帝国軍魔法剣士の感想
サーシャスカ・サブーリンと言う王国騎士の名は王国にも轟いている。一騎打ちは勿論、レッドキャップが待ち伏せする森をたった30騎の騎馬で駆け抜けて無傷で全滅させる程に指揮に優れ、入団から僅か一年足らずで近衛騎士団長になった。
帝国でも伝説的英雄たる不死身のドラクロアと打ち合って引き分けになったりたった10歳ほどで一回り以上も上の男達と連続で10回の一騎打ちをして勝ち抜いた。
そんな生ける伝説が我々の目の前に立ちはだかっている。臆するな、と言うのが無理なのだ。
兵達は皆、無意識に生まれる恐れと言うか、震え故に武具が鳴るのを必死に抑えている。
サブーリンは口上を終えるとさっさと掛かってこいと言わんばかりに街道上を彷徨いている。
たった5万の兵士がたった1人の騎士に足止めされているのだ!
私は上官達を見るしか無い。上官達は皆、死ぬと分かっていてサブーリンに挑む者はいない様だ。
意気地無しめ、とは言うは容易いがならばその意気地を見せろと言われたら私も臆するだろう。ゴートデーモンの単独撃破はそれ程までの事なのだ。
「私が行きます」
しかし、だ。意気地を臆する程の相手には同時に憧れを持つ。畏怖とは敬い恐れるのだ。そう、敬っているのだ。
敬を持って接する武人に挑みたくなると言う心また、畏怖を表す事だと私は思う。
「だ、駄目だ!
相手はあのサブーリンなんだぞ!お前如きが行ったところで勝てる訳ない!」
「ですが!相手はあのサブーリン!
サーシャスカ・サブーリンなんですよ!?」
黒エルフとかダークエルフとか、肌の色で差別された私を支えて来たのが魔術と剣の腕。自惚れでも驕りでもない、純粋な武によってのみ作り上げられた自信。
故に挑みたいと言う気持ち。サブーリンが5万の大軍を前に一切引かない武と同等の覚悟を私も持っている。そう言う自信だ。
馬の腹を蹴り前に出る。
「我が名はサルーン!
貴公の名は我が帝国にも轟いている!いざ尋常に!」
ついに言ってしまった。
サブーリンは笑っていた。脇に抱えていた兜を被り、フェイスガードを下ろした。
「最初は貴公からか!
良かろう!さぁ来るといい帝国の勇者よ!」
こうして、私は救国英雄サーシャスカ・サブーリンと剣を交えたのだった。
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