第77話 近衛竜騎士団長と冒険の終わり
あの高々、死なないだけのクソトカゲもどきき吠え面をかかせてやった。やはり、人型ならどうにでもなる。彼奴はアホだから自身の身体の形状を理解していなかったのだ。
何処の世界に自分の目の前に顔よりデカい電球浮かべて視界を完全に殺すアホがいるんだと言う話だ。
「し、師匠、本当にエンシェントドラゴンを倒されたのですね」
「エンシェントドラゴンに勝てる人間が生まれる瞬間を目にするとは」
「マジで当たったよかった」
久方振りの弟子3人。
「全員、目隠しして戦える様になった?」
「私は魔術で補助ありならば近衛騎士と立ち会いは可能な程度に。無ければ王立軍の兵士数名と」
「某も王立軍の兵士相手ならば」
「俺は無理だよ。
何でわかるんだよ」
サルーンとお江はそこそこ使える様になったが、ユーリはそんな物鍛えるより得意分野を伸ばした方が良いと割り切った様だ。
それもまた良し。
「しかし、大分狙撃上手くなったねー」
「殿下が新しい銃くれたんだ。
エネミー銃?とか言うヤツ」
敵?
「ミニエー銃だよ、ユーリ君」
そこに殿下と陛下が皇帝と共にやってくる。後ろの方には団長もいた。
「お前は何処に向かっている?」
陛下が私をじっと見つめた。
私は陛下の前に傅き答える。
「私は陛下の指し示す方向へ、陛下の前を歩いております。
陛下の行先に私は立ち、陛下の安寧を邪魔する者を悉く切り伏せましょう」
答えると陛下は胡散臭そうな顔でこっちを見てきた。
「お前の話だと、私はエンシェントドラゴンの宝を奪いに行っているのか?」
「陛下が斯くあるべしと望むなら、そうあれかしと応える準備は出来ているつもりです」
ドラゴン狩りに向かいますか?と笑うと陛下も笑う。
「お前から目を離すとどんどん厄介ごとに巻き込まれるな。
冒険者ごっこは終いだ」
帰るぞ、と陛下が言うので私は御随意にと立ち上がる。
「そーゆーわけなんでー
冒険者ごっこはお終いでーす」
「帰る準備ですわね!」
クリスティーナは分かりましたわ!と楽しそうに頷いて去って行く。
私は陛下を見る。
「それとすでにご報告してますがー
ツェペシュ2世が私の周りを彷徨いています。陛下の方からも吸血鬼族の方になんとかして欲しいと言ってください」
「その件ならばヘルシング卿に来て貰っているので大丈夫だ」
陛下は我々に我関せずと言った感じで何やらお説教をしているヘルシングとそれを受けるツェペシュ2世を見やった。
まぁ、あそこはあそこに任せておけば良いか。
「では、陛下があの2人に挨拶をして速攻で逃げましょう。
神祖の吸血鬼は身体能力は高いですが我々人間の区別が殆ど付かないそうですし」
「ああ、それが良い。
お前はエウリュアーレと共に先にお前の家に帰えれ。支度が済み次第、帝城に。エウリュアーレもだ」
「分かりました」
陛下に吸血鬼供を任せて我々はさっさと退場。家に帰るとクリスティーナが鞄を二つにまとめて待っていた。
あら早い。
「今日は早いねー」
「家の者がやってくれてましたわ」
ドヤ顔すな。
なので、乗ってきた馬車に荷物を積み込み馬車に乗る。中では弟子3人が待っているのだ。
「お久しぶりですわね」
「ああ、奥方も元気そうだ」
「エリザベートはどーせ紅茶飲んでただけだろ」
「某はまた奥方様の護衛でよろしいでしょうか!」
姦しい。女3人寄ればと言うがまさにそうだな。
「私冒険者になったのよ?」
クリスティーナは自慢するようにユーリに冒険者の証を見せる。
「因みに私はSランクでーす」
便乗して自慢すれば帝国の内情を知るサルーンとお江が驚いた顔をする。
「この短期間にSランクにまで成られるとは……」
そんな感じで近況報告をしあい、帝城に着く。帝城に着くと皇帝が酷くソワソワしながら出迎えてくれた。
多分後ろにいる吸血鬼供のせいだろうな。本当に凄い連中なのだな。
「もう帰るのか?」
「ええ、遊びに来た訳でも無いですし、陛下が任務終了とおっしゃるのであれば私はそれに従うまでですので」
皇帝の言葉に頷いておく。
「いつでも来ると良い。
お前ならワシは何時でも歓待しよう」
「はぁ、まぁ、その時はよろしくお願いしますぅ」
多分殆ど来ないだろうな。
「それでは、吸血鬼のお二人もまたいつか」
「私もついて行くよ!」
「ダメです」
ツェペシュ2世の言葉にヘルシングが当然の様に答える。
「貴女はオイレンシュビーゲルにも迷惑を掛けて何を考えてるのですか!
帰ってツェペシュ様にお説教して貰います!!」
「嫌だぁ!!私もサブーリン殿と行くぅ!!」
「サブーリンさんの迷惑も考えなさい!!
帰りますよ!」
ヘルシングは私に迷惑をお掛けしましたと一礼すると指を鳴らし泣き叫ぶツェペシュ2世を消し去った。
「え?」
「転移魔術ですわ。
それでは私も失礼します」
ヘルシングがそう言って指を鳴らすと消えていった。彼奴、ああやって移動したのか……
「神祖の存在のみが使える技……
いやはや」
サルーンが感心し切ったように頷いていた。魔道に一過言あるエルフ故に吸血鬼の技は興味を引くのだろう。
我々は転移魔術なぞ使えないから馬車で揺られて2週間の旅。因みに来る時はヘルシングの転移魔術を使わず、オイレンシュビーゲルが王城に竜体型でやって来て陛下と殿下、護衛のペンドラゴン団長と殿下に巻き込まれた弟子達を背負ってやって来たそうな。
二度と乗りたくないそうだ。
私は乗ってみたくあるけど。
「ドラゴンは不可能でも、ワイバーンを使役出来るようになれば一気に機動力が上がり、同時に火力も上がるな」
とは殿下の談。あれを使役できるのは極一部の魔術師とドラゴンだけだ。
「殿下がアホな事やっても止めませんが、陛下に迷惑をかけないよーお願いしますねー
私、邪魔さえ入らなければ人型のエンシェントドラゴンを殺せる程度には強いのでー」
やるのは勝手だが、死ぬなら1人で死ねと言う事だ。
殿下は笑っていたが、顔は固まっていた。
まぁ、何はともあれ、久しぶりに家に帰れるのだ。
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