第80話 ジジイと陰謀と毒殺と。
漸くの道のりで聖王国に到着する。
聖王国側の出迎えは聖騎士団達だった。兵士達も騎士達も市井の民も全員私を見ている。
「めっちゃ見られてる。
ウケる」
手を振ろうとしてドラクロア団長に止められた。
「止めろ。
観光に来たわけじゃ無いんだぞ」
「えー?でも戦争しに来たわけでも無いのでー此処はいっちょ、友好的に振る舞いましょうよー」
おーい、と手を振ると子供達は家の中に引き摺り込まれ、窓は閉められ、兵士や騎士達は顔を緊張させた。
「腹立つわー」
ドラクロア団長は大笑い。
取り敢えず、周りの連中に中指を立てておいた。後頭部を叩かれる。
「止めろ!」
この世界で中指を立てるのは非常に下品な行為だ。
それから聖王国の教皇のいるらしいクソでかい大聖堂みたいな場所に着く。
着くと聖歌隊が大合唱。
「何かボス戦みたい」
腰の火かき棒を左に2本揃えていたのを左右に直す。馬に乗る時は左に揃えた方が良い事に最近気が付いた。と、言うのも手放しだと馬が余り言うことを聞かないので左手は常に手綱を握っているので、なかなか抜かない左右に落とすよりは左側につけておこうと言う天才的発想。
私が剣を直すと聖歌隊の歌が止まり、聖騎士達が槍を構えた。なので、そのまま抜剣しようとしてドラクロア団長に抱き付かれ、ペンドラゴン団長が敵対の意思はないと叫ぶ。
「えぇ?
槍構えたのはあっちですよぉ?」
「皆、お前が怖いんだ!
何処の世界にエンシェントドラゴンを細切れにする騎士がいるんだ!」
「此処にいますが?」
「だからだよ!!
お前はもう少し剣を抜くと言う行為に躊躇を覚えろ!」
「私達は陛下の命によって此処に立っているのでー
私達に剣を向けるならば、私達はそれらを排さねばならない。なぜならば、王命より遣わされた我々に剣を向けると言う行為は陛下への敵対行為に他ならない。
私と言う個人に目が眩み、剣を向けるのであれば聖王国とはその程度の存在。陛下が気を回す価値すらないと言う事でして、えぇ」
帰りますぅ?と尋ねると大聖堂の方から司教みたいな連中が大汗をかいて走って来る。周りの聖騎士達もその登場は予期していないのか慌てていた。
「豚が服着てる」
近付いて来るに従いその人物の顔がわかって来る。豚の獣人……いや、オークみたいな奴だった。
聖王国は人間とエルフ至上主義だと思っていたがオークでもあんな凄い服着た地位に付けるのか。少し見直したぞ。
「よ、ようこそ聖王国へ」
オークは息を整えるのもそこそこに我々の前に傅いた。
お偉いさんとの会話はペンドラゴン団長に任せよう。私は周りの聖騎士達を観察する。全員バスターソードとか呼ばれる両手剣か大楯と槍を持っている。細かい紋様が刻まれた物で魔術的な何かの効果がありそうだ。
途絶えていた聖歌隊の歌も再開した。
長い通路を渡り、中に入ると世界で一番豪華な謁見の間と言っても差し支えないほどに豪華絢爛な部屋だった。
玉座には今にも死にそうな爺さんが座っている。
あれが教皇であれの後釜を争ってるわけか。くだんねーな。
「……」
取り敢えず傅く。
「サブーリン、騎士は何方、かな?」
死にそうな爺さんが実に死にそうな声で告げる。
「自分がサーシャスカ・サブーリンで御座います」
一歩前に出て顔を上げる。
「この様な、若き、少女が……」
20代前半を捕まえて若き少女と言われると世の少女達に申し訳が立たないな。
「本当に、かのエンシェント、ドラゴンを?」
「竜体型ではボロ負けしましたが、人体型なら余裕ですねー
あと有名な話だとゴートデーモンとか15人抜きとかですかねー?
まぁ、しょーじき近衛騎士団長ならゴートデーモンあたりなら一対一で勝てますよ、死の刃があれば」
ねー?とドラクロア団長を見ておく。
ドラクロア団長はこっちを見るなと睨んできた。
「そ、そうなのか……」
ジジイがゴホゴホし出したので謁見は終了。
何だろうね。その後我々のために教会みたいなホテルに案内され、イケメンな修道士がお世話係に当てられる。ドラクロア団長も男でペンドラゴン団長には女。私もそっちが良い。
「取り敢えず、あのじーさん1ヶ月持たなさそうですねー」
ダイニングみたいな場所、開口一番告げるとドラクロア団長がギョッとした顔をした。
「そうだね。
まぁ、だから僕等が呼ばれたんだろうね」
「じゃあ、死ぬ迄は暇って事ですかねぇ?」
背もたれに体を預け、脇にいたシスターにお茶と告げる。
「そうだね。
暫くは好きにしてて良いよ。ドラクロア団長も」
「分かったよ。
聖王国は付与武器が凄いから武器屋でも巡るかね」
「へーそーなんですね。
私も行きまーす」
雷の剣とかありそう。
聖王国関連だと宗教だから、奇蹟を扱うタリスマンや祝福された系の武器が多いんかしら?
でも、現状で欲しい武器もねぇしそう言うの弱点な敵とも戦う予定はない。
出されたカップに口を付け、ドラクロア団長も飲もうとしたので火かき棒で阻止。シスターの腹にその火かき棒を叩き込み、逃げようとしたクソ坊主見習いの背中に死の刃を投げ付ける。
「毒、と言うか媚薬みたいなものかな?」
ペンドラゴン団長がティーポットの臭いを嗅いで肩を竦めた。
私はシスターの腕を机の上に置き、手を開く。
「さて、はて、誰の命令ですかー?」
「私は貴女達の命を狙った訳では!」
小指に火かき棒の柄を振り下ろす。クチャっと潰れた。細くしなやかな指。あー痛そう。
「誰の命令ですかー?」
「メイベル大司教です!」
誰それ?ペンドラゴン団長を見ると頷いたので薬指を打撃。
「本当です!嘘じゃありません!!
私と彼はメイベル大司教派の者です!!」
絶叫。
ドラクロア団長は死の刃で死んだ男を見聞し終わったのか私に布で刃を覆った死の刃を差し出してきた。
「お守りと手帳しかなかったよ。
ほら」
ドラクロア団長は革の手帳をペンドラゴン団長に差し出し、次に拘束されて泣いて失禁までしてるシスターの体をあたる。
持ち物は同じ。ドラクロア団長は扉を蹴破らん勢いで出ると部下を呼び付けた。
それから家探し。私はシスターを外に放り出す。ペンドラゴン団長はドラクロア団長の部下を数人連れ外に行くので私もその後に続く。
「どうされたのですか?」
「なんとか派の司教に毒盛られたので殺しに行きまーす」
「殺しには行かないけど、話し合いはしに行くよ」
ペンドラゴン団長が言葉を被せる様に告げてきた。殺さないのかー
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