第105話 異世界でビームは卑怯だろ。

 さて、コルネットとクリスティーナが用意した偽物の私はまぁ、驚くほどに容赦無く敵を斬り殺していった。

 ビックリする。少しでも隙を見せたらそこを突かれて一瞬で致命傷を与える。

 首を半分程切ったり、心臓を一突きしたり。

 今まで戦っていた雰囲気とも全く違うし、私同様に瞬殺するので偽物の試合は全く盛り上がらない。


「あのサーシャとか言う奴はつまら無い試合しか出来んのか?」


 近くにいた貴族っぽい奴が舌打ちと共に漏らした。直後、クリスティーナがその貴族の後頭部を手にしていた扇子で叩く。


「あの試合がつまらないなんて言っている様な愚か者は今すぐ去りなさい」


 まーそうよね。勝負という点ではモノの見事なカウンターとしか言いようがない。音速で叩き込まれる一撃だ。

 余程動体視力が良く無いとあの対戦者の様に首が半分無くなるわけだ。


「まーまー

 所詮はこの程度の集まりなんだよ」


 その程度のお祭りだ。

 兜を取って脇に置く。すると、会場が一瞬にして静まり返った。なぁにぃ?


「……私が出たら、誰も勝てないから帰っていーい?」


 クリスティーナを見るとダメですわとにっこり笑われた。

 ちぇー


「オレンジジュースちょーだい」


 脇の使用人に告げ、脇のテーブルに置かれた対戦表を見る。当たり前だが、私の名乗った偽名以外の名前は何一つ知らない。

 それから何試合か見ていたが、まーつまらない。自身の腕を見せようと言う所が目立ち、鼻に付く。


「質が低い」


 勿論、強そうな奴もチラホラ居る。


「お、変なエルフ」


 何試合かしたら例のエルフが出て来た。

 杖を片手に現れ、開始の合図に合わせてビーム発射。相手は吹き飛んで行った。技も派手で速攻で終わらせる。会場は盛り上がある。


「まぁ、何と下品な技」


 クリスティーナは呆れた様に首を振っていた。


「なんでー?」

「あんなのただの魔力をそのままぶつけてるだけですわ」


 この様に、とクリスティーナが手にした扇子の先から上空に向けて同じ様にビーム発射。普通にすげーかっこいいやん。


「えー?

 クリスティーナもそれ出来るの?」

「誰だって出来ますわ。

 コルネットさんはもっと凄いですわよ」


 試しに私もビームを出して見ようとしたが出ない。


「サーシャは魔力ねーから出ねーだろ」


 ユーリが笑いながら指先から随分と細いビームを出しながら告げる。


「まぁ、あのエルフとかクリスやコルネットみたいな魔力お化けしか出来ない技でもあるけどな」

「そうなの?」


 魔力お化けことクリスティーナを見る。


「ええ。

 単純に効率が悪いですもの」


 曰く、魔術とは攻撃力が100の魔力を150や200の火や電、水と言ったものに変えるモノなので、攻撃力100の魔力で攻撃力150や200になるならそっちを使えば良い。

 じゃあ、何故そっちを使うのかといえば単純に攻撃の出が早いから。剣でいうと、剣を握り、鞘から抜いて振り上げて下すと言う動作に対して、魔力をぶつけるのは拳を握り振り上げて殴り付けると言う動作になる。

