第39話 新しい武器を手に入れるとテンション上がるよねっていうやつ。

 試合は一週間後。帝都にあるコロシアムで行うそうだ。

 翌日、私はそのコロシアムに向かう。ここでは毎日重犯罪者同士が決闘をしたり魔物や魔族と戦うための見せ物になっているらしい。


「どういうことですか?」


 そして、中入ろうかと受付に向かうと一際派手なドレスを着た少女が受付で騒いでいる。金髪というよりも銀髪に近く、非常にキツイ吊り目。声はそこそこ高い。

 ザ・悪役令嬢だ。


「だから陛下の急な決定で貴女の決闘裁判は後日に流れたんです」

「そんな勝手な!?

 私が雇った代理決闘人はその日にはこの国を出るのですよ!!」

「私に言われても困ります。

 文句を言うなら陛下に仰ってください」


 受付が迷惑だと言う顔で告げると少女が受付の顔を張り倒そうとするので止める。


「まーまー、私のせいでその決闘裁判?とか言う奴が出来ないなら私がただで決闘してあげるから」


 手首を捕まえた私を少女は親の仇のように睨み付け、そのまま腕を振って振り払う。


「負けたら貴女を殺すわよ!」

「ハッハッハッ、負けないのでー」

「良いわ!

 どうせ死ぬならみっともなく足掻いてみせるわ!」


 一週間と1日後にここに来なさいとお嬢様は言うと去って行った。名前も聞いてないし、言ってないけどなんかスゲー人だったな。


「なぁ、今の誰?」


 そして、傍で見ていたユーリがもっともな質問を私にする。


「さぁ?

 でもまぁー私のせいで困ってるなら手を貸さないと、ねぇ?」

「確かに」


 それからコロシアムの観客席に入ると実に雑な殺し合いに熱狂する民衆が目に入る。個人的には何も楽しくないし、無粋過ぎる場所だと感じた。それはユーリも同じで顔を顰めて殺し合う罪人達とそれを殺せ殺せと大合唱する観客達を見ていた。

 気分が悪すぎて30分も居ないで立ち去ることにした。それからはユーリを連れて帝都観光。ちなみにサルーンは石を投げられると城で控えている。

 一週間のんびりと過ごし、私はコロシアムのど真ん中に立っていた。鎧に身を包み、剣を腰に下げている。周りは大観衆で埋め尽くされ、陛下とロリ皇帝は貴賓席に見える。

 それから長々と会場へ紹介があり1人目の巨漢の男が入って来た。


「ヘッヘッヘっ。

 お前を殺せば無罪放免の上に貴族の爵位を貰えると聞いてな。

 殺すには惜しいな」


 下品な笑いを浮かべて大きなバトルハンマーを手の中で回していた。


「雑魚程よく喋るという。

 さっさと来い。時間の無駄だ」

「ガキィ!!!」


 重罪人はハンマーを振り上げて踏み出すので普通のダガーを首目掛けて投げつける。ダガーは見事突き刺さり、巨漢はその場で止まった。

 そして、二、三歩踏み出すと同時に地面に倒れて絶命。


「しょ、勝負有り!」


 審判がそう叫ぶ。会場は静まり返っていた。


「つぎー」


 それから語るに落ちる程雑魚ばかりがやって来たので全部一撃の名の下に切り殺してやる。


「何の運動にもならないな……」


 剣を仕舞い、ロリ皇帝を見た。


「これでご満足いただけましたか?」

「うむ!

 貴様に月血斬血を譲り渡そう!」


 やったぜ!

 脇から恭しく双刃刀を掲げた連中がやって来て私に差し出す。それを受け取って鞘を抜けば赤と黒の刀身。懐かしきゲツザン。

 右手で回し、左手で回す。良いね。


「良い」


 素晴らしいね。クルクル回してから、うっとり。楽しい。凄く。これ、ほんと楽しい。


「うん、良い」


 刀身を仕舞い、武器を背にして陛下に頭を下げる。


「このサーシャスカ・サブーリン。ステンノ陛下へのより一層の忠誠と献身を」


 周囲は相変わらず静かだった。

 それから退場して貴賓先に。


「お前は本当に強いな。

 全員が一撃でやられた」


 ロリ皇帝は何が良いのかニヤニヤしていた。


「お前、我が国に来ないか?」

「行きませんがー?」


 今さっき陛下に忠誠と献身を誓ったばっかやろ。


「あ、それと明日なんか決闘裁判?とか言う奴で戦うことになったのでー

 明日一日暇もらっても良いですかー?」

「何だそれは?」


 陛下ははぁ?と首を傾げた。


「何か本日やるらしかったんですが、私のこの茶番でー流れてしまったとかでー雇ってた代理決闘人?とか言う人いなくなったーとか騒いでる女の子居たのでー」

「なるほど」

「それにコイツの試運転もしてみたくてーよろしいですかねー?」

「ふむ、まぁお前が良いなら良い。

 で、その決闘裁判とは何だ?」

「さぁ?」


 初めて聞く物だ。


「お互いの訴えが食い違い、お互いに折衷出来ない又はプライドが許さない場合にお互いの命を賭けて戦い勝った方の訴えが通る」


 ロリ皇帝がニヤニヤしながら告げる。


「実に人間は愚かよ」


 ロリ皇帝は笑う。

 やはり魔族。人間には無い感覚。無いな。この国は色々と大丈夫かね?


「明日の決闘裁判は財務大臣の娘と国防大臣の息子の決闘裁判だったな」

「大臣の子供同士で?」

「うむ。

 婚約者同士だったのだが国防大臣の息子が大商人の娘に熱を上げてな。その為に婚約を破棄しようとしてーというしょーもない理由だ」


 実に矮小!とロリ皇帝は笑った。

 つまり、あそこで大騒ぎしていたのは財務大臣の娘なのか。大臣の娘なのに何故金がないと騒いでいたんだろうか?まぁ、良いや。


「そう言う訳で明日、財務大臣の娘の決闘裁判に参加します」

「殺しても良いぞ」


 ロリ皇帝がその方が盛り上がるとまで笑っていた。人外だなーまぁ、良いけど。

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