第35話 近衛竜騎士団長の騎行
帝国行くぞと言われてから3ヶ月ほどしたある日、ペンドラゴン団長が訪ねて来た。
「やぁ、サブーリン団長。
調子はどうだい?」
「書類仕事なければ最高な職場ですねぇ」
優秀な部下のお陰で日々の仕事は順調だ。毎日サインと訓練指導。
「それは何処もそうだよ。
それより二週間後に帝国に行くことになった。君の騎士団も行くんだけど、覚えてる?」
「えぇ、まぁ、はい。
長旅ですなぁー」
「そうだね。
数が多いから旅程は1ヶ月を見込んでるよ。
宿などの手配は全て終わってるけど、確認して」
渡された書類をチラリと見てからローデリアに渡す。
「それより、さっき訓練場を見た時に君の部下達は多数の王立軍の兵士に囲まれてタコ殴りにされていたがおれは何かの訓練かい?」
「はい。
取り敢えず不利な状況で戦うための訓練ですねぇ。
まぁ、一人十殺してから死ねって方針で訓練してますぅ」
私は十殺出来ないですけどねーと笑うが、ペンドラゴン団長は面白い冗談ですねと笑い流した。
冗談は言ったつもりはないが、まぁ、良いか。
「取り敢えず、出発までしっかりと装備を整えて。
向こうに着いたら多分パレードするから」
「えぇ?パレードするんですかぁ?
了解ですぅ」
何のパレードだろう?
それから若干の雑談をしてからペンドラゴン団長は帰って行った。
「つー訳で準備よろしくー」
「おまかせを」
それから二週間が経ち出発。
殿下が近衛竜騎士団に、と全く新しい黒い制服をくれた。ナチスかよと笑いそうになったが、通じないので我慢した。私は偉い。
そして、それが陛下に普通に良いと言われて正式採用。現在私たちはその格好で馬に跨り、鼓笛隊の演奏に合わせて出国パレードに出ている。
もちろんこの服は賛否が非常に分かれたので取り敢えず「攻撃に当たらなけりゃええやん。攻撃に当たらなきゃ裸でも死なんわけだし」と言ったら全員黙ってしまった。
「サブーリン様ぁー!!」
「救国の英雄様!!」
「竜騎士団長!!」
歓声が凄い。
王城前を出発してそのまま大通りを城下町外苑部まで行き、その外に出ると王立軍が並んで街道を警護。勿論、そこも観客が凄まじい。鼓笛隊は延々と行進マーチを吹いて叩いている。
暫くすると殿下が前方にいると伝令が回って来た。態々見送りにきたのだろう。剣を抜き、脇に控える。
「殿下に対し!
頭ぁー!右っ!」
私の号令に合わせて兵士達は全員敬礼。馬上の殿下はそれに答礼した。
悪いことしないよーにねー殿下、ペンドラゴン騎士団長めっちゃ殿下嫌いだからなー
「直れーっ!」
剣を鞘に収めてチラリと脇を馬に乗っているサルーンとその馬に一緒に乗っているユーリを見る。
ユーリは最近馬に乗れるようになって来たがまだまだ上手く御せないので、このパレード間はサルーンの前に乗ってもらう事にした。
私の前には鼓笛隊がぶんちゃかぶんちゃかと歩き、私の後に部隊が続いている。そして、私の後に陛下の乗った馬車が続き周囲を第一近衛騎士団が囲っている。
私の騎士団、よく考えれば王族の為に存在しているものでは無いよな。一応妹様こと殿下のところにいるけど明確に誰それに付けと言われていない。
なので私は浮遊部隊になっている。現にこうして陛下の共周りとして騎士団全員出席してる。
まぁ、誰の下に着いてもどーでも良いんだけどねぇー
「さてはて、パレード終わったし。
私も馬車乗りたーい」
「持って来てません」
「知ってるー」
暇だなー馬を180度向きを変えて後ろ下に歩かせる。この行進速度なら歩ける速さだ。
「団長、何してるんですか」
「暇だからさー
馬は苦手だから練習?」
お馬の稽古って奴だ。
「団長は十分に上手ですよ。
誰もそんな事できません」
「えぇ?じゃあ出来るようになろうかぁー皆んなでー」
言うと全員がローデリアを睨み付けた。
「「「ローデリアッ!!!」」」
「私のせいですか!?」
そして馬を進めて1ヶ月。大行列の最短コースをとって漸く帝国との国境沿いに到着した。
その間は帝国の歴史のお勉強。普通に半分くらい聞いてなかったが、王国と違って様々な種族がおり奴隷制度と冒険者制度がある国らしい。
単一民族国家じゃ無いので種族間ごとの争いもあり、奴隷も扱いが酷いのと人権派が解放をしようとあちこちで武力解放をして帝国軍と雇われた冒険者達が鎮圧しているそうだ。
そして、そんな連中が我々を襲ってくる可能性もあるらしいので帝国領土に入ったら我々竜騎士団が前哨として怪しい連中を排除する役目を仰せつかった。
「すまない、サブーリン。
せっかくの旅行なのに」
「とんでもありません陛下。
私も部下も毎日乗馬訓練では飽きてきた所です。陛下とその馬車には不審者は一切近づけません」
陛下の泊まる天幕を後にして隊長達を全員集める。
「つーわけでー
帝国内の治安は非常に悪いらしくてー私達で陛下と第一近衛の前哨をしますぅ」
告げると少しざわついた。
「我々が第一近衛の盾となるのですか?」
近衛騎士出身の隊長が酷く嫌そうな顔をする。近衛騎士は各団毎にプライドがある。そして、前哨の任務は本来隷下部隊から出すので見方によっては我々は第一近衛の下に付いているように見える。
「君達ねぇー団を愛する気持ちはいいけどねーどの団が上か下かーみたいな次元の低いプライドは捨てなさいよぉ?
私等が何で前哨任されたのか、みんなが持ってる銃を見なさいよー」
飾ってあるライフルマスケットを手に取りテーブルに。
「この銃は我が国しか持ってないのよぉ?
これで100メートル先の敵を撃ちまくって排除してけばー我が国が帝国に軍事面でも勝ってるって誇示出来るわけでー
その為に私達は全員馬の上での射撃とか練習してきたわーけー
まぁ、それはあまり当たらないからどーでもいいんだけどー」
「つまり何が言いたいんだ?」
ユーリが難しい顔をして私を見てきた。
「第一近衛が出張る前に私らで立ちはだかる敵を全て倒せば私達の方が騎士としては上って事よー
ユーリはローデリアに勉強習いなさい。
サルーンも第一線部隊でローズに付いて下士官見習いとして頑張りなさい。
各部隊長も各隊の一番優秀な騎士は何か褒賞をあげるって言いなさい」
言うと一人の隊長が手を上げた。
「それは団長の弟子になる権利でも?」
「んー……じゃあその権利を獲得する為にサルーンとユーリに挑戦する権利をあげる」
「任せて下さい団長!」
「やりますよ団長!」
こうしてやる気を出させることに成功した。私って天才。
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