第81話 迷子の迷子のドラゴンスレイヤー

 マーベル大師とか言う奴をボコしに行くことになったのだが、問題はマーベルが何処に居るのかと言う話だ。

 バッドマンやスーパーマンだな。


「分からなかったら聞けば良い」


 左手の指が二本潰れただけぢゃ。


「ほら、マーベル大師のとこまで歩きなー」


 裸足で服も全て取っ払い、丸刈りにされた実行犯の背中を左手に持った火かき棒で押す。この格好にしたのは第二近衛と一緒に来た第一近衛、つまりはしれっと着いてきたペンドラゴン団長の選りすぐりだ。

 よく見れば拷問をしようとしていた痕があり、馬鹿なことしたねぇって言う感想。


「サブーリン様!

 これは一体!!」

「毒盛ってきた人だよー

 マーベル大師の所まで行くよー

 邪魔立てするなら殺す」


 やって来た聖騎士にも右手の火かき棒を向けると両手を挙げて道を開けてくれる。


「マーベル大師じゃなくて、メイベル大司教だ。

 お前案内しろ」


 ドラクロア団長が言うと聖騎士はこちらですと先頭に立ち、更には道を開けろと怒鳴り始めた。

 案内要らないやん。ペンドラゴン団長を見ると、団長が頷いたので、女を殺す。


「なっ!?」


 ドラクロア団長がペンドラゴン団長を見ると団長は苦笑していた。


「殺せじゃなくて、ドラクロア団長の部下に渡せって意味だったんだけどね」

「あーそうだったんですねー

 次からは言ってくださーい。言われないと分からないのでー

 私は基本敵は殺す前提で行きまーす」


 両手の火かき棒を肩に担ぐとペンドラゴン団長は笑いながら頷いたので。行進再開。

 メイベル大司教のいるらしい場所まで来ると、メイベル派の聖騎士が邪魔立てしてくる。


「メイベル大司教猊下に至急謁見を!」

「ダメだ!

 猊下は現在大事な祈祷中「中に居るんですねー」


 立ち塞がった聖騎士の足を払って喉を潰す。そして、扉を思いっきり蹴飛ばすと扉が外れて数メートル程飛ぶと同時に派手な音を立てて倒れる。


「お邪魔しまぁーす。

 メーベル?とか言う大司教誰ですかぁ?」

「何だ貴様ァ!」


 剣を抜いた騎士が切り掛かって来るので剣を受け流して首に火かき棒の鍵を突き立てる。ビクンビクンと震えて力なくその場に崩れた。


「メーベルだいしきょー

 居ませんかー?」


 脇にいたシスターの胸倉に火かき棒を立てた被覆を巻き取り手繰り寄せる。


「メーベル大司教は誰ですかァ?」

「大司教猊下は彼方に!」


 シスターは泣きそうな顔で指差す先を見るとばばあが居た。豪奢なシスター服を着ており、1人だけ落ち着き払った顔でこちらを見ていた。


「おーあのばーちゃんですねー

 殺しますぅ?」


 後から入って来たペンドラゴン団長を見る。


「話し合いに来たんだよ。

 下がって」

「りょーかい」


 火かき棒を思いっきり引っ張ってシスター服を引き裂き、剣を仕舞う。そして、気配を完全に消して、ペンドラゴン団長の後ろに下がる。

 ペンドラゴン団長は何か話を始めるので私は内装を確認しながら周りをうろうろ。

 ドラクロア団長は周囲を睥睨して威圧する。パワータイプにありがちな威圧をしていた。


「あーた、何してるんでー?」


 こそこそ、逃げようとした奴が居たのでその首をホールド。そのままペンドラゴン団長の前に放り出す。


「怪しい奴捕まえましたー

 いや、怪しいって言うなら此処に居る全員怪しいですけどー」


 怪しい動き、が正しい。


「貴女がサブーリン騎士ですか?」

「私がサブーリン騎士でー御座います」


 お見知り置きをーと慇懃に頭を下げておく。


「あなた方はここを何処と考えているのですか?」

「あなた方は我々を誰と考えているのですかぁ?

 王国の代表でーす。呼び付けて、毒盛って、普通なら戦争ですがー?

 私残るので、ペンドラゴン団長とドラクロア団長には近衛と王立軍引き連れて戻って来てもらいますぅ?

 私は全然良いですよー?

 戦うのは嫌いじゃ無いし、貴女方みたいな私と同じ背格好の敵ならドラゴンより楽ですし」


 どーします?と笑っておく。

 ババア、今更になってことの重大に気が付いたらしい。顔が少し焦ってる。


「返事が無いのでー

 私が残るって感じが良いでーす」


 ペンドラゴン団長を見ると笑っていた。

 

「まぁまぁ、今日は話し合いだから。

 サブーリン団長は先に帰って良いよ」


 邪魔者扱い悲しい。


「分かりましたー」


 悲しい。

 気配を消して講堂を後にする。後にするのは良いが、ここまで案内の後を歩いていたから来た道をあんまり覚えていない。中に戻るにしてもカッコ悪い。

 まぁ、歩いてればドラクロア団長の部下立ってる協会あるやろ。

 そんなノリで歩くこと1時間。普通に迷子になった。あと10年早ければ泣いてた。


「……取り敢えず、あのパルテノン神殿に行こう」


 日も落ち始めて人も見なくなった。

 辿り着いたのはクソデカパルテノン神殿みたいな作りの建物。階段を上がって中に入ると中は図書館だった。図書館かー

 入り口には人が居らず、仕方ないので誰かいないかを確認する為に奥に。中に入ると事務所みたいな場所で書類やら何やらが散乱しており、シスターと神官が殺されている。


「えー?」


 血を見るについさっき切られたばかりだ。

 取り敢えず、剣を抜いて耳を澄ます。すると、何かを追いかける様な足音が複数。逃げる足音が一つ。


「ふむ」


 取り敢えず、目を瞑って音源に向けて走る。

 本棚を幾つか過ぎたところで、足音が止まり剣を振る音。防ぐ音。うーむ、間に合え?


「おらよぉ」


 本棚を更に越えたら大司教共が着ていた司教服が暗殺者みたいな連中と剣を結んでいる。間に合ったのだ。

 なので、剣を切り結んでる奴の背中に死の刃を投げる。死の刃は深々と突き刺さり、暗殺者は無事死亡。

 残りの2人はこちらを確認するや否や切り掛かって来たので1人は手にしていた剣を弾いて隣の奴に突き刺してやる。馬鹿奴。こんな狭い場所で並べばそうなる。対人戦闘は奇襲が殆どだな?

 そして、味方を剣で突き刺した驚愕と味方に刺された衝撃で2人の思考は止まる。それが命取りだ。味方を刺した奴の頭を割り、味方に刺された奴の顎を砕いてやった。

 頭を割った奴は死亡、顎を砕かれた奴は両手足を砕いて逃走も不可能にしておく。


「だいじょーぶで?」


 奥の方で死体の下でもがいている奴を助けると、エルフだった。白い方。

 しかし、ミュルッケン団長とは違いその体は豊満だってし、タッパもある。そして何より、その顔は私の記憶を酷く刺激した。

 前世で片思いのまま結婚した親戚のお姉さんにそっくりだったのだ。ああ、忘れていたあの身を焦がす様な焦燥感、多幸感、そして、不安と恐怖。

 泣きそうになった。

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