第27話 砲弾の代わりに釘とか食器とか詰め込んで発射すると敵は大変な事になるらしい。

 出発から到着まで一日で行った結果、各部隊長から文句が噴出した。王立軍から来た兵士や騎士を中心に非常に文句が多いそうだ。

 なので翌朝私は演説をする事にした。

 街の広場を借りて、突然やって来た近衛騎士団に何事か?と言う顔の町長や市民もまた集まる。


「おはよーございますみなさん。

 高々一日の強行軍で文句垂れてる近衛騎士がいると聞いてー、私は驚きましたー

 辞めたきゃ辞めると良いと思いまーす。君等は所詮その程度だったってことでー

 特に騎士階級の者は今直ぐ帰ってくださーい。戦争の邪魔でーす」


 どうぞ、と王都の方を指差す。暫く待つが誰も動かない。


「どうしたんだぁ?

 この先、君等はその命を賭けて帝国の軍と戦うんだぞぉ?高々戦場を移動したぐらいで弱音を吐く雑魚は銃と弾薬を置いて帰り給えよーいらねぇんだよねーそーゆーの。

 兵士に関してもしょーじき殿下がこいつ等は使えるってーお墨付きだったけど、まぁ、その程度ってことだよねー殿下も人の子、見る目が無いって事ですねー

 なので殿下にも所詮はー王立軍ですねーって言うしかなくなるよねー

 あの人は君等をすごい信頼してるらしーけど、でもまぁ、所詮は徴兵されて集まってー食い扶持ないから軍に残ってたーって存在でしょー?

 ここ、近衛騎士団なのでー時々魔物狩ってー紛争出てーみたいな甘っちょろい事期待してたらーほんと邪魔なんで帰ってくださーい。

 これから帝国軍が来るかも知らないのでー高々一日の距離をー強行軍したぐらいで文句言う弱兵要らないでーす。

 近衛騎士団今直ぐ辞めてくださーい。王立軍に戻って殿下とか部隊の人に近衛騎士団はレベル高過ぎて戻って来ましたーって言ってくださーい。

 私からも殿下に言っとくんでー」


 どーぞーと再度促すが誰も動かなかった。


「各部隊長はー帰った奴を昼に報告してくださーい。

 近衛騎士団から出て来た人達は射撃陣地の選定と構築、巡回路を決めてくださーい。

 一週間で構築お願いしまーす」


 かいさーんと告げると町長や諸々のお偉いさんが走って来てどーなんだと騒ぎ出す。


「いったとーりでーす。

 貴方がたの領主が帝国に寝返ったのでー我々は急遽この国境沿いの要衝に来ましたー後で五千の王立軍も来ますぅー

 協力宜しくですぅー」


 そう告げると町長はうーんと気を失った。

 大丈夫かしら?まぁ良いか。


「サーシャ、お前あいつ等に舐められてんじゃ無いのか?」


 徴発した町長の家に向かうすがらユーリがそんなことを言い出した。


「んーどーなんだろーね?

 まぁ、舐めてても構わないけどー近衛騎士団所属って所をしっかりと理解してもらわないとねー」

「あ、あんな事言って大丈夫なんでしょうか?」


 ローデリアがバラバラと解散する兵士達を見る。


「ぶっちゃけ、たかだか歩兵大隊で何ができるんだって話なのでー問題ないでーす。

 主力は一週間後に来る王立軍なのでー」


 指揮官として私が此処にいれば問題ないのだ。


「じゃあなんでそんなに早く来たんだ?」


 ユーリが首を傾げている。


「近衛騎士だから。

 国が侵されんとしているのにゆっくりのこのこと部隊展開する事が許される立場ではないんだよー

 近衛騎士は国王の生命と財産を守る為の存在だからねー

 それに向こうにいても暇だしー」

「結局それじゃん。

 サーシャは男だったらウチの村では一番の戦士になったな!」

「女で残念だったなー」


 この野郎とユーリを捕まえて頭をガシガシ撫でるとユーリはやめろーと笑いだす。

 それから暫くすると近衛騎士達は手書きの地図を作り報告にやって来た。街に入る前にある平野にて陣を敷き迎え撃つしか無い。帝国と王国の合間には平野が広がっているのだから。

