第104話 実は嫁さんが1番強い
何度か勝利をしたがそれからずっっと拘束されっぱなし。
理由は反則防止の為。
「夜なっちゃった」
絶対怒られるやん。クリスティーナに。あの猫コスプレセットでニャンニャンしようとしてたやん今夜。
スマホあれば便利だけどそう言うの無いし。
「伝言頼みたいんだけどー」
近くにいた運営の奴に聞いてみる。
「申し訳御座いません。
外部との連絡を取るのはこの大会で貴方様が負けるか優勝なされるまでは外部との接触は不可能になっております」
「あーマジか。
棄権は?」
尋ねると何言ってんだこいつと言う顔をされた。
「明日は決勝戦です。
貴方は既にその1人となっております」
「じゃあ、サブーリンって騎士は何処で戦うので?」
「サブーリン様は優勝者と勝負することになっております」
「ふむ、ならええか」
私が相手なら私と当たれば良い。
「じゃ、大丈夫でーす。
このまま残りまーす」
「はい、当然で御座いましょう」
失礼しますと去っていった。
さてはて、やること無くなった。食事も普通に出て来るし眠くなったらあそこで寝ろと教えられた個室。
やる事無いし、個室に行って寝よう。寝て起きたら決勝戦やし。
と、言うわけで寝る事にした。豪華なベッドで、私が普段使ってるベッドよりもフカフカ。クリスティーナのベッドくらいフカフカ。
と、言うわけで普通に、がっつり、寝坊した。決勝戦開会式は普通にブッチし、私の試合になって漸く係が血相欠いて起こしに来たのだ。
「ごめーん、寝坊しちゃって」
係に滅茶苦茶怒られながら入場。滅茶苦茶広いが、なんとなく既視感ある。
観客席を見回すとクリスティーナ達が居る貴賓席を発見。クリスティーナの隣には私の鎧を着てフェイスガードを下ろした誰かがいる。
「遅いぞ貴様!」
対戦相手は激おこ。
「ごめんて。
普通にベッドフカフカで寝坊しちゃったー」
「舐めた事を!」
審判が始め!と叫び相手は突っ込んでくる。なんの取り柄もない袈裟斬り。小手調べのつもりらしい。バカが。
振り下ろされる直前に内に入り、振り下ろされる腕を掴む。そしてそのままの流れで背負い投げ。腕は私がガッチリ掴んでいるのでうまく受け身は取れない。が、相手もしっかりと此処まで残ってきているだけあって何とか着地はする。勿論、私が腕を取っているので普通に腕を捻り折ってから剣を回収。
「いやー剣持って来るの忘れてさー
借りるねー」
「なっ!」
相手の喉元に剣を突き付ける。
相手は口パクパク。
「はい、君は一回死にましたー」
間合いをとってからクリスティーナの方をチラッと見ると憤怒の形相でコチラを睨んできていた。普通に激おこプンプン丸通り越してカムチャッカファイヤーしてる。
隣の謎の私には申し訳ないが、優勝者決定戦まで耐えて貰おう。
「どうする?
利き腕は折れた。得物もない。そして何より、一回死んだ」
「舐めるな!」
虚勢だ。
「舐めてなど居ない。
私は至って普通だ。君が舐められていると思うのは、自分が私に勝る事が出来ないと薄々感じているからでは無いのかな?
この様な児戯に命を賭けるほどでもあるまい。また三年後に来たまえ。私はその時も生きている。勿論、参加するとは限らないが」
告げると相手は悔しそうに下を向いた。審判を見ると審判は頷き私に旗を挙げた。観客全員ポカーンとしてる。思った以上に地味だったのだ。
私は彼に剣を返し、チラリとクリスティーナを一瞥。クリスティーナはスックと立ち上がり早足で後ろの出入り口に。私も同じ様に小走りで入って来た出入り口に戻る。
待機場に戻ると昨日のエルフやら見た方ある様な鬼とか狐とかが居たが、取り敢えず個室に逃げ込む。扉の鍵をかけ、ふぅと一息ついた瞬間、扉が蹴破られて私の鎧を着た誰かと共にクリスティーナが入って来た。
「サーシャ!!」
「サーシャです!」
クリスティーナが私の身代わりを押し除けて私の前に。そして、かぶっていた仮面を剥ぎ取る。
「貴女は!何を!なさっているの!!」
「これにつきまぐふぇ」
口を開いた瞬間喉に指突き。私は喋れない。
「貴女は!フラフラとどこかに行ったと思ったらこんな所で何をなさっているの!」
喋ろうにも喋れない。
「私がどれだけ心配したと思っているの!
せっかく面白いものを買い付けて貴女にプレゼントしてあげようと準備したのに!
肝心の貴女が居なくては何の意味もありませんわ!!」
喉が潰れて喋れない。
「しかも今日はこの武闘会の開会式で参加すると言う話なのに貴女は帰って来ない!
仕方ないから身代わりまで用意したのよ!」
そう言ってクリスティーナは身代わりの兜を取る。中から私そっくりの人が現れた。色は鈍色の鉛みたいな色だけど。
「な゛に゛そ゛れ゛」
「コルネットさんに教わって慌てて作った写身と言う物ですわ。
私の記憶を元に作り上げたもう1人のサーシャですわ!強いですわよ!」
ほう、それは良い。
「あ゛ーあ゛ーあー
よし、治った。じゃあ、私はそれと戦う。
決勝戦で」
「……それはそれで面白そうですわね。
良いですわ!オゴーさん曰く、普段のサーシャよりも反応が速くて隙の無い分更に手が出ないそうですわ」
「ふむ、なるほどねー」
こりゃ、しっかりとした武器必要だな。
「月血斬血と火かき棒を」
「あとで持って来ますわ。
それと、今日中に終わらせてくださいましね。私、欲求不満でしてよ?」
クリスティーナが私にディープキスをしたかと思ったら舌を思いっきり噛んできた。痛い……
「私の試合は速攻終わらせるけど、他の人は保証出来ませーん」
取り敢えず、そう答えるので精一杯だ。
こわー、獲物を狩る目ですわ。
「そうですわ。
貴女と偽者を交換すれば良いんですわ」
クリスティーナは言うが早いか私と複製を隣の部屋に連れ込んで鎧を脱がせ始めた。
服を着替えて外に出る。すると大会運営側が立っていた。
「困ります!こんな勝手な事をされては!」
「いいえ、良いの」
良いわけあるか。
クリスティーナが運営役員と目を合わせ、全く揺るぎない視線で再度告げる。
「良いの」
「はい、良いです」
あれー?
クリスティーナ、なんかやったな。怖いから詳しく聞かないけど。
私はガッツリ腕を掴まれて連行される。
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