とある近衛騎士団長の感想
さて、サブーリンの事でまた学校が揉めていると連絡が入った。学校とは最近殿下が作った士官学校とか言うやつで国軍や我々近衛騎士団に入るための騎士を育成する場所らしい。
サブーリンは与えられた団の3分の2が戦死したので其処で先生をやりつつ新しい近衛騎士を育てろと言われたので先生をしているのだ。
あのめんどくさがり屋が学校の先生をやるなんて最初は何の冗談かと思った。そして、案の定あろうことか女王陛下を教壇に立たせて自分は後ろでバランス取りの遊びをしていた。余談だが、このバランス取りはやって見るとかなり難しい。
両手を離し、体を一切動かさないで静止させる。まるでそう言う椅子に座ってるかのような自然体で、場合によっては会話までし笑ってるのだ。
その化け物じみた体幹があの強さの秘訣かもしれない。
そして、そんな化け物とこの前真剣勝負をしてがやはり傷一つつけることなく、しかも物の数合で負けた。
いつかやった試合は本気ではなかったのだ。そう、手は抜いていないが本気でも無い。そう言う状態だった。そして、新しいおもちゃを貰った子供のように陛下から賜われた双刃刀と呼ばれる武器をまるで踊るかのように振るって私の首と足を刎ねて行った。
化け物だ。
そんな奴を相手に私は自身の未熟さを感じつつもまだまだ上が目指せると知って歓喜していた矢先に学校に来て欲しいと殿下直属の伝令がやってきたのだ。
武器と防具を完備して馬を飛ばすとサブーリンが酷く面倒臭そうな顔で見知らぬ少女を前に対峙していた。周りには聖騎士達が手当てをしている学生やサブーリンの弟子であるユーリ坊とサルーンが同じように倒れていた。
「手酷くやられたな」
サブーリンの弟子に至っては腕を切り落とされたらしく聖騎士がかなり上位の回復魔術を唱えている。
「はい、ドラクロア様。
ユーリは腹を、私は左腕を落とされました。あの娘、かなりの手練れでした」
サルーンが私はまだまだ未熟者です、と自傷めいた笑いを浮かべて首を振った。
そんな手練れの小娘はサブーリンに切り掛かって行くがサブーリンは月血斬血を使わずに学校の備品だろう剣を握っている。
小娘は刀と呼ばれる剣を構えたいた。
「サブーリン!」
取り敢えず声を掛けておく。
「おーこれはこれはドラクロアだんちょー
道場破りですってー」
道場じゃ無いのにーとサブーリンが例によって油断し切った声で此方に手を振ってくる。
それを油断と捉えてらしい小娘は凄まじい速さで斬り込みに行く。右袈裟斬りだ。あの速さは冒険者で言えばAからSに行けるだろう。
しかも、よく練られた気魄だ。
目を見張ってしまう一撃、しかし、サブーリンはそんな一撃を易々といなして小娘の足に自分の足を引っ掛けて転ばせた。
小娘はそれに前転しつつ受け身を取り、体勢を立て直そうとした所、サブーリンが持っていた鞘をその力の限り投げ付けて顔面にクリーンヒット。しかも、石突のある鋒方向から槍投げのように投げたために小娘はもんどり打ってひっくり返る。
「じゃ、ドラクロア団長来たし終わりでー」
状況が掴めずサルーンを見る。
「師匠はあの娘を彼此20回ほど転がしています。最初は素手を使って徒手格闘の方法を我々に教えて今は剣を使った相手の体勢の崩し方でした」
「彼奴に人の心は無いのか?」
思わず聞くとサルーンは真顔で私を見上げてハッキリと聞いてきた。
「あるとお思いで?」
質問した私が馬鹿だったのは確実だ。
私は倒れている小娘に近付くと小娘は泣いていた。
「おい、大丈夫か?」
「私は如何に自分が身の程知らずだったか痛感致しました!」
「そ、そうか。
まぁ、相手が悪かったな。うん」
「これより私はサブーリン様の弟子としてお世話になります!」
小娘はそう高らかに宣言する。私はサブーリンを見ると、奴は他人事のように笑っていた。
「何かーそーゆー感じでー、はい」
はいじゃ無いが?
「取り敢えず、お前とは話があるから部屋に行くぞ。エリザベートも呼べ」
「はぁ?分かりましたぁー」
多分、何も分かっていないな、コイツ。
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