第51話 女王陛下の近衛騎士団長

 女王陛下は殿下にビビり散らしている。2キロの射程がある攻城兵器なんざ持たせたく無いのだ。私の部下に警備させているのは殿下なりの身の潔白だろうが、私にも一言言って欲しかったな。

 そう言う所やぞ、殿下。

 要塞に向かい、取り敢えず弾頭を全て馬車に乗せて残った近衛で護送。馬車は5台分。滅茶ンこ多かった。

 その際に、王立軍が手伝おうと申し出てくれたが荷物運びくらいなら魔術師でも出来ると断った。多分、王立軍を一緒に連れて行くのはやめた方がよかろう。

 私を先頭に王城に入るとミュルッケン団長とその配下である第4近衛騎士団がで迎えてくれた。


「引き受けよう」

「お願いしまーす」

「謁見の間に向え、陛下がお待ちだ」

「了解」


 この場をミュルッケン団長とサルーンに任せてユーリと共に殿下の元に。


「ミュルッケン団長に引き渡しました」

「分かった」


 殿下のピリピリ具合が少し減る。


「火薬は抜いてありましたー

 弾頭だけで馬車5台分、棒は外れてて詰みきらないので置いてきましたー

 必要なら取って来ますけどーいります?」

「いや、要らない。

 その木はそのマイソール砲の飛行を安定させるための装置らしい」


 へー


「この兵器は我が国でも運用出来るのか?」

「出来ますが、相応の教育が必要になります」

「その教育は大変なのか?」


 殿下の言葉に陛下の目は細くなる。少し不機嫌そうだ。


「ええ、そもそも大砲の運用は無知浅学では出来ません。

 専門の教育を受けた者が砲の運用に当たらねば当たるものも当たりません。陛下、是非とも王立士官学校の設立を」


 あーなるほどねーはいはい。

 完全に理解したわ、陛下の不機嫌の理由。殿下はペラペラと旨いことを言っているが、私には関係ない。

 それを決めるのは陛下だし。この姉妹、さっさと仲直りしねーかなー殿下、普通に陛下の事好きそうだし言えばしっかり協力すると思うんだけどねー

 まぁ、下手なこと言って私の首が危うくなるのはゴメンだからそのことを言うのはもっと別の誰かにやって欲しい。


「サブーリン、お前はどう考える」


 そして、ボーッとしていたら急に名指しで意見を求められた。全く話聞いてなかった。士官学校の話だっけ?


「はぁ、まぁ、ええ、いいんじゃ無いですかねぇ?」

「そうだろう!?」


 殿下大喜び。


「その理由は?」

「大砲装備してるのはーまぁ、うちの団も同じだし士官クラスの人間なら近衛騎士としてうちの団にも騎士枠で採用したいですねー

 国軍基準で動けるならーまー騎士の戦いよりも国軍に近い戦いをする我が団には良いかと思いましてーえーまーはい。

 今、ウチの団は普通に人居ないので他の騎士団からまた人集まるのもアレですからーそう言う自動的に編入してくる枠も欲しいですよねー

 このノアマールでしたっけ?これぐらいなら他の団も装備してても良いかと思いますぅー」


 答えると陛下は腕を組み目を閉じた。それから暫くして回答はまた今度すると告げ去って行った。

 謁見は終了、終わったので帰ろうとしたら陛下の御付きにペンドラゴン団長と私は陛下の私室に来るようにと言われる。


「サブーリン、姉さんを説得してくれよ?」


 殿下はそんなことを言って去って行く。ドラクロア団長達は中央に残されたロケットを囲んで話している。

 私はユーリにサルーンと共に砦に帰るよう告げてから私室に向かう。


「サブーリン団長御到着」


 部屋の前に立っている衛兵がそう言うと扉が開く。中に居た衛兵が開けたのだ。

 衛兵は私が入ると出て行き、お茶を準備したメイド達も深々と一礼して去って行った。中には私、陛下、ペンドラゴン団長だけだ。


「サブーリン、士官学校は本当に作るべきと思っているか?」


 失礼しますと席に着くと同時にそう切り出される。


「えーまーそーですねー

 私は良いと思いますよー」


 紅茶を一口飲んでからミルクと砂糖を入れて混ぜる。


「失礼を申し上げても?」


 陛下を見ると陛下は許すと頷いた。


「陛下は殿下をビビり過ぎですねー

 殿下は確かに……アレですけどー」


 チラリと陛下を見る。


「良い。お前の感想をお前の言葉で述べよ」

「それではー

 殿下は確かに人の心無いかコイツ?って思う事は多々ありますけどー陛下に対してはーまー誠実に?真摯に?なんかそう言う感じがありますねー」

「信じても良い、と?」


 陛下の眉間に皺がよる。


「んー何と言いますかー

 私的にはーせっかくの姉妹なんだからもー少し仲良くせーやって感じですねー」


 ねー?とペンドラゴン団長にもさり気無くアプローチ。団長は困ったような笑みを浮かべて笑っている。何わろとんねん。


「一対一で話すのが気掛かりならば、自分やサブーリンを同席させては如何でしょう?

 武だけで言えば自分と遜色無いと思いますよ」


 そう言えば団長と手合わせしたことないな。


「ふむ……成程。

 分かったお前達の諫言を聞き入れる。

 日を設けてサブーリンは私の護衛だ」

「分かりました」

「あの子にもそれと無く伝えておけ」

「はい」


 陛下はお前達は下がって良いと言われたので砦に帰る。砦に戻ると直ぐに王立軍の兵士がやって来て殿下がお呼びとの事で殿下の私室に通された。


「どうだった!?」


 殿下の部屋は女の子の部屋というより男の部屋だった。壁には銃やら剣が飾ってあり本棚の本は全て戦記だの冒険譚だのという男の子が好きそうな部屋だ。

 我が父もここまで広くはないが書斎を兼ねた部屋には幾つかの本が置いてあった。


「まー近いうちに陛下が一対一で話し合いする場を設けてくれるらしーので其処で話すと良いですねー

 因みに私も陛下の護衛で参加しますぅー」

「姉上と?」


 殿下は驚いた顔をしていた。


「えー殿下とですぅー

 まー陛下は殿下の事を獅子身中の虫と思ってるみたいなのでーさっさと本腰入れて誤解解いたほーが良いとおもいまーす。

 今の陛下からしたら殿下の士官学校の話もー殿下の勢力増やして叛徒を増やす為の行為にしか思えないと思いまーす。

 なので腹を割って話した方が良いと思いまーす」


 会話してくださいと告げると殿下はウムと難しそうな顔をして頷いた。


「それでは頑張って下さーい」


 失礼しますと部屋を後に。

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