第71話 治癒の練習ある意味拷問

 エルフについての衝撃の新事実をサラッと教えられた。内容は本当にクソ下らない理由だった。そのクソ下らない理由で多分中々な悲惨極まる歴史が有ったのだろうから、私の口からはおいそれと真実を公開出来ない。出来ないが、まぁ、あれだ。サルーンとミュルッケン団長にはコソコソと教えておいた方が良いかもしれない。

 2人とも顔を合わせても会話しないし。

 そして、何より2人なら変な事もしないだろう。最悪陛下と殿下も巻き込んでしまおう。それが良い。

 そして、そんな爆弾をしれっと投下した張本人は、現在クリスティーナに奇蹟を教えている。

 奇蹟は神の御技でも何でもなく口伝でしか伝わら無い秘技中の秘技みたいなもんらしい。そして、それを独占しているのが聖騎士団を保有する宗教国なのだか。

 なので、神祖と名の付く存在は普通に知ってるそうな。


「ま、簡単な怪我を治すのなら1日もあれば習得出来るようになるよ」


 とはツェペシュ2世の言。

 まぁ、それを教えると大変な事になるんじゃね?と思いつつもそうなったら文句はツェペシュ2世に受けて貰おう。

 聖王国とツェペシュ2世だとどうなるのか少し見てみたい気もする。


「ちょっと市場調査してくるからクリスティーナは終わったらお家に居るんだよー?」

「ええ、分かりましたわ!」


 現状を纏めた手紙を手に持ちクリスティーナの黄色い日傘を差して歩く。手紙をこれ見よがしにプラプラさせて歩いていると対面から黄色いバンダナをした青年がやってくる。そして、すれ違いざまに私の手から手紙を掠め取り去って行った。私も適当な場所で日傘を閉じて入店。其処は武具屋だった。

 中に入るとそこそこな賑わいを見せる。


「この剣、マジかよミスリル銀だぞ」


 冒険者らしい男が驚いた顔で壁に飾ってある剣を見ていた。

 刀身は薄く、幅も細い。鍔は小さく、貴族が腰に吊るためだけの物だ。こんな剣は何の価値もない。奥に行けば行くほど実用性の高い武器になる。

 入り口は目を引く客寄せパンダ的な見た目が派手な剣ばかりなのだ。

 ミスリル銀の剣は属性付与がし易くその付与効果も長くなるとはゲーム中の知識。懐かしい。一時、ミスリル派生させたロングソードやダガーに属性付与した武器と武器の属性効果によるダメージ率を上げる装備のビルドが流行った。これはダメージ率を上げる装備の上げ幅がプラス修正された結果に起こったのだ。

 なんだったかな?蛮族の踊り子みたいな名前の装備でアラブのエロ踊り子みたいな装備だった。もちろん、本来は女キャラ向けの装備だがあのゲームは男女の性差関係無く服を着れるので、ムキムキマッチョが踊り子装備と戦ったな。

 敵も味方も皆変態だった。懐かしい。

 暫く店を見て周り、そういえばこの国の鍛冶屋はどの程度の物なのかと思い至り、店の奥に売っている最高級の剣を3本ほど即金で買った。

 黒鉄鋼と呼ばれる最高品質の黒い鉄で作られた剣達は私の腰に提げてある火かき棒も斯やという強度はあるだろう。

 剣を3本担いで家に帰る。相変わらずクリスティーナはツェペシュ2世に奇蹟を教わっており、何やらメイドの1人の指先を切っては治し、切ってはたまにツェペシュ2世が血を吸いをやっている。

 大した切り傷では無いし直ぐに治るがこうも何度も何度も指を切られるのは勘弁して欲しいと言う顔だ。

 言うならば看護師の卵達が同僚や自身の腕を生贄にジャンキーも斯やと言わんばかりに針を突き刺すのと同じだろう。

 注射はベテランのババアになればなるほど上手いのだ。大学病院だと研修医の実験台にもされるから行くならちゃんとした病院が良いらしい。

 まぁ、この世界には病院どころか注射すら無いが。


「クリスティーナ、奇蹟は使える様になったー?」

「ええ!

 切り傷程度なら完璧に治りましてよ!」


 ご覧になって、と指を切られるメイドさん。そして、直ぐにパァッと光って治癒。


「おーすげー」


 パチパチとドヤ顔を晒すクリスティーナに拍手を送る。


「ちょっとこの国の剣手に入れたからダンジョン行くけどいくー?」


 尋ねれば2人ともいくと答える。

 2人を連れて冒険者ギルドに。昼もそこそこな時間過ぎている。疎も疎、情報屋すら殆どいない。居るのは先の情報屋、アイシャくらいだ。

 向こうはずっと水晶玉をうねうねやってる。


「あの方は何をなさってるので?」

「凄腕な情報屋だってー

 ツェペシュ2世探す時に頼ったら1発で見たかった」


 そう言うとクリスティーナが目を輝かせて歩み寄る。


「そこの貴女」

「いらっしゃいませ、アイシャの占いにご興味が?」

「あら、情報屋ではなくて?」


 クリスティーナが向かいに座り首を傾げる。


「人探しや物探しも得意です。

 勿論、占いも」

「あら、そうなのね。

 では、私達の未来はどんな感じか教えて下さいな」


 アバウト過ぎでは?


「そうですね、少しをお待ちを」


 アイシャはそう言うと水晶をウネウネ。

 4本の腕がウネウネ。

 ツェペシュ2世は大して興味もなさそうに見ている。私も興味はない。女子ってこう言うの好きだよねー

 小学校の頃に占いと書いてある小さな小さなキーホルダーみたいな本を女子が囲って読んでいた記憶。

 暫くするとクリスティーナが首を傾げていた。


「どう言う意味かしら?」

「どれー?」


 水晶玉を見ると私がクリスティーナに深々と土下座をしていた。


「何してんのこれ?」

「さぁ?

 でも、これは近く有るであろう未来が見えます。少なくとも、変更可能ではあるので、サブーリンさんはクリスティーナさんを怒らせない様気を付けて生活すれば宜しいかと」


 なるほどー何したんだろーかこの未来の私は?


「私はサーシャの行い全てを許しますわよ!」


 それはそれでどーなのだ。

 まぁ、兎に角何かやらかさない様気をつけるか。

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