 故に出は速いが余程のことじゃ無い限りは剣を抜いて戦った方が強い。


「なるほどなー

 魔力自体が多ければ攻撃力も高い。でも普通の人間だとそうならない」

「しかも、なんの捻りもないのでエルフや私達はまず使いませんわ」


 なるほどなー


「まー私はそこら辺気にしないなー

 勝てばよかろうなのだー!ってやつ?ルール違反でも無いし」


 答えるとクリスティーナは呆れた顔で首を振った。


「まぁ、あれ簡単に避けれるし」


 ねー?とユーリを見るとユーリも確かにと頷いた。


「あの光線は簡単に避けれるのですか?」


 カタリナが首を傾げた。


「そんなもの、相手の目見てれば何処狙ってるのか分かるでしょ。

 剣術と一緒よ」

「「「何言ってんのかちょっと分かんない」」」


 ユーリもお江ちゃんも首を振った。


「余裕だって。

 後で見せてあげる」


 脇にいる関係者に試合終わったらあの広場貸してと告げる。


「クリスがあのビーム打ってね」

「怪我しても知りませんわよ?」

「あれで怪我したらクリスが買った猫耳と尻尾付けて試合出てあげるよ」


 ハッハッハッと笑いながら言うとクリスティーナがにっこり笑った。


「言質は取りましたわよ」


 目が本気で殺しに来てた。ユーリを見るとユーリは俺は知らねーと速攻でケツ捲りやがった。

 まぁ、良い。

 それから数試合くだらない試合を過ごし、私とクリスティーナは試合場に。観客は勿論、何故か選手達まで観客にいた。


「終わったんだから帰れよー」

「タダでここを貸すとは言ってませんので」


 支配人と一緒にやって来たリョーラン妃。


「まーいーや」


 クリスティーナを見るといつでもどーぞと言う顔だった。口元を扇子で隠して余裕の表情。


「つー訳で、あのビームを避けまーす」


 クリスティーナにいーよーと言った瞬間普通にさっきのよりも高火力かつ速いビームが飛んで来た。

 まぁ、正確な狙い故に普通に避けれた。私の顔面狙いだったし。


「はい楽しょー」


 クリスティーナを見るとまだまだ余裕。


「わかったー?」


 2人を見ると分かると思うか?と言う顔だ。


「はい、もっかーい」


 クリスティーナは手にした扇子を閉じると扇子の先を私に向けた。


「お、いーねー

 これやられると大抵の人は扇子の先を見ちゃうのよねー」


 でもそんな事はない。

 ビームはクリスティーナの大体胸元から延長線上60センチほど先から出て来る。さっきよりも太い。私の胸辺りを狙って、直径は50センチほどのビーム。

 これは流石に体ごと動かさないと避けられない。


「まー私には効かないけど」


 ハッハッハッと笑っていたらガンダムかよって言うぐらいに凄いビーム弾幕が飛んで来た。


「何だぁ!?」


 普通に当たるかと思った。


「あら、避けられましたわ」


 残念とニヤリと笑うクリスティーナさん。


「おーらい、そっちがその気ならこっちにも考えがあります」


 脇にいた槍持ちに槍貸せと告げると槍を投げられた。


「槍ってのは、本来はね。

 複数人で使う集団戦用の武器なのよ」


 なので、こう言う場で槍を使う人の気が知らない。

 クリスティーナが再度さっきとは違い散弾ビームを放ってくる。


「散弾ではなぁ!」


 穂先でビームを叩く。ここの国の槍は特にしなるのでクリンクリンやると普通に叩き落とせるのだ。


「フハハ、その程度で私には猫耳は付けれん」

「成程、分かりました」


 何か分かったらしい。

 クリスティーナは扇子をパンと開くと口元を隠す。それに合わせて私の四周に魔法陣が浮かびそこからビーム。


「ウハハ!

 楽しい!」


 全部避けつつクリスティーナの元に向かう。敢えて走らない。次々に現れては消える魔法陣。出現してもビームを放たない物や出現しても暫くビームを撃たない物など様々なものがある。

 まぁ、全部避けれるのだが。


「何で当たんねーんだよ」


 ユーリがキモーと言う顔をしている。失礼な。


「クリスティーナの目を見てればどこから飛んできて、何処に次のビーム魔法陣出すか分かるでしょーが」

「意味わかんねー」


 結局、ビームは当たらず、私はクリスティーナの前に。


「私の勝ちー」


 クリスティーナを抱き締めてキスをしてやる。


「コルネットさんなら絶対当てれましたわ」

「コルネットの魔力ビームは流石にねー

 擦り傷とかは出そう」


 うむ。

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