第65話 事後報告しなさい。

 依頼を受けている訳でもないのでそのまま家に戻る。家に戻ると、幼女みたいな鬼がシュテンと共に居て、クリスティーナが私の歌を歌っていた。


「なぁに、この状況?」

「まぁ!貴女がサブーリン様ですか!」


 幼女鬼が私の前に飛んでくると手を握る。


「おーどーも?」


 直後、何とも言えない衝撃。気が付いたら床に膝を付けている。

 なんだぁ?痛みはない。鬼はニコニコ笑っているが、目は笑って居ない。なんだぁ?


「これ、なんて技ですかねー?」


 刃牙で見た奴だ。

 オリバとか武蔵もやられてた。実際やられると凄い。


「クリスティーナも受けてみー」


 手を離し、クリスティーナを幼女の前に。メイドと執事が前に出るので手のひらを向けて制する。


「痛くない。

 凄いよー」

「本当ですの?」

「ほんとほんとー」


 そして、キャアとクリスティーナが床に崩れる。


「凄いですわ!!」

「ねー」


 合気道みたい。故に此方から仕掛けなければ向こうは何も出来ない。ただし、合気だけではないだろう。

 相手の力を利用するのが合気だ。


「なんという技ですの!?」

「さぁー?

 でも、体の構造と、相手の力を利用する技だねーたとえば、今私が殴り掛かってもこの子はそれを逆に利用して私を組み伏せてるだろうねー」


 クリスティーナが半信半疑と言う顔だ。


「まークリスには分からないかもー」


 ハッハッハッと笑い、座りなよと椅子を指差す。幼女はにっこり笑ったまま椅子に戻った。


「そーいえば、さっきまでインドゥーラの森に行ったらめっちゃデカいリンゴ成ってる木見つけたからさーりんご熟したら食べにいこーぜー」

「まぁ!良いですわね!」


 そんなリンゴがありまして!?とクリスティーナが楽しそうに笑っている。


「あの森、今はゴートデーモンやレッドキャップが居ますよ?」

「あー、あれね。

 さっきちらっと見てきたけど大した事ないよーそれに、リンゴの木の場所より更に奥だったし」


 瞬殺だったし。


「なら安心ですわね」


 クリスティーナがそう笑った所で執事が顔を硬くして私の隣に。


「ドラニュート様が……」

「はぁ、どーぞ?」


 どーぞと言うとメイドがドラニュートとギルドマスターにストーカーズがやって来る。


「サブーリン殿!

 レッドキャップとゴートデーモンを討伐したのですか!!」


 開口一番ドラニュートが叫ぶ。うるさー


「えー?

 まぁ、討伐って言うかーなんか向こうから来たのでー」

「討伐したなら報告して下さい!!」

「えー?まだいるんじゃなーい?

 ちゃんと探しなよー」


 ねぇ?と幼女に告げる。幼女は笑顔を凍らせたまま首を振る。


「あの森にはゴートデーモンは居ません。なので確認された一体と魔物側の物見であるレッドキャップはその一個群だけです」

「じゃーもー居ないんじゃないんですかねぇ?」


 ハッハッハッと笑い、ギルドマスターが引き攣った顔で大きな皮袋を差し出して来た。


「討伐報酬です。

 確認したモノ達もいます。それの死体は現在ギルドが回収しに行っています」

「はー、それはごくろーさまですー」


 まー大した事はない。


「じゃー安心してリンゴ見に行けるねー」

「ですわね!

 楽しみですわー!」


 どのくらいの大きさでした?と聞いてくるのでスイカくらいと大きさを示す。


「まぁ!」

「それでー、まだ青い部分あって酸っぱかった。熟したら絶対甘くなる。多分」


 細部は不明。

 少なくともあんなデカいリンゴは見た事無い。


「レッドキャップとの戦いについて聞きたいのですか!」

「えー?

 特に何もしてませーん。なんか、矢を疎らに射ってきて、その後槍で雑に突いたりしてきたのでーまー払ってー剣で突っ込んできたのでーフツーに殺しただけでーす」


 特に特別なことはしていない。


「アンタ、目隠ししてたろーが!」

「えー?あーまぁーやってましたねー

 誰でも出来るでしょー?あんなの」


 ねぇ?と幼女に聞くと幼女は真顔だった。


「そ、その後、ゴートデーモンとも?」

「あー、そっすねー

 まぁ、ダガー投げて隠して投げた死の刃投げてー死の刃当たったんで倒せましたー

 時間で言えばー山羊頭が一番短いですねー」


 まー、数あったから長いだけなんだけどね。


「てか、見てる人いたんだから別に私のところに来なくてもいーじゃないの。ねぇ?」

「何処の世界に、目隠ししてレッドキャップ全滅させた後にゴートデーモンと戦い、無傷で帰ってくる人間がいると言って信じると思う?」

「あんなの、死の刃があれば誰でも出来ますってぇー」


 ねぇ?と鬼達を見る。

 幼女は笑みを完全に消して、私を見ている。


「ま、何かあればまた言ってくださーい。

 お嬢ちゃんもこれでアイス買ってかえりなー?」


 幼女に金貨を渡してから、執事に全員帰るってと告げる。執事は私に頭を下げると全員を丁重に送り出す。

 クリスティーナと見送り、それからクリスティーナが今日やったことを話し出す。私はそれを聞きながら、夜を過ごした。

 明日は何をしようか?報告書作るか。

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