第103話 控えめに言って最強の場荒らし

 待合室で待っていると番号が呼ばれていく。呼ばれて行った連中は帰って来ない。何してんだろーか?試験かなんか?

 番号呼ばれるまで座ってよーかな。端の丸椅子を手に取り静かに座る。暫く観察していると全員が興奮や恐怖を隠す様に自慢をしたり瞑想したりしている。戦場を前にした兵卒共みたいだ。

 懐かしい。最後の戦場は聖王国か?

 あそこは普通に精鋭ばかり集まっていたな。じゃあ、もっと前だから……


「ああ、商人の国か」


 あれは雑魚だったなー

 中々良い作戦立ててたけど、我々の方が上だった。


「ん?俺が協商国出身って分かったのか?」


 前にいた男が嬉しそうに私に絡んできた。


「俺も、有名になったな!」

「アンタのことなんか1ミリも知らないでーす。

 此処にいる全員が協商国と戦争した時にいた兵卒と同じ感じなのでー思い出しただけでーす」


 そんな話をしていたら番号を呼ばれる。


「呼ばれたんでーしつれーしますぅー」


 もう会う事はない無いだろう商人の国の挑戦者にさよならを告げて呼び出し係の方へ。呼び出し係の周りには呼ばれた番号の人達が揃っており、一列に並ばされている。

 私も其処に並び、それから規定数来たのか行けとのこと。先頭に続いて歩いて行くと広い闘技場みたいな場所に出た。其処では幾多かの雑に仕切られただけの闘技会場があり、ワーワーと大人数が戦っていた。

 最後まで残ったら勝ちみたいなそう言うクッソ雑な取り決めなのだろう。頭悪いが確実な仕分け方法やな。

 そして、そんな幾つかある闘技場の一つにやってくる。


「此処で戦え!

 残った者が次の戦いに出れる!」


 成程なー

 それから四隅に審判みたいな奴らが立ち、始めと言われる。もうやるんかい。

 取り敢えず、隅に移動して最後の1人になるまで眺めておこう。審判の隣に座って殴り合いやら斬り合いを始めた参加者を眺める事にした。

 しかし、レベルが低い。なんか、見せつける様な戦いしかし合わないのでアホみたいに冗長とタメがある。欠伸が出てしまう。


「クソつまんねー」


 早く帰ろう。

 立ち上がって片っ端から棒でぶん殴ってやる事にした。差し詰め何たら無双。

 ものの数分で全員地面に伸びている。


「よし、終わり」

「こ、此方にどうぞ……」


 審判の1人がドン引きした様子で案内してくれるのでその後に続く。

 案内された場所は先ほどと違って少しばかり人の数が減った場所。騒がしさは変わらない。

 話内容は先程と変わらず声高らかに何人倒したとかそう言う話だけだ。まだまだ質が低い。

 壁には色々な仮面が掛けられており幾つかは壁の後ろに人がいて仮面を通してコチラを監視していた。


「ん?」


 その中の一つが思いっきりコチラを見ていたのでその仮面を見つめると、奥にいた人間は慌てて逃げて行った。

 手身近にあった仮面を手に取り被ってみる。


「おー意外に視界良いね」


 何て感じで仮面をつけてウロウロ。次はトンファー使ってみるか?ヌンチャクでも良いな。なんて事を考えていたら、ズズンと地面が揺れて柱から埃が降って来る。ばっちい。

 暫くすると大きな杖を持ったエルフが案内されてやってきた。


「アイツっ!?」

「マジかよ」


 周囲がざわめき出す。誰だよ。アイツとか、マジカヨとか言われても私は知らんぞ。

 まぁ、魔術師だろう。ゴリゴリに詰めれば敵では無い。

 エルフは場内を一瞥し、私に視線を止める。気配を完全に消して他人に重なる様に視線を切ってその場に座るとあら不思議。

 相手は私を見失う。仮面を外してそっと立ち上がるとエルフはキョロキョロしていた。

 私はそのままエルフの背後に位置して仮面を被る。

 暫くすると番号が呼ばれ始め、私も番号が呼ばれた。エルフはずっとキョロキョロウロウロと私を探していたがずっと後ろにいたので勿論見つかるはずもない。


「私は此処だよ」


 集合場所に向かう際に、エルフの肩に手を置くとエルフは凄まじい勢いで振り返った。目を見開き口も開いている。

 集合場所に向かうと如何にも格闘家な少女がおり、手にはヌンチャクを持っている。おーヌンチャク少女。

 そんな感じで闘技場に入ると先程よりも少ない人数でのバトルロワイヤル。

 私は先程同様に気配を消して端に座る。ヌンチャク少女はヌンチャクを振り回して相手を殴って行った。間合いはかなり短い。剣や槍相手には中々分が悪そう。

 しかし、間合いが近いから懐に飛び込めばヌンチャク少女の物。なるほどねーそう使うのか。

 私の趣味ではない。

 使い方も分かったのでヌンチャクをヌンチャク少女に思いっきり投げ付ける。ヌンチャクはスカーンと良い感じの音を立てて少女の頭部に直撃。少女は倒れた。

 私はトンファーを取り出して残る全員をフルボッコにしてやる。さっさと帰ろう。飽きて来た。


「こ、こちらに」


 審判に連れられてまた別の部屋。さっきよりも更に小さくそして豪華になった。

 椅子に腰掛けて、仮面を外す。暫くするとズズンと再び地面が揺れる。あのエルフか。気配を完全に消して扉の直ぐ隣に立つ。

 案の定、先ほどのエルフが周囲をキョロキョロしながら入って来た。私もその直ぐ後ろをついて行く。

 エルフは壁際の隅に陣取るので私は柱の隅に隠れておく。エルフは何やら唱えて手にしていた杖で床を小突く。

 何してんだろ?

 するとエルフはスックと立ち上がり私の前に。


「貴方は何者?」


 そして、私の前に立つや否やそう尋ねて来た。


「こんにちわ、白エルフ。

 何処かであった事があったかな?」

「貴方は異質」


 酷い言われようで笑うしかない。

 まぁ、月の騎士だししゃーない。


「まぁ、君には負けるけどね」


 ハッハッハッと笑いながらエルフの肩に手を置く。エルフは全くもって反応できないと言う顔で目を見張っていた。


「まぁ、その内戦うかもしれないからね。

 魔術師と真っ向から戦ったことは無いんだ。

 きっと強いんだろうな」


 知らんけど。

 ちょっと楽しみ。クリスティーナやコルネットだと本気でやってくれないからね。しょうがないね。

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