第74話 近衛竜騎士団長の竜退治
ドラゴンキラーの話はこの世界にはある。この世界にあるが、その相手のドラゴンはこんなにデカくない。精々牛を両足に抱えて重そうに飛ぶぐらいの大きさ比率だ。
だが、目の前のドラゴンはそんなドラゴンを片方の足に抱えて悠々と飛んで行く大きさ。
「裏ボスだわな、こりゃ」
一撃目を避けると背後でバゴォーンと衝撃波やら石やらが飛んでくる。地味に痛い。ダメージにならない奴。
足を止めると多分尻尾の薙ぎ払いで死ぬ。
なので、全力で走り抜け、尻尾の払いを躱す。方向転換して背後からの切り付け。尻尾切れるかしら?
剣を叩きつけると普通に弾かれると言うか、刃が欠けた。
「ウハハ、マジか」
ドラゴンは此方を一瞥するとそのまま飛び上がる。地上10メートル程。大きく開いた口は一軒家丸々飲み込めそう。多分ブレス来るぞ。
コァァと息を吸い込む音がし、そして、火の玉のような物が口の中に形成される。
「おーおー早速ブレスか」
ここまでデカいと離れるのは愚策。更に突っ込むしかない。短距離疾走繰り返す。懐かしい。ドラゴンに向かってダッシュだ。
剣の鞘を抜いて、口に投げる。普通にジュッと消えた。高温過ぎ。ヤバい。ありゃ、ビーム系だ。火炎放射じゃないわ。
ドラゴンの口まで30メートル程になり、その瞬間にはビームが飛んで来た。色は白。眼前に熱が迫り、咄嗟にアイギスを掲げる。しかし、その衝撃は凄まじく後方に押されるのだ。そして、めちゃくちゃ熱い。
アイギス溶けない?溶けない。溶けないか。
数分もの放出に耐えて、再度突撃。
「ウハハ!!やべぇ!!」
剣を見ると、盾から出ていた中程から先が溶けて無くなっていた。
「クソが!」
もう笑うしかない。
先の無い剣をドラゴンに投げる。狙いは目。ドラゴンは私が攻撃どころか生き残ってるとすら思っていなかったのかモロに目に剣が突き刺さる。
「しゃっ!一撃入れてやったぞクソが!」
残る獲物は月血斬血。でも、手元にない。
「ツェペシュ!!武器!」
叫ぶとツェペシュ2世が慌てて脇に突き刺した月血斬血を引き抜いて此方に投げる。それをキャッチしてアイギスを背中に。
近づいて死の刃だ。
ドラゴンはブチギレて咆哮。方向上げると同時に私も行動開始だ。近付くより他ない後40メートルほど。あのブレスでだいぶ距離を取られた。
近付くとドラゴンは凄まじい勢いで振り返る。つまりは尻尾攻撃だ。
最早壁と言うレベルの太い太い尻尾はその場に伏せる事で回避し、上空をすり抜けた尻尾を背中で感じると同時に立ち上がって近付く。
足元まで潜り込み鱗のない腹目掛けて月血斬血を振る。よし切れた。
「此処だぁ!」
死の刃を抜いて腹に突き刺そうとしたところでドラゴンはその場から大きく飛翔、足元にクソデカいファイヤーボール的な物を吐く。
盾持ってね!?と思ったら、ファイヤーボールが消えた。あれぇ?と見るとツェペシュ2世が此方にステッキを向けて焦った顔をしている。
アッブネー
「サンキュー!」
ドラゴンはツェペシュ2世を見ると大きく吠えた。鼓膜破けるわ!
死の刃を投擲。ドラゴンはそれに気が付き、翼をばさりとやって風で飛ばす。自分の方に飛んで来たので慌てて回避。マジ危ねぇ。
ドラゴンは再度大きく吠える。私は左手にアイギスを装備して月血斬血を構え、戦闘続行。
ドラゴンは少し離れた地面に降りると突進を繰り出す。私はそれをタイミングよく避けて、迫る足を切る。月血斬血は切れ味抜群や!
浅く切れた。鱗は切れるもかなり固い。
「くー強いなぁ!
どーするよ?」
追いかけて足狙い。尻尾を振り上げるのでスライディングで通過して腹の中に潜ってから斬撃。ゲルググも斯くやと言わんばかりに回転切り。
5撃した後にドラゴンが足を振り上げスタンプ。もちろん、回避させて頂く。
回避後は再度足元を切る。ドラゴンは飛び上がって再度ファイヤーボール。今度は盾があるから受けれる。盾受け余裕。と思ったら凄まじい爆発。
うぉ!?
「圧力やばー
ウハハ!!」
ドラゴンが吠える。それはもう驚くほどの吠え。本気モードみたいな吠えだ。ただし、鼓膜が破れているのかその声は殆ど聞こえない。
「おっしゃ!
次のパターンはなんぞ?」
ファイヤーボールを防ぐとドラゴンは地面に降りずに空を舞う。
空を飛ぶ敵はズルい。ゲームの頃は弓矢や魔法で攻撃していたがこの体になってサボったと言うか食指が伸びなかった。
故に扱えるは扱えるが、練度も低い。
「降りて来いよ!」
奴はバサバサと飛んで降りようとしない。なので、挑発するも無視。ドラゴンは人間と会話出来ないのかしら?この規模のデカさなら話せてもいいと思うけど。
「所詮はトカゲもどきか……」
石投げるわけにも行かない。どーすんべと考えていると再度急降下。もう、パターンは分かってんねん。ダッシュで股下潜り抜け。
はいヨユーと思ったら地面にぶつかる直前にファイヤーボール。爆風で急減速の上に反転、その城のような足でキック。
盾で受けるが普通に吹っ飛ばされた。空をまさかの飛翔した。インド映画みたいな飛び方したわ。盾構えて斜め後ろからワイヤーで引っ張られる飛び方。
着地と同時に後方回転グルングルン。無事に顔を上げると40メートル程の距離が空く。そして、再度例のレーザービームを準備中。
もう走るしか無いよね。
「チクショウメー!」
ちょび髭も斯くやの迫真ダッシュ。先程よりも溜めが長い。あと5メートルほどに来てビーム発射。至近距離からの大出力ビーム。当たる直前に月血斬血を、上に放り投げ両手で盾を構える。
盾受け出来たので今度も余裕。余裕の盾だ。神話が違いますよ。
ビームを盾で受ける。先ほどよりも衝撃が強い。よろけつつもしっかりと両手で構えるのだ。時間も全然長い。ヤバいヤバい。めっちゃ熱い。
干物になるわ!
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