆、近衛騎士の団長に憧れるのだから。
「私はエウリュアーレ殿下の様な知力も、ペンドラゴン団長の様な謀略も、ドラクロア団長の様な統御力も、ミュルッケン団長の様な魔力も無い」
皆を見る。
「私にあるのは、陛下への忠誠と、剣を振る能だけだ。
だから私は安堵し、そして、同時に嬉しかった。
また、最前線で陛下の為にこの剣を振れるのだと思うと」
陛下を見ると白々しい奴めと言う目をしていた。
「だが、陛下はどうやら私にふたたび近衛竜騎士団を率いろと仰った。
何故、私が再び、私の稚拙な指揮により壊滅した近衛竜騎士団の団長として任命したのか。
私は考えた」
全員が固唾を飲む。
「何故、私がこの地位についたのか!
皆はわかるか?」
全員が左右前後の者の顔を見る。アレコレと憶測が飛び交い、暫くして喧騒になる。私はその喧騒が静かになるまで待つ。
5分ほどだ。
「皆、其々の意見があるだろう。
私の考えは」
そこで切り、皆の様子を伺う。たっぷりと時間を掛ける。
「私の考えは、分からない、だ。
陛下のお考えは分からない。分からないのだ」
陛下を見ると何言ってんだテメェみたいな目で睨んでる。
「だから、私は考えた。
私に何が求められているのか。諸君が私に何を求めているのか、を」
全員が前のめりに私の話を聞く。
「私は常に諸君と共に最前線に行こう。我が陛下の軍の最先鋒として諸君等を前線に連れていき、我が軍の最後尾として殿を引き受けよう。
そして、その際には最も前にいる部隊ともっとも後ろにいる部隊と共に戦おう。
私に用意できるのは諸君等が名誉の戦死を遂げる事の出来る戦場だけだ。私が諸君等に用意出来るのは近衛竜騎士団の近衛騎士として後世まで語られると言う名誉だけだ。
私が陛下に答えられるのは、朝敵がいるぎり近衛竜騎士団がその最後の一兵に至るまで侵攻を食い止めよう。
私が諸君等に約束出来るのは、私がいる限り近衛竜騎士団は常に我が名誉と共にある!
諸君等は!私に何を求めるのではなく、陛下と名誉の為に何が出来るかを考えろ!
我が国は今、危機に瀕している!
この危機は鉄と血によって解決するしかない!
我々は幸にして王族の方々の護衛を委さられていない!つまり!我々が最も身軽に、最も果敢にこの危機に対応出来るのだ!!
諸君等は今ここに、私を穂先とし、刀身となり、柄となり、陛下の指し示す戦場に名誉を求めるのだ!
諸君等は今ここに近衛竜騎士団と言う槍となり王家の敵を一切の容赦無く突き殺すのだ!」
そう締めくくると、大歓声だった。
上手く行った、かね?陛下を見ると笑っていた。殿下達はスタンディングオベーションで大喝采。
私は壇上を降りて会場を後にする。
「素晴らしい演説でしたわ!
一言一句私が歌にして後世に残しますわね!」
クリスティーナが何処から現れたのか私の隣で告げる。
「即席でやったからもう何言ったか覚えてないよー」
「私が覚えてますわ!」
任せたーと告げると消えていった。
すげー何か吸血鬼みたい。吸血鬼だけど。
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