第58話 目が見えなくても最強。
結果から言えば、私が目隠しして副団長の尻を引っ叩ける様になった所で団長が殿下の本を読み終えた。
「君、ホント何者だい?
1時間かそこ等で何で僕より、僕等以上に上達してるんだい?」
「さぁー?天才だから、ですかねぇ?」
「嫌味にすら聞こえないね。
取り敢えず読んだよ。君はどうする?」
団長は副団長に下がりなさいと告げると机に腰掛けた。
「んー?
本人は謀反のつもりは無いそうなのでー
取り敢えず、団長から陛下に報告とー殿下に注意をお願いしまぁーすって感じでーはい」
丸投げでーすと告げると団長はにっこり笑う。内容理解出来たのかしら?
「この本は陛下の立場を狙うと言うよりも貴族社会と騎士階級の破壊だな。陛下と言うか王家については何の害もない。まぁ、言い回しを変えた方が突っ込みどころは減るだろう。
内容に付いてどう思うかい?」
「まー私個人としては大変に面白いと思いますねぇー
陛下の采配に掛かるのではなく、陛下の掲げた目標に向けて各級指揮官がどうすればそれを達成出来るのかを与えられた権限の範疇で模索する。
ひじょーに難しいですが、出来たら戦争とかももっと効率的かつ素早くなるのでは無いでしょーか?」
答えると団長は頷いた。
「分かった。
兎も角君の事は信用している。今後も陛下と国の為に宜しく頼むよ」
「我が剣に誓って」
一礼してから部屋を出る。
道すがら、首に下げていた目隠しに気が付いて部屋に戻ろうとしたら扉が少し開いている。ノックしようとしたら何やら話し声。気配を消して耳をそば立ててる。
「サバーリンは有能だし優秀だが、何を考えたいるのかさっぱり分からない。
ついこの前もよく分からない流れ者を拾い、弟子にした上に嫁たる帝国の財務大臣の娘の護衛にさせたとか?」
「はい。
今の所その2人に目立った動きはありません。サブーリン団長の周りには蛮族や帝国人と言った存在が多過ぎるので、特にその動向を注意してます」
「サブーリンは、頭もキレる。ハッキリ言ってこの本を読んで殿下のやりたい方をああも一言で纏めてしまうし、この国体の保護を陛下への謀反に繋げるとは……僕には想像出来なかったし、内容も理解出来なかった。
サブーリンが殿下の派閥に付いて謀反を起こしたら我々は誰1人として彼女には勝てないぞ。
カリスマ、技術、頭脳。やる気さえ出せば彼女は1人で国を覆せる」
わぁー凄ーい疑われてるぅー?
まぁ、確かにこの時代の人からすれば私も中々怪しいしなー仕方ねーなー殿下の事チクリまくって信頼勝ち取るしか無いなー
団長も信用するとは言ったけど信頼するとは言わないしー
頼れない程には怪しいって思われてるのかー
そー考えると結構焦るよなー
気配を消したまま部屋を後に。目隠しをして要塞まで歩けるかやってみるか。何かコツは掴んだ。
目隠しのまま従者の控室に向かうと早速ユーリと思しき気配がやって来る。
「何してんだ?」
「この状態で気配を頼りに戦えたら、強くなるんじゃないかな?」
「それが出来るなら魔術はいらないでしょう」
サルーンの呆れた声も聞こえてくる。
「まぁ、2人にはまだ早かろう」
ハッハッハッと笑うとユーリが何の迷いも無く切り掛かってくるので軌道を逸らしてそのまま投げてやった。
「甘い甘い」
「見えてんのかよ!」
「見えてないよー?」
なんて言ったら何かが飛んでくるので体を捻り避ける。
「魔術まで避けた!
流石我が師。我々も早く師の隣に並び抜かして行きたいと思います」
サルーンが深々とその場に傅き、ユーリはつまらなさそうな雰囲気を出してそっぽを向いた。
うーむ、2人にはまだ早いかなぁ?侍ちゃんにもやって見せよう。
2人を引き連れて城から要塞に。
要塞に戻ると殿下が出迎えてくれた。
「どうだったね?」
「団長には話つけておいたのでー本書いたら見せに行って下さーい。
あと、これ付けて下さーい」
目隠しを渡すと殿下は首を傾げながらもしてくれた。殺意増し増し1000パーセントで切り掛かって見るが普通に直撃コース。
当たる直前に止める寸止め。
「それ避けられねーのか」
「殿下はまだまだですな」
ユーリとサルーンは失笑に近い笑みを浮かべて首を振り、殿下は目隠しを取って目の前にある私の剣にビックリしていた。
因みに殿下の護衛達は固まって動かなかった。
「殿下は論外でしたねー
ほっほっほっ」
目隠しをして剣を差し出す。殿下は何やら後ろに私の周りを二周ほどしてから背後から切り掛かってくるのでそのまま避けて、手を取り足払い。
そのまま抱き抱えたまま、殿下に耳打ち。
「殿下は頭は良さげですが、武術の方はゴミですねー
謀叛企てるしろ、しないにしろもう少し練武した方がよろしいかとー」
殿下を起こし、目隠しをしたまま部屋に向かう。慣れれば何となく分かるな。
「サーシャ、貴女は何をしてるのかしら?」
部屋にいたエリザベートが呆れたような声で尋ねて来た。
「これなら侍ちゃんにも良いハンデになるかなーって?
ほれ、こいや」
両手を広げた瞬間何の迷いも無く切り掛かって来たのでそのまま剣を振り抜く前に腕を掴み巴投げ。
「はい、ダメー」
侍ちゃんは扉を破壊して廊下に吹っ飛ばされていった。
「あードア壊しちゃダメでしょ。
受け身受け身。罰として今晩中に直すよーに。今日はエリザベートと一緒に寝るかなー」
「ええ!良いですわ!」
その夜、エリザベートは目隠しを想像通りの使い方をした。
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