第111話 とある弟子と錬丹術士の物語
さて、半年したら向こうに居た連中が帰ってきた。シャルマも付いてくる。これはシャルマは正直一緒に連れていってもしょーがないと言うことで海路に回したのだ。
そして、シャルマと残りの近衛達は想定していたがまさかの人物までついてきた。
「おーどーしましたー?
カタリナさーん」
そう、カタリナだった。
「いやーちょっと、ご相談を」
カタリナが申し訳なさそうに頭をペコペコさせ始めた。
何だろうか?
「団長室に」
「分かりました」
近衛騎士の一人が直ぐに案内する。それに合わせてクリスティーナとユーリを先行させた。
コルネットには向かうで出会った国認定の錬丹術士だと紹介し、道中の報告を聞く。内容は大した物ではなかった。
「そのまま殿下に報告」
あっちと指差し、使節団本隊は帰還した。私はカタリナを待たせている部屋に向かう。何が用なのか何と無く分かるが、取り敢えず、向かう。
中に入るとカタリナはユーリと何やら楽しそうに話していた。
「何用かな?」
「不死の術を習いに来たのと俺に煉丹術教えに来たってさ」
ユーリの言葉にカタリナはエヘヘと笑う。ふむ、何だろう、嘘だな。いや、どちらも本当なのだが何か本心じゃない気がする。ふむ。まぁ、良いか。
「それは良いですがー……
まぁ、良いや」
クリスティーナに目配せをすると、クリスティーナは頷いた。
「取り敢えず、クリスティーナとコルネットでカタリナを案内してー」
「わかりましたわ」
「あ、は、はい」
2人はカタリナを連れて出て行く。
お江ちゃんもついて行ってよしと言うと後を追う。
「あの人間、嘘を吐いている」
シャルマがそう告げた。
「少なくとも本心を話していない」
「何故そう思う?」
「そう言う魔術。
正確には危機感知の一つ。
自分達に怪しい言動をしてから相手に反応する」
ふむ。
「魔術下手じゃないのー?」
「頑張って覚えた」
らしい。
サルーンを見ると鼻で笑っていた。
「白の癖に情け無い」
「魔術の出来不出来に肌の色は関係無い。
だから貴女は黒と言われる」
2人が睨み合いを始めた。やはり白黒エルフは仲が悪い。
「仲悪いのは仕方ないけど、まー仲良くしなねー
あんまり酷いと対策考えるけどーまー上手くやりなよ。君等、この場ではコルネットの次にお婆ちゃんなんだからさー」
「お、おばあ……」
「私はまだ160歳。
おばあちゃんではない」
おばあちゃんだよ。
「人間からしたら100歳超えたらみんなおばあちゃんだよ」
ハッハッハッと笑い、それからユーリを見る。
「カタリナが何か隠してるのは分かったと思う。
多分君が1番近い位置にいる。ユーリが怪しいと思ったら切りなさい。これは師匠としての命令だ。出来ないなら言いなさい。私が代わりに殺すから」
「えーよくわかんねぇーよ」
ユーリが面倒臭そうな顔をする。
「じゃーユーリのやりやすい様にしなさい。
まーバレても私の権限で許そう。勿論、君がこの国を裏切るのであれば私は君も殺す」
「ん、わかった」
ユーリはむずかしい顔しながら部屋から出て行く。
さて、どう対応するかな?
暫くすると、クリスティーナとコルネットが戻って来る。
「全く!
サーシャ!貴女って人は!」
「流石に、あの、あれは、その」
何やら2人して非難轟々だった。
「なになにー?
私何もしてないよー?」
「ユーリ君がカタリナさんのところに来て「お前、なんか怪しいってサーシャが言ってた。だから何か怪しい事したら斬り殺すからな」って言って去って行ったのよ」
エエやん。
「私がエウリュアーレ殿下に言ったことやんね。良いんじゃないの?
