第68話 案外腹芸も出来る近衛竜騎士団長。
皇帝に赤っ恥をかかせた翌日、私はクリスティーナと共に冒険者ギルド。
用もないけど、家にいるとめんどくさそうなのが押し掛けてくる。
「皇帝陛下から伝説の盾貰えるって言ってたけど、何貰えるんかなー?」
「皇帝陛下は蒐集家でもあるので、色々な物をお持ちですわ」
最新版の伝説の武器一覧を取り出して2人で眺めているとテーブルの向かいに闖入者が現れる。合気道鬼幼女やいつかのストーカー集団である。
「サブーリン様にSランクの昇格が打診されました」
「はぁ、そうですかー」
何のランク?
「何のランクですの?」
クリスティーナが首を傾げる。
「帝国最強ランク、とか?」
「まぁ、皇帝陛下を除けば確かにSランクを頂いても可笑しくありませんわね」
「違いますよ!
冒険者のランクです!」
あー、そっち。
「ああ、それ。
まぁ、何を今更と言った感じですわね」
クリスティーナが歌い出した。昨日の奴を早速歌にしたそうな。創作意欲が凄いわいたとか。
演奏家達もそれに合わせて即興で演奏を始め、ちょっとしたコンサート。
酔っ払い達が囃し立てるので、クリスティーナが満足するまで歌わせる。その間、面倒くさい連中を見る。
「それでー?
君等は誰だい?何が目的だい?何がしたい?何を警戒してる?」
正面に座る鬼幼女に尋ねる。
鬼幼女は笑みを消すと、カウンターにいたマスターを見る。マスターは頷いて上にと指したので私は立ち上がる。
「暫く話してくるから、帰ってくるまで歌ってて良いよー」
「お任せ下さいまし!」
クリスティーナに告げると、クリスティーナは手を振って応える。
案内されたのは中々に広い会議室。議長席に座り、その左右に伸びたテーブルには冒険者は勿論ギルドマスターやドラニュート、マイビスが並ぶ。
「王国での冒険者ギルド設置について、かな?」
ドラニュートを見ると、ドラニュートは頷く。
「サブーリン殿は、王国で冒険者がどのような扱いを受けているかご存知か?」
「犯罪者予備軍ですねー」
これは私もそう見ている。
街中で堂々と武装しているし、大酒を飲み横柄な態度を取る。騒ぎを起こすので市中見回りが面倒くさいのだ。
「王都でも城下町までしか入れず、王城周辺は進入不可能。城下町でも常に王国兵の監視下にある」
「だって、貴方達は犯罪者予備軍ですもの?」
私にっこり、冒険者ビキビキ。
「我々が何かしたと言う事は無いはず」
「ゼロから1は生まれない。
王国は無用な混乱は望まないし、そもそも戦力としても、人材としても不安定な冒険者という存在は陛下は必要無いと言うのが今までの現状だ」
「ではなぜ、貴女が遣わされた?」
「陛下曰く、皇帝が冒険者を作れと五月蝿いから取り敢えず冒険者やってどう言うものかを調べて来いと言う指示を受けたのでーえー」
形だけ。
実情は私を遣わせて帝国の実情を調べて来いと言う者だ。因みに、報告書を渡す為にペンドラゴン団長の使いを呼んだら帝国でも大活躍ですなと嫌味を言われた。まぁ、そこは笑っておいた。
「貴女の国の皇女殿下は如何かな?」
「何故、殿下の話が此処で出る」
ドラニュートを見る。場合によっては殿下謀反の件が立ち上がる。めんどくさい。
「殿下はそういう物に前向きであると聞く」
殿下が入知恵して冒険者ギルド潰してたはずだが?まぁ、良い。
「それで?殿下に口添えをして貰い冒険者ギルドは殿下派になる、と?」
「まぁ、そうですね」
「ならば余計その話は受けれませんなぁ。
私の主人を言ってみろ」
ドラニュートを睨み付ける。
「サブーリン殿は女王派である、と?」
「私は、では無い。
近衛騎士団は全て女王陛下に忠誠を誓い、陛下に叛旗を翻す遍く者を根刮ぎ刈り取る。
そしてもう一つ忠告すると、次からの言葉慎重に選べ。
私はお前達全員を相手にしても何ら不足無く首を刎ね、クリスティーナと共に王国に帰還する事すら可能なのだ」
殺気を込めて告げると鬼幼女が冷や汗を流しながら口を開いた。
「随分と自信があるようですね」
「自身ではなく、事実だ。
私は陛下の耳目として遣わされた。貴様等の一挙手一投足全てが冒険者の評価だ」
冒険者ギルドを作るにしても国が大きく介入せんといかんな。帝国みたいにそもそもの君主が馬鹿強いならまだしも、ウチの王様は普通の人間だ。
叛乱起こされても笑って自ら殲滅するのは不可能だ。
「話は以上だ。
私は帰らせて貰おう」
立ち上がり入り口に向かう。鬼幼女の後ろを通った瞬間、腕を掴まれそうになったのでそのまま首を刎ねてやる。
「鬼だか何だか知らんが、私は近衛騎士団長だぞ?
気安く呼びつけたり、触れる存在では無いぞ冒険者共」
剣を血払いし、鬼の頭を拾い上げる。それを放り上げて角を切断。
「この無礼はこの角で赦す。
じゃ、そーゆー事でー」
部屋を後にして階段を降りるとクリスティーナが丁度熱唱し終えた。キリが良い。
「帰るよー?」
「わかりましたわ!」
それではとクリスティーナが言うと全員ご機嫌様と手を振った。クリスティーナも私とは違うベクトルで大分好き勝手やっている。
「何のお話でしたの?」
「冒険者ギルドを作るなら国がかなり介入しないとめんどくさいことになるなーって話。
黄色い布ある?」
「ええ」
クリスティーナが黄色の日傘を差す。
暫くすると音もなく町人に扮した男が寄ってきた。
「何かありましたか?」
「冒険者ギルドを見張っていろ。下手すると王国転覆させてくるぞ。
あと、別ルートで殿下との接触を監視しておけ」
「分かりました」
男はそれだけ言うと曲がり角を曲がる。それから家に帰り、クリスティーナと一緒にイチャイチャする。
やーねーまったく。
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