第78話 近衛竜騎士団長になった冒険者

 冒険者が終わり、近衛騎士団長に戻った。

 また、退屈な平和な仕事である。学校の教員もお前が居ると授業の邪魔になるからクビと陛下直々にクビにされた。

 殿下は少し不服そうだった。


「サブーリンはエンシェントドラゴンを物の数秒で切り殺したんだって?」


 そして、帰って早々にドラクロア団長に絡まれた。現在、王城にて何やら呼ばれたので時間までウロウロしている最中だ。


「人型なのでぇーまぁードラクロアだんちょーも行けますよー?」


 人型は楽に殺せる。騎士とは基本的に対人特化なのだから。故に楽に行ける。


「な訳ねーだろ。

 人類を舐めるな」


 用法が違う。


「舐めてませーん。

 あのトカゲもどきはプライドが高く自身の強大な力に溺れてその対処すら忘れたアホなのでー

 普通にドラクロア団長も冷静に対処したらやれますよー」

「エンシェントドラゴンをトカゲもどきと言うな!」

「まー、竜体型の時は普通に負けましたしー

 いや、遠距離武器あれば勝てたかも」


 連射出来るクロスボウあったよな、あのゲーム。連弩。連弩あればやれるんちゃうか?


「弓矢なんか引いてる暇ないだろ」

「いや、連射出来るクロスボウみたいな奴ですねー

 ありませんかねぇ?」

「ねーよ。

 クロスボウですら大っぴらに使えねーのにそんな武器あってたまるか!」

「ダメなのでー?」


 尋ねると呆れた顔をされた。


「クロスボウは対人戦争で使うなって聖王国が決めたんだよ」

「何故?」

「簡単に人が死ぬし、刺さった矢は抜き辛いから治療困難になるらしい」

「なるほどー

 だから第四近衛も弓矢なんですねー」


 人に優しい……と言うわけではないな。

 すぐ死ぬなら聖騎士要らんもん。確か国が金収めるから聖騎士派遣してるらしいな。

 なるほどなーふむふむ。


「聖王国もコスい商売してますなぁ」


 ハッハッハッと笑っていると名前を呼ばれた。見ると近衛騎士が陛下の準備が出来たと呼びに来たのだ。


「と、言うわけで陛下に会って来まーす」

「ああ、無駄だと思うが無礼をするなよ」

「しっけーな」


 謁見の間に向かうと聖騎士団長のマリアとジャンヌ姉妹が揃っており、陛下は普通に立っていた。奥の方にペンドラゴン団長もいる。

 取り敢えず、陛下の前に傅いておく。


「参上つかかまりました……ん?

 参上つかさまりました?ちがうな。

 参上つかままりました?」

「つかまつりました、だ」

「それです」

「もう良い。

 表を上げろ。適当な奴め」


 殿下が嘆息していた。顔を上げて言葉を待つ。


「お前は、聖王国を知っているな?」

「えー各国に聖騎士を有料で派遣してる宗教国家ですねー

 そこの聖騎士団には我が騎士団も大変お世話になりましたー」


 マリアを見ながら答える。


「その国の揉め事は?」


 なんかあったっけな?なんかあったな。

 戦争するんだっけ?


「あー……そうだ。

 帝国が聖王国で戦争するんでしたっけ?何だったかな?馬鹿な方に着くとか言ってたな。何が馬鹿か知らんすけど」

「馬鹿はお前だ!

 何故そのことを報告せん!」


 初耳だぞと言う顔。


「えー?

 ペンドラゴン団長の密偵が調べるかと思いー」

「その件につきましては、帝国側の準備も聖王国への調査も行なっていた形跡がなく、皇帝の戯れだったと我々は結論付けました」


 ペンドラゴン団長の言葉に私も正直信じてませんでしたーと笑っておく。


「取り敢えず、お前はそう言う重大な事は戯言だろうと報告しろ!

 我々の足元を掬う羽目になるやも知らんのだぞ!」

「帝国軍相手なら、私が陛下を守り切る自信はあります故にー」


 それで、ご用件は?と尋ねると陛下はそこで漸く椅子に腰掛けた。


「聖王国に王国代表として向かって政争と現状について調べて報告せよ。

 聖王国にはお前の他にペンドラゴン、ドラクロア、マリア聖騎士団長、ジャンヌ聖将軍の5人も行く」

「はぁ、なるほど?

 自分、行く必要ありますぅ?」


 そんだけ行くなら私要らんくね?近衛騎士団長が2人も行くとか。どんだけよ。


「私だってお前を出したくは無いが、お前を遊ばせるには些か有能過ぎる。

 ドラクロアとお前で雑な捜査をしつつ、ペンドラゴンがしっかりと調査をする。その適当さで色々と聞き回って目立ってこい。

 マリア聖騎士団長とジャンヌ聖将軍達はエウリュアーレ側の密偵として行くついでに、聖王国の案内もして貰え」

「了解致しました」


 頷くと私以外は下がれと言われる。

 全員が出て行ったのを確認すると、陛下は場所を移すと自身の私室に案内してくれた。


「楽にしろ」

「はい」


 陛下がソファーに座るので私もその対面に。


「聖騎士団と聖将軍が我が国に害を齎すならばその3人を殺せ。

 奴等は個人的にエウリュアーレを信奉している様だが元は聖王国の人間だ。聖将軍も聖王国の聖騎士団を辞めて来ているが、今でも聖王国との関係は良好。聖騎士団に関しても籍は聖王国だ。

 故にお前はいざとなったらペンドラゴンの指示でドラクロアと共にあの3人を殺せ。良いな?」

「りょーかいです。

 殺す判断はペンドラゴン団長の指示で?」

「ああ、そうだ。

 それと、彼奴はお前も何考えてるか分からんから心を許しすぎるなと言っていたからペンドラゴンとも仲良くしておけ」

「あー、了解でーす」

「それと、今回もお前の愉快な仲間達は留守番させておけ。クリスティーナは明日以降私の元に来て彼方でのお前の日々の活躍を聞くから来る様言っておけ」


 こうして、次の仕事が決まった。

 まーた、出張ですわ。

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