 しかし、此方は銃兵が600その内何人帰るか分からんから半分と見ておこう。


「銃兵300に砲は無しとすると、どうするね?」

「さんびゃく?」

「砲兵隊は数に入れないので?」

「戦いになりません」


 ユーリが地図の上に置いた兵棋を適当に並べて遊んでいたが、私の言葉で眉を顰める。


「王立軍出てるのにたかだかあの程度の強行軍で根を上げてしまう様じゃ半分と数えた方が良いでしょー

 砲兵隊も半分抜けたら動かないでしょ?」


 だから歩兵300と言うと全員が難しいだろと言う顔で見た。

 ローデリアが何か言おうとするので先制パンチ。


「楽観で作戦立てると死ぬからやめなよー?」

「うぐ……」

「でも、王立軍も後から来るでしょ?」


 ユーリが王立軍の駒を私達の駒の隣に置く。


「うん。でも一週間掛かると見て考えよう。

 一週間300人で生き残るんだ」

「無理じゃ無い?」

「300人では無理です。隘路なら兎も角」

「平野では騎兵にやられて終わりでしょうね……」


 大変だー


「平地で騎馬部隊相手に銃兵はどうする?」

「やはり、大砲は必須です。

 騎兵の突破力を止めれるのは砲兵隊だけです」


 うーむ。

 と、なると近衛騎士全員を集めるか。


「取り敢えず、昼だなー」


 そして、昼。

 各部隊長がやって来た。


「それではー

 午後の話をしまーす。銃隊所属の近衛騎士は全員砲の操作を学んで下さーい。砲の弾込めと発射でいいでーす。

 帰る人達は武器と火薬置いていってくださーい。何人帰りますかー?」


 部隊長を見る。


「帰るものは居ません」


 銃兵隊の大隊長が告げた。


「いえ、子供じゃ無いんでそーゆーの要らないでーす。

 残るならなぜ文句を言ったんですかー?

 今回はもう近衛出身だけでやるので文句言っていた者全員は帰って下さーい」

「しかし!」

「しかしもカカシもあるかアホ。

 国の一大事に文句垂れる馬鹿は近衛騎士団にいらんと言っている。コチトラ遊びてやってんじゃねーんだ。王女陛下が近衛騎士団に銃砲隊を作れと命ぜられ、作ったのが私達だ。

 そもそも、近衛騎士の斯くあるべしは読んだのか?」


 オイと部屋の外にいる近衛騎士を呼びつける。門番的な奴だ。


「何でしょう団長」

「近衛騎士が団長の命令に反いた場合はどう規定されている」

「斬首刑です」

「何故近衛騎士団の団長はそのような権限があるのか?」

「女王陛下の生命と財産、又王国の名誉を守る為」

「では、近衛騎士団の団長は何をしても良いのか?」

「団長の横暴は他の団長に報告する事で他の団長から審議を受け陛下を長として審問会によりその採決を決める。

 因みに、過去にその審問会は三度開かれ判決としては1人は無罪、残りは斬首形。内容は無罪となった人は死守命令を無視して単独で出撃。

 結果的な大軍を撃ち破った。残り二つは横領と情報を流していたから。

 そして、近衛騎士団から呼ばれた身として個人的な意見は王立軍出身はまだまだ自覚が足りて無いと感じます。

 団長の決定は正しいかと」


 近衛騎士は失礼しますと去って行った。


「つー訳で帰ってくださーい。

 そしてみんなで斯くあるべしを熟読する様に命令しておきまーす」


 実際に残ったのは銃兵は400で砲兵隊は砲10門だった。

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