第70話 吸血鬼まったく死なない。
「そのー何故私に会いたかってのでぇ?」
「はい!
下等種なのに、どうして山羊頭の悪魔を殺し、更には神祖の血を引くヘルシング相手に一切の怯みなく戦いを挑んだと聞きました!
他にも下等種では考えられないような功績もあり、是非私も会ってみたいと思いましてやって来たのです!」
すっっごい腹立つコイツ。満面の笑みで平然と見下してくる。ヘルシングは自覚あってそう立ち回ってるんだろうが、コイツはマジで無自覚なのだ。
こう言う種族なのだ。
「この町でぼーけんしゃ?とか言う下達種を襲ってみたのですが殆ど抵抗も無く血を吸えてしまい、矢張り貴女は違うのですよね!?」
「えー?まー違うんじゃ無いんですかねー?
取り敢えず、目的済んだら一緒に冒険者ギルドに来て貰えますぅ?」
ギルドマスターに投げよう。そこからドラニュートや皇帝に行けば良いや。私の管轄じゃ無い。
「良いですよ?
クリスティーナちゃんも一緒に行きましょう?」
「ええ、構いませんわよね?」
「んーまー良いですよー
ちょっと準備してくるんでー引き続き、茶をシバいてて下さーい」
アイギスと月血斬血、死の刃を装備して戻ると2人はしっかりと茶をシバいて待っている。
それから3人でもと来た道を。
「どうして帝国に来たんですかぁーねぇ?」
「貴女達下等種がいっぱい住んでる場所に行けば貴女に会えると思ったからです!
此処、貴女の国では無いんですか?」
あーもーすげーなコイツ。魔族の中でも最高にイかれてるな。
「此処は帝国でーす。魔族の皇帝が治めてる国でーす」
「下等種を束ねて王をしてる……?
あ、あー!」
ツェペシュ2世はポンと手を叩き何かを思い出した様子。
「お父様が言ってました!
不老不死でもなく不死身ですら無いクソ雑魚が下等種の国を作り遊んでるって!それがこの国なんですね!」
くっっそ腹立つパート2。
てか、皇帝死ぬんだ。
「皇帝死ぬんですねー」
「当たり前じゃ無いですか。
アレは鬼の亜種みたいなものなので貴女の腕ならアレぐらいなら殺せますよ」
怖い事言うな。
「殺しませんがー?
別に帝国領土とか欲しいと言われませんしー陛下の御命令があるならまだしも、フツーに友好条約結んだ相手にそんな事しませんー」
アホが。
そんなこんなで冒険者ギルドにやって来た。ただただ来ただけなのにどっと疲れた。
「ギルドマスターいる?」
「ええ、どうでした?」
ギルドに入ると普通にギルドマスターが待っていた。完全武装した冒険者達も集合。
「吸血鬼居ましたー証言もしましたー
目的は私に会ってみたいとの事でーあとーヴラディスラウス・ユウ・ツェペシュと言う吸血鬼をご存知で?」
「ええ、魔族最強の名も高い魔王の側近、魔王国の辺境伯でしょう?」
能書きが五月蝿くて草。
「そのヴラディスラウス・ユウ・ツェペシュ様のー娘です。
名前はヴラディスラウス・ユウ・ツェペシュ2世」
それではどーぞーとご本人を紹介。真っ赤な瞳に死人の様に白い肌。髪の毛は白髪と言うには銀に近い。因みに服も真っ白なスーツだったりするので真っ白が歩いてる感じ。
そういえばヘルシングも白スーツだったよーな。吸血鬼は白がお好きなのかしら?