ユーリ、私と同じタイプだし」
答えると盛大にため息を吐かれた。何やねん。コルネットも首振ってるし。
「なによー?」
「貴女は本当にユーリと同じですわね」
「鈍感と言いますか、朴念仁と言いますか」
酷い言われ様に流石の私もムカつく。
「女子のそう言う察してって言う文化嫌いでーす」
「貴女も女子でしょう」
「そう言うところです」
結論を言え結論を。
「私は」
シャマルが口を開く。何だろうか?
「あの人間が何を隠しているのかは知らない。
しかし、我々に隠し事をするならユーリ君やサブーリン殿の意見に賛成だ。口があるのだから喋れば良い。
それをしないのであれば、例えそれがどんなに高尚な理由であろうと斬り殺されても文句は言えない」
シャマルの言葉にサルーンが頷いた。
「奥方々には申し訳ないが、今回ばかりは白いのに同感だ。
口があるのだからハッキリと伝えるべきだ。貴女方のように無限の命がある訳でもない」
ノーマルエルフの言葉に嫁ーズはムググと唸る。
「朴念仁共め」
クリスティーナがそう告げると暫く考え、それから待ってなさいと告げる。朴念仁ズは大人しく待つ事にする。
暫くするとクリスティーナがカタリナを連れてやって来る。
「取り敢えずーこのくっそ無駄なやり取り早く終わらせたいのでー
何隠しているのかさっさと吐いてくださーい」
言うとコルネットに魔力ビームを打たれた。普通にクリスティーナの比じゃないくらいに速く、避けるのギリギリだった。頬掠った。
「当たったらどーすんの!?」
あぶなー!?
「何故今のが当たらない」
「師匠には常識が通用しない」
エルフーズが何やら騒いでる。
「はいそこうるさーい。
コルネットと一緒に外に出てなさーい。詳しくはそこで話し合いなさーい。クリスティーナは事情知ってるならユーリにも何とかしなさい。
カタリナら事情を話なさい」
以上と告げると全員が出ていく。カタリナと私を残して。
私の向かいに座るカタリナは酷く弱った様な顔をしていた。何やねんコイツ?
「あー……えーっとですね……」
カタリナはシオシオと話し始めた。
「齢24にして、初めてその、男性と言うものと親しくしまして」
「研究所にはいっぱいいるでしょ」
「フフ、私の様に若輩者で女となると、最早敵としか見られなくてですね……」
フフフと笑うカタリナの目に正気はない。余程な場所なのだろう。知らんけど。
「それで?」
「ええ、まともに話したのはユーリ君が初めてなんですよ。
彼は本当に良い男です。身の回りの世話や弁えるところはしっかりと弁える。そして何より私に対しても誠実だ」
ユーリ、異性として見れば良い男なのは間違いない。まー私は女の体に男の精神入ってるので男には一切興味無いんだよなー
「成程、ユーリに惚れたのか」
流石の朴念仁と罵倒された私でも分かる。
カタリナを見ると顔を真っ赤に頷いた。
「確かに、こんな嫁き遅れが8つも年下の男の子にこんな感情を持つのも可笑しいと思いますが「良いんじゃね?」
告げるとカタリナははぇ?と惚けた顔を私に向ける。
「私がクリスと出会ったのは6歳差、コルネットなんて4桁年差だぜー?
それに恋ってのは早いもん勝ちだってクリスが言ってたぜー?」
ハッハッハッと笑っていると扉が開いてユーリが戻って来た。
「話って何だよー」
ユーリが入ってくるなりカタリナを見て、腰の剣に手を置く。その目は敵を見る目だ。成程なーカタリナはそんな目を見たくないのか視線を反らせた。序でに後から入って来たクリスティーナは私を睨んできた。
「取り敢えず、カタリナはユーリに貴女の思いをハッキリと伝えなさい。
ユーリはカタリナの話を最後までよく考えて確実に答えなさい」
ユーリから剣を取り上げて外に出る。クリスティーナは残る気満々だったので普通に回収。
後はお若い2人でどーぞと言う奴だ。
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