悪役令嬢の感想
転生したら悪役令嬢だったと言う話はごまんとある。そして、「私なら」とか「この時は」とか言う妄想もした。何なら憧れていた。
でも、実際我が身に降りかかると普通に辛い。その為の準備もしてきたしその為の訓練もした。
そして入念な準備もしていわゆる断罪日当日に備えたが、やはり神は悪役令嬢を許さなかった。
気分屋の皇帝が突如謎の催しを開き私の断罪日がズレた。私の雇った異国の最強剣士は帰ってしまう。
何とかダメか?と頼み込んだが無理だと断られ、何の解決案を見つけ出せず私は鎧に身を包みレイピアを握る。
訓練を積んだが、軍人として訓練を積んだ上に男の婚約相手には勝率は非常に低い。
「お前が相手なのか?」
決闘場、予定時間より30分早く全員が揃ったので開始した。開始したのだが私の姿を見た婚約者は苦笑とも呆れとも取れる表情をする。
「ええ、何か不都合でも?」
「いや。
お前が俺に勝てるとでも?」
「やってみなければ分かりませんわ。
逃げるなら今ですわよ」
煽ってみるが奴は憎たらしくキザな笑みを浮かべるだけ。それから決闘が開始された。私の突きは全ていなされ剣を弾かれる。
それを彼此30分近く行われた。体力の消耗も激しいしそもそもの力は魔力でブーストしていたので魔力も尽きかけている。
「もう諦めたらどうだ?」
「まだ、まだですわ」
立ちあがろうとしても膝が笑い力が入らない。
「見苦しいな」
「ならば一思いにやりなさいな」
その場にしゃがみ、首を差し出すと婚約者は剣を構え振りあげた。
何故うまくいかないのか、その後悔と共に死ぬのか。悔しくて涙が出る。運命には逆らえないのか、と。
「さらばだ」
目を瞑り振り下ろす。
「ちょいちょい!
あっぶなー」
誰かが滑り込み、ガキンと金属が弾かれる音がした。見上げると1人の騎士が私の前に立ちはだかって婚約者の剣を弾き上げていた。
まさか死ぬと思っていたし、何なら私を救ってくれる人がまだ居るとは思わなかった。
「何だ君は?」
「あー先週決闘裁判の代理決闘人?とか言う奴をー引き受けましてー」
「なに?」
そう言えば先週話しかけてきた変な女がいた。双刃刀を持った私服を着た私と同い年より少し上くらいの女だ。
本当に来てくれたのだ。こうして私ですら忘れていた約束の為に!
「なんか時間より先に始まってましたー?
今からでも間に合いますかね?」
そう言いながら女は私を見た。助けてくれるのか?本当に?
「俺は構わないが……」
婚約者は苦笑しながら私を見た。
「絶対に勝てるの?」
女は私の言葉に何言ってんだと言う顔をすると首を傾げた。
「殺して良いなら一手。
手足が落ちて良いなら二手。
無傷だと……そこそこかかりますかねえ?」
「殺す気で来てもらおう」
眉間に皺を寄せた婚約者が告げる。
私は頷くだけしかできなかった。
「了解でーす。
では、どうぞー」
女はそう言うと双刃刀を構える。
婚約者は剣を構え、裂帛の気合いと共に切り掛かったと思ったら次の瞬間には首が飛んでいた。
「え?」
「終わりましたー」
女はそれだけ言うと傍に転がる婚約者の首を拾い上げて眺めてから倒れた胴体に載せる。そして、剣を拾い上げると鞘に収めて首の前に置いた。
「初めましてお嬢様。
先に始まっていたとは言え大事な裁判に遅参した次第、我が勝利に免じて許して下さい」
女はそう言うと体の後ろに双刃刀を隠し、私の前に傅いた。正に物語の騎士だった。顔も凛々しく、その白銀の髪の毛は側面を刈り上げてボーイッシュに見える。
怠そうな顔も声もその外観に相待ってしっくり来るほどだ。ああ、この人は本当に騎士なのだ。
「許します」
気が付いたらボロボロと涙が溢れていた。
「涙をお拭き下さい」
その騎士の名はサーシャスカ・サブーリンと言う。帝国でも名を轟かせている騎士その人だった。
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