第32話 近衛竜騎士団長の小さな発見と夢

 翌朝、起きると全員まだ素振りをしていた。


「まだやってる。ウケる」

「今9900回!」


 ユーリが元気に応える。


「起きたか、サブーリン」

「おーゴライアスしょーぐん」


 何してんの?と聞くとお前が帰ってこないから見に来たと言われた。


「取り敢えず、あと一週間は此処で見張っておきましょー何かあったら伝令飛ばしてくださーい。

 私らは今日の昼此処を出て殿下に加勢しまーす」

「分かった」


 因みに決闘で言ったことは全て嘘。伝令は来たがあと二週間はかかると言われた。近衛騎士達も1人10人殺せれば良い方だろう。

 が、私が頑張って近衛騎士達も虚勢を張ってくれたお陰で押し通せた。バレぬうちに殿下の援軍を期待せねばならない。


「今日の昼に此処出発して殿下に増援しまーす。なのでーさっさと素振り終わらせて殿下のところ帰りますよー」


 了解と死にそうな声が帰ってきた。

 暇なのでサルーンに稽古を付けてやる。


「よしこい」


 両手に木剣を持ってサルーンを見る。

 サルーンも木剣を取ろうとしたので曲刀でやれと告げる。


「怪我をするぞ」

「私に怪我させれたら弟子卒業で近衛に入団させてあげるよー」


 ハッハッハッと笑うと後悔するなよ、と言われた。

 サルーンは曲刀をクルクルと回し始めた。そして火の玉攻撃。それを避けてクルクル回しているサルーンを見る。

 ふむ、目を見ているのでサルーンの存在を認識しているが、首から下の大半が認識出来ない。

 すごいな、あの剣の力だろう。たしかに普通に戦い辛いなー


「すげーなにそれー」


 ワハハ。

 サルーンの真似して木剣をクルクル回す。勿論何も無い。


「すげーなー

 何かわたしもそーゆー剣欲しー」

「今回の功績で貰えば良い」


 サルーンはジリジリと間合いを詰めてくる。

 何だろう?間合い測ってる?まぁ、良いや。


「その剣って回せば見えなくなるん?」

「いや、回してる間は常に魔力を消費し続ける。エルフ族以外の者だと一部の魔族しかこの剣は扱えないと思う」

「なーほーね」


 そう言えばゲームにもあったな装備して武器を振ると姿が一瞬消える武器。主に対人特化の剣だったな。起こりさえ見えないからパリィとかかなり難しい剣だ。まぁ、慣れたら武器振る直前のモーションで分かる様になったのでランカー達には一切効かない武器だった。

 何つったかな?何たらの双曲刀とかいう名前だったな……黒い刀身で。

 あれ?もしかして、この世界ってあのゲームの剣もあるんか??え、だったら相棒として使ってた何本かの武器欲しいな。

 陛下に聞いてみよう。はやく帰りたくなってきた。

 3歩間合いを詰めてサルーンの剣を回している左手の中心軸に叩き込む。柄か鍔に当たり、回転が止まると同時にサルーンが右手の剣で斬りかかるので木剣を捨てて手首を掴む。

 すかさず間合をさらに詰めて密着し、小外刈りで投げてやる。


「私の勝ちー」


 ユーリ達を見るとちょうど終わったのか全員その場にへばっていた。


「よーし、殿下に増援するよー

 近衛竜騎士団移動準備!」


 叫ぶと全員が了解と叫びヘロヘロと動き出した。


「少しくらい休憩させてやったらどうなんだ……」

「どーせ馬移動なのでーそこで休めまーす。

 それにー向こう行ってもやることは無いのでー」


 そして1時間で準備が完了したので移動開始。

 距離は1日。着いたのはその日の夜だった。

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