第79話 王国の逝かれた近衛竜騎士団長を紹介するゼェ!!

 聖王国への旅路は戦争行くんか?と言わんばかりに重装備で行くことになった。


「フル装備の騎兵持ってくってのもなかなかですねー」


 まぁ、全部重装騎兵だし銃兵居ないから完全に見掛け倒しだけどな。

 ちなみに第二近衛の人員だ。


「陛下の御命令だからしょうがねぇよ。

 しかし、これじゃあ威圧しかしなぁと思うけどな」


 隣を歩くドラクロア団長が肩を竦めた。


「馬も鎧まで着せて、大変でちゅねー」


 股下の馬の立髪を撫でてやる。

 まだまだ、先は長い。鞍の上に寝転がり、空を見る。平和な空だ。足を組み、目を瞑ればもうお休みだ。次に起きたら目的地。


「なんでお前はあの不安定な場所でいびきかいて寝られるんだ」

「普通に寝れません?」


 此処をキャンプ地とすると宣言していると、何故か呆れ果てた顔をしたドラクロア団長がやってくる。

 此処は行商人や巡礼者達も使うキャンプ場で、我々以外にも今晩の寝床を作る人々がちらほら見える。

 大きな湖畔もあるので、水には困らない。馬達などに飲ませるための水場も引いてあったりして中々どうして良い立地なのだ。


「寝過ぎて普通に夜眠れない気がする」


 腰に提げている火かき棒を2本抜き、ドラクロア団長を見る。


「手合わせかい?」

「えー、好きでしょう?」


 ニヤリと笑うとドラクロア団長もニヤリと笑う。

 それからドラクロア団長と一時間程試合。

 やっぱりドラクロア団長は剣との相性悪過ぎる。まずデカい。次にデカい。そして、デカい。デカいは正義なんだよ。

 ドラクロア団長の盾も剣もデカい。戦闘時は普段の大きさの更に倍に感じる。これが威圧感。相手にビビればビビるほどデカくなる。

 怖いねぇーって奴だ。相変わらず砲弾の様に繰り出される両手剣の突き。何だよ、ボッて言いながら繰り出される突き。音速超えてんじゃん。

 久しぶりに戦うと楽しい。プレイの甘さとかぎ命取りになる。そう言う存在がドラクロア団長。


「相変わらずちょこまかと……」

「いやードラクロア団長と戦ってると、自分の知らないうちに付いてた癖とか見直せるのでー

 近衛騎士の見本みたいな戦い方してくれるので、自分はドラクロア団長との手合わせはそこそこ好きですよー?」

「ドラゴンスレイヤー様にそう言って貰えて光栄だねぇ!」


 音速突きからの薙ぎ、新しい技だ。


「おー、新しい技。

 でも、まだ未完」


 振った先の重心管理が出来てない。脇がガラ空きなので、そこに火かき棒を突き刺す。


「グッ!?」

「はい、私の勝ちー」


 脇から突き刺さりそのまま捻ったので肩が砕けた。激痛で剣を落としたドラクロア団長に私が勝利宣言をするとドラクロア団長はそれを認める。


「まだまだ改良の余地があるね」

「ですねー」



 駆け寄って来た聖騎士がドラクロア団長から鎧を脱がせ骨を正しい位置に置く。

 手の空いた団員や聖騎士達はドン引きした顔でこっちを見ていた。


「何であの人ドラクロア団長の攻撃を全て紙一重で避けつつも息も切れずに笑ってんだ……」

「次元が違い過ぎる」

「あそこ迄行かないとドラゴンスレイヤーにはなれないのか?」

「竜体型の場合は普通に負けまーす。

 クロスボウとか欲しかったですねー

 連射出来るクロスボウ欲しいでーす。それあれば竜体型のエンシェントドラゴンとももっと良いところまで戦えるんですけどねー」


 手が届かなくちゃ意味がない。


「クロスボウあっても勝てねぇよ。

 何言ってんだお前は。お前達も!こんな人外みたいな奴の言う事を真っ当に受けるなよ!

 ワイバーン相手にやっても死ぬぞ!」


 失礼な。


「失礼な」

「何が失礼だ。

 事実だ。それと飯が出来たらしい」


 それは大事だ。旅路とは言え近衛騎士団長に王立軍サイドの将軍クラスまで居る。なので食事もかなり豪華なのだ。


「それは大事ですねー

 お先でーす」


 急いで鎧を脱いで食事用の天幕に向かえば、中はちょっとした野外レストランみたいな感じだ。


「やぁ、相変わらずドラクロア団長には圧勝するね」


 先客にはペンドラゴン団長。


「いやーでも、ドラクロア団長もかなり強いのでー油断すると足元掬われますねー」

「そうなんだけど、まぁ、君を見てるとドラクロア団長には同情するよ」

「戦ってる時は常に笑ってるとは聞いてましたが」

「ずっと笑っていたわね」


 そこにジャンヌ双子将軍もやってきた。

 因みにこの2人は双子将軍とか姉妹将軍とか色々あだ名があるが正式には聖将軍と言うらしい。

 聖王国の地位で言うと聖騎士団長のマリアよりも上らしい。実はすごいのだ。


「えー?

 楽しいのでーまーはいー」


 戦うの嫌いじゃなくて良かった。

 死ぬ事以外、擦り傷とは何の言葉だったか?そんな感じの人生。


「そんなに強くなって、何をする気かしら?」

「強くなって何をするか?

 そーですねー強い奴と戦うのは楽しいのでーえー強い奴と戦いますねー

 貴女達も少し強く成ってくれれば楽しくは戦えますねぇー」


 ホッホッホッと笑い、ペンドラゴン団長を見る。


「何かな?」

「そう言えば一度も団長と手合わせして無いなーと」

「僕としては君と戦って負けると些か困るから戦いたく無いなぁ」


 ペンドラゴン団長は冗談めかしに笑う。これは強い。余裕の顔だ。


「待たせたな」


 そこにドラクロア団長がやって来た。


「肩は大丈夫でー?」

「もう問題ねーよ。

 お前は人の壊し方を理解しすぎだ」

「はぁ、でもそれが我々の仕事なのでー?

 それにー骨折れた時も何処の骨がどう成ってるか知っておかないとー」


 変なふうにくっ付きますよー?と笑っておく。

 骨って206個あんねん。


「腕の骨もー前腕って二つの骨で作られてるの、知ってましたー?」


 運ばれて来た手羽先を手に取り骨だけを取り出す。


「だから?」


 それが何だ?と言う顔でのドラクロア団長。


「どっちか折れば、剣を振る速度と角度、そして強さが変わります故ー」

「成程」

「そして、完全には折れていないので無茶しますよねぇ?」

「確かにな」

「もうそれが隙ですねぇー

 まぁ、ドラクロアだんちょは骨が金属で出来てるのでちょっとやそっとじゃ折れないですがー」


 ハッハッハッと笑いながら殿下の取巻きどもを見ておく。ダンマリだった。

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