「ヴラディスラウス・ユウ・ツェペシュ2世だ。
頭を垂れよ下等種」
私とクリスティーナ以外には普通にヘルシングみたいな態度。
強いから不遜なのだろう。
ギルドマスター達は慌てて頭を下げている。
「そういえばー、吸血鬼って父親の名前、自分の名前、苗字の順番だって聞いたけどー
本当ならユウ・ユウ・ツェペシュがただしーんじゃね?」
クリスティーナに聞くと確かにと頷いていた。
「父親のフルネームの後に2世や3世を付けても良いのです。そうすると父親と全く同じ名前になります。
私の場合は家長になるので、私の息子や娘が出来たらその第一子にヴラディスラウス・ユウ・ツェペシュ3世と名付けられるのですよ」
へー
「なるほどー」
無駄な知識が増えた。
マジで何処に活用するのだと言うレベルの無駄知識だ。
「その大変申し訳ありませんが、我々下等種には貴女方吸血鬼がどの様にして神祖とそうで無いかを見分ける手段が御座いません。
本当に神祖の吸血鬼、ヴラディスラウス・ユウ・ツェペシュ様のご息女たるツェペシュ2世様であると言う証拠は御座いますでしょうか?」
素直に頭を下げるギルドマスターはそれでも信じられんと言う顔だ。言われてみれば確かにそうだ。
「ならば、私の首を刎ね心臓を潰すと良い。
神祖は死なない」
許可が降りた瞬間に後ろから首を刎ねてやった。刎ねた首が床に落ちる前に右肩から左脇に心臓を通り抜ける形で袈裟斬り。ダメ押しで死の刃を刺そうとして腕を掴まれる。
「流石にそれは死んでしまいますよ!」
床に落ちた生首がしゃべる。頭のない体が空いているもう片方の手で頭を拾い上げると首の上に乗せる。
いつかのヘルシングを思い起こす怪力だ。本気の突きを難なく止められ、今も全力で力を入れているが動く気配は無い。
仕方なく力を弱めると腕は解放された。
「死の刃はこの世のありとあらゆるモノの理を円環から切除する呪具なので、それは私でも死にます。
私どころか、お父様とかヴァルニールさんとかも死にますよ」
へー、これ不死殺し本当に出来るんだ。
流石、不死ボス戦限定の武器だわ。
「じゃあ、神祖の吸血鬼と戦う事になったらこれで少しでも切ってやれば良いわけですー」
良いこと聞きました、と笑っておこう。
これで万が一またヘルシングみたいなイかれた手合いがやって来てあんな事したら意気揚々と殺せる訳だな。
ただし初手で死の刃を投げ付けてはいけない。これは対応された。
目の前のツェペシュ2世も首が落ちてるのにも関わらずそれを制した訳だし。元ドラキュラハンター(ゲームでの実績の一つ)としてはこのツェペシュ2世をモデルに吸血鬼対処を考えねばならんな。
死の刃ではないダガーを抜いて本気の突きを繰り出すと普通に刺さる。肝臓まで刺してやった。
「アイタぁ!?」
「ふむ、これは避けないのですねー」
「えぇ?う、うん。死なないので……
でも、痛覚はあるのでやめて欲しいです」
痛覚はあるのか。しかし、肝臓刺してアイタで済むのか。刺されたところをサスリサスリと撫でながら滲む血はなぞるだけで消えていく。
「あのー体の隅から切り刻めば痛みで発狂しますかねぇ?」
「え、普通に怖いんですけど……
あの、もしかして私殺そうとしてませんか?」
ヒェとツェペシュ2世はドン引きの顔。あらー今頃お気付きになられた。
「ええ、正確に言うと貴女ではなく貴女方神祖の吸血鬼ですねー
以前のヘルシングさんのよーな事があったら取り敢えず、陛下に止められる前にどうにか殺さないかーと思いましてーえー
でーどーやら死の刃は効くし、痛みはあるとのことなのでー此処は一つ、体をみじん切りにして頭による発狂と言う物を体感して貰おうかなぁーと思案しておりますぅー」
どーでっしゃろ?とにっこり笑って尋ねるとツェペシュ2世はクリスティーナを勢い良く見た。
「バンパイアハンターですわね!
どう歌にしましょうか?」
救援先は浮き輪すら投げてくれなかった。
それからギルドマスターに視線が行くが、ギルドマスターは慌てて面を下げる事でスルー。浮き輪投げるどころか捜索にすら来ない。
ドンマイ吸血鬼。
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