第109話 女王陛下の大切な無礼者

 結果から言うと、私以外の殆ど全員がワープした後に盛大にゲロ吐いた。理由はなんかよく分からない話をクリスティーナが説明してくれた。

 あと、ワープした先が玉座の間でエウリュアーレ殿下が陛下の謁見中だった為に陛下にクッソ怒られた。何故か、私が。


「取り敢えず、よく帰った。

 向こうでは何をしたか……はお前から聞くよりも、クリスティーナから聞くとしよう。

 お前は暫くコルネットに助言をしろ。知ってはいると思うが、3年後に魔王軍が戦争を仕掛けて来る。

 3年を掛けて我が国に耐え得る体制に整える。軍政はエウリュアーレが、実戦での構想はお前を含めた近衛騎士団長と王立軍の将軍達が集まってやる」


 陛下は少し疲れたようだった。

 まー戦争ぶっかけられてるからその準備だろうなーと言うのはこの城の雰囲気を見ても分かる。みんなピリピリしてるし、私らも大慌てで帰ってきた理由がそれだ。

 因みに運べる量に限度があったので近衛騎士達は船旅させた。


「はぁ、りょーかいです。

 コルネットは何をしてるので?」

「コルネット殿は魔道通信の確立と交通網整備、施設の配置など土木から政治行政の細部に至るまでやって頂いている」


 陛下は眉間を指でほぐしながら言葉を続ける。なんか疲れてるー


「お疲れのよーで」

「ん?ああ、ここ数日、まともに寝れていない」


 陛下は部屋で話そう、と告げる。

 その場にいた全員が頭を深々と下げ、退出した。私は陛下と共に陛下の私室に。私室には様々な資料が置かれており、ベッドの上にまで広がっていた。


「散らかっているが、適当に掛けてくれ」

「はい、しつれーします」


 大変だー結構大変そうだぞー

 魔族と戦争するって大変なんだな、知らんけど。


「私は数時間の仮眠はとっているが、コルネット殿はいつ寝ているのかわからん」


 陛下はそう切り出した。


「何故?」

「お前の為に報いたいそうだ。

 命を助けて貰い、その様な体にしてしまった。その為に彼の方は今も仕事をしている」

「そんな事……」


 コルネット……

 可愛い奴め。


「私は言ったのだ。

 お前がその様なことを気にする様な質では無い。何時も胸ばかり見ている奴だ、と」


 最後の一言は余分だと思う。事実だけど。


「クリスティーナも当分はコルネットと一緒に居なさいって言われたし」

「ああ、そうしてくれ。

 彼の方は死なずの身とは言え心は我等と同じだ。いや、我々よりも繊細やもしれん。

 お前の次なる任務はあの者の支援だ」


 陛下は眉間を揉みながら告げた。

 ほんと疲れの様だ。


「陛下」

「何だ?もう下がって良いぞ」

「はい。

 しかし、下がる前にもう一つ無礼をしても?」


 尋ねると陛下は怪訝な顔でこっちをみる。


「言ってみろ」

「では。

 陛下は我々と違って人間なのでしっかり休んでもろて。心はコルネットや私よりも鋼かもしれませんがーえーまー体はコルネットや私の様に怪我は無論のこと、死にますのでーえー

 しっかりと寝て、しっかりと食べて。

 シャキッとした頭で指揮してもろて。陛下の補佐はコルネットやクリスティーナがしますんで」


 言うと陛下は驚いた顔をして私をみる。それからフッと笑い立ち上がった。


「確かに無礼な奴だ。

 お前の心がコルネット殿と同じく繊細で、私が鋼だと?」


 陛下はクックックと笑い出し、それから頷いた。


「だが、しっかりとした休養は確かに大事だ。

 さっさと去れ」

「ひどい……

 失礼致します」


 一礼して去って行く。部屋を出るとメイドが控えていた。


「陛下はお休みになられる。

 湯浴みとその間に片付けを」


 メイドに告げるとメイドは深々と畏まりましたと頭を下げた。

 それから待合室と化している近衞竜騎士団に入るとクリスティーナが歌いまくっていた。コルネットはそれを聞いてまぁまぁと感激している。


「おーい、陛下寝るらしいからー

 クリスティーナはこのまま城で待機して起きたら陛下に報告とそのままサポートとかしてー

 コルネットはずっと働き詰めだったから暫く休暇だってー」


 弟子共はクリスティーナの下に入れた。


「サルーンはクリスティーナのサポートなー

 ユーリとおごーちゃんはー適宜クリスティーナに指示貰いながらサルーンにあった事、学んだ事を教えてあげなさい。

 サルーンは仕事をクリスティーナに伝えつつ、ユーリとおごーちゃんに向こうの事とか教えてもろて」


 何か質問と尋ねると全員が有りませんと言う。


「しかし、この様な時に私が休んで大丈夫なのでしょうか?」

「フフン?

 確かにコルネットは大図書館派と言われ、歴代の教皇を教えて来た。その叡智は我々には遠く及ばない」


 私の言葉に全員が頷いた。

 当たり前だ。生きた年が違う。おじいちゃんおばちゃんでは足らんレベルだ。軽く四桁年近く生きているだろう。何せハイエルフで、歴代の教皇達を教えてきたのだから。


「そもそも、コルネットが全て教えていては陛下の国民は皆アホになる。

 それは陛下の為にはならない。コルネットだけ居れば良い、それではダメだ。コルネットを元にこの国は育たねばならない。

 その為の気付きを与えるのは良いが無理矢理育てるのはダメだ」


 多分、コルネットの発言はこの世界には色々と早過ぎる。理解が追いつかない。勿論追いつこうと必死にコルネットの書き上げた本を読んだりするのだろうが、それを吸収するのにも時間が掛かる。


「水を大量に与えても植物は直ぐには成長しない。待たねばならない。

 そうだろう?」

「確かに……流石、サーシャですね。

 叡智があってもそれを与えるばかりではいけません。確かに。

 陛下の温情に甘え、暫く休む事にします」


 にっこりと笑うコルネットは最高に可愛かった。


「そーそー

 取り敢えず、お風呂入ろー」


 それから入浴タイム。その乳は実にたわわであった。コルネットは、クリスティーナよりもデカい。色々。

 コルネットジュニアもデカいの何なん?内側から内臓押されるとか初めての経験でゲロ吐くかと思ったわ。

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