第45話 戦闘は勿論、囮すらも文句のつけようが無いほどに完璧な近衛竜騎士団
案の定、本隊とぶち当たると普通にヤバかった。戦いは数だよとは言うが陣地を放棄しながら冷静かつ迅速に遅滞後退はこちらの消耗が凄い。
被弾したら直ぐに後方に撤退。残念ながらすでに百近い死者は出たが、遺体は回収して後方に送ってある。負傷者に関しては戦闘不能な者や自力で歩けない者しか数えていない。
大なり小なり皆負傷しているのだ。クリスティーナも聖騎士や聖騎士見習いに混ざって包帯を巻いたり傷病者に付き添って水を与えたりしている。
斯くいう私も腕を弾が掠めて行ってビビったし、ユーリとサルーンも包帯を巻いている。
「後方にて第一銃兵中隊と砲兵隊が布陣完了、後退支援準備完了です!」
「はーい、じゃー第三は後方に後退。ローデリアは後退指揮。ローズ、軽騎兵隊はー?」
「第2軽騎兵中隊が準備完了です」
「おっけーローズは次の騎兵隊準備。私は第2軽騎兵率いて突出して来た部隊の首切ってくるわー」
「分かりました!」
後方に撤退する為には10kmの撤退戦をしなければならない。このままでは1日掛かる計算だ。
しかし、それでもやらねばならない。敵は完全に我々を殺す気でいる。理由は明白だ。私が挑発し、部下が完璧に仕事をして、私達がこうして敵に出血させながら生きているからだ。
私が前線に出ると味方は歓喜を上げ、敵は全力で私を殺そうとする。突撃しかけてる騎馬に対して横がガラ空きの歩兵なんざ何の効力もなく、私の月血斬血や騎兵の槍によって戦場の露と消えていく。
銃兵達は効果的な運用がなされず、どうやら商会のトップ達が周りを囲わせているようだ。其処にさえ近付かなければ銃は怖くない。
敵外苑部から飛び出ている歩兵部隊を刈り取りながら私が率いる軽騎兵達は敵を挑発する。
弓矢は味方への誤射は勿論そもそもの腕の悪さもあって数本も当たらない。敵歩兵の中には奴隷なのか手足に枷を付けて鎖で縛られた連中もいた。とんでもない連中だ。
借金奴隷とかいう奴等らしく、それもリボ払いと言うどう考えても私と同じ転生者が考えだしたやべーシステムで生まれた犠牲者の成れの果てらしい。
クレカ作った時にリボ払い設定しませんか?となぜか言われたのを思い出した。めちゃくちゃしつこかったのでじゃあアンタが毎月五万振り込んでくれたら考えますよって言い返したら引き下がった話を思い出す。
まー借金奴隷だろうが雇われ傭兵だろうが私の前に敵として現れたら殺すしかない。それが私の仕事だ。
可哀想にとは思うが、それだけ。私の仕事は近衛騎士団長なのだから。
散り散りに逃げようとする槍兵達を確認。素早く我方の後方に抜けて、逃げた戦列の穴を埋めようと後方部隊が前に出てくるのを確認する。
戦列は押し出し先だ。そして、逃げた歩兵達は奴隷商人達が鞭で殴り槍や剣で刺したりして脅し付けている。
私はライフルドマスケットを抜いて奴隷商人の1人に狙いを定め撃つ。弾は奴隷商人の肩に当たって馬から落ちた。
うーむ、命中率の低さ。奴隷達はそれを見て一目散に逃げ出す。成程ねー
こんな感じで戦闘を続けて夕暮れ、火が完全に落ちる前になったところで砦まであと1キロに辿り着き、王立軍による迎撃が始まる。敵は直ぐに少し後退。陣を敷いた。
我々の仕事は完璧に終わったのだった。
満身創痍で創団以来初の戦死者が出た。死者は128人とあの規模の戦いに置いては尋常ならざる少数だ。無事な者は聖騎士以外誰もいない。聖騎士達も負傷者や死者達の血によって汚れており、顔も全然兵士達のように疲れ切っている。
しかし、私は無事な者達を砦の中庭に集めて整列させた。正直言って私も今直ぐ横になりたい。しかし、そうはいかん。
「先ずは敵の誘導ご苦労でしたー」
私の言葉に全員顔が引き締まる。
周りには王立軍の兵士から士官まで雁首揃えて見ている。将軍のお歴々もいた。
「取り敢えず、明日から三日間の休養を取り事後この砦の防衛戦をしますー
今日死んだ128人の為に、負傷して戦えぬ者の為に、我々が戦果をあげましょー
私も敵の有名な所と一度も戦ってないのでー今回ばかりは勲章貰えないかなーと思ってますぅー
それじゃあ解散」
それだけ告げると全員が敬礼をし、私が去った後その場に崩れるようにして座り込んだ。私もローデリアとローズ、クリスティーナに弟子2人を従えて部屋に。
まぁ、全員勝手に着いてきただけなんだけどねー
「きょーはもーマジで疲れたー」
「団長もしっかり治療しないとダメです!」
「鎧を脱がすのでベッドに寝ないで下さい!」
ベッドに飛び込もうとしてサルーンとローズが阻止。そして、腕の包帯をクリスティーナが取るとローデリアが簡単な治癒をし始める。
「サブーリン!」
そして、鎧を脱がされ身包み剥がされていると殿下がマリアだったか?あのオッパイ聖騎士と双子将軍を連れてやってきた。
「これは殿下ーこのような姿で申し訳ないでーす」
殿下、普通に私のおっぱいと股間を見ながらも顔は私の方に向いている。ただのドスケベ変態親父やんけ。
「マリア、サブーリンに治療を」
「はい殿下」
マリアが出てくると私に手のひらを向ける。そして何やら祝詞を唱えると淡く光だし、私の体に出来た怪我は全て治ってしまった。
「おぉ、すげー
ちょっと私の部下達にかけて来てよー」
身体中を隈無く見てみると全てのケガやニキビすら無くなっていた。
「近衛竜騎士団の方々には私の部下達が治療を行っています」
「それはどーも」
それで?と殿下を見る。殿下は先ずは無事に帰還したことをおめでとうと告げ、それから一眠りしてから食事をしながら事後の作戦会議をと告げる。
また、この砦での戦闘指揮はこの双子将軍がやるとの事で防衛戦の際はこの2人に共闘してやって欲しいと言われた。
「了解ですー
詳しいことは明日以降ー私は疲れたのでー風呂入って寝ますー」
「ああ、ありがとうサブーリン団長あとは我々に任せてくれ」
「はーい」
殿下達は去って行く。そして、私は鎧を持ってひっそりコッソリ逃げようとするユーリを風呂に入れるようにとサルーンに言いつけてからクリスティーナに手を惹かれて浴室に。
クリスティーナに体を洗われ、湯船にドブン。
「撤退戦は懲り懲りだー」
「全くですわ」
後日、クリスティーナの考えたこの撤退戦の歌は殿下の指揮した防衛戦やドラクロア近衛騎士団の戦いを歌ったよりも人気になったのはまた別の話。
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