第24話 ライフルドマスケットと近衛騎士団長

 ライフリングのついたマスケット銃を歩兵大隊分貰えたは良いが、これ持ってるだけで本当に戦争有利になるんか?

 と、言うか地方貴族の反乱で敵の数が5万だか6万ってヤバくない?

 普通に最前線に出向いて一番槍取りまーすと指揮官会議で言ったら全会一致で止めませんか?と言われた。


「で、前線まで来たけどさー」


 すっごい光景。

 そこそこ高い城門を前に数万の大軍が並びその最前線に私達がいる。そこには副官のローデリアとローサにユーリがいる。

 砲兵隊には正面の門をぶち壊せと死ぬほど撃たせ、殿下の連れて来た砲兵隊も馬鹿スカ撃ってる。

 歩兵達は新式銃のとライフルでズバンズバンと狙撃。

 かなりの成果はあるらしく私達正面の城壁上から見てる兵士は顔を出さなくなった。


「団長、本当に、門壊したら突撃するのですか?」

「どうやって攻めるんだ?」

「無茶ですよ団長!」


 側近三人がやめろやめろの大合唱。いや、ユーリはやろうやろうか。


「まー、取り敢えず今日の夜の会議で聞いてみますかねぇ」


 会議には砲兵隊と歩兵、工兵枠の魔術師の其々隊長を連れて行こう。


「まぁ、夜までは今の状況で」


 正直、この戦いは私がどうこう出来る次元では無い。辺境で戦っていた頃が懐かしい程に別次元だ。

 つまんなさそう。

 それから一日中砲撃をぼーっと眺めつつ夜の会議をまつ。


「暇だなー

 ちょっと陣中視察するかー」


 三人を引き連れて歩兵陣地に。


「やっほー当たってる?」


 歩兵陣地はローデリア達に頼んで撃ちやすい様に椅子とテントで座りながら射撃出来る様に構築した。

 射撃訓練も兼ねてるので弾だけは大量にある。と言うか、殿下が死ぬほどくれた。そして、実証実験も兼ねてるとかで全員撃ちまくっている。


「これは団長。

 殿下は我々に良い銃をくれました。現在撃てる目標がほとんど居ないので銃眼目掛けて射撃しています」

「なーほーね。

 頑張ってねー」


 因みに私にも一丁貰っているが銃は興味ないのでユーリに持たせている。

 ユーリに撃ち方も教えてあげたが、なかなか筋が良い。


「お、何か偉そうな奴が顔を出してるぞ。

 誰かアレ撃ってみろよ」


 兵の中からそんな声が聞こえて来た。


「撃ち方やめ!撃ち方やめ!!」


 全員に射撃を止めさせてから全員の視線を集める。


「今!あそこに何やら偉そうな奴が出て来た!

 あれを一撃で仕留めた者には金貨5枚をやろう!」


 言うと全員がおぉ!と歓声を上げた。


「しかし、距離は600!

 自信がある者しか認めん!」


 ユーリの肩に手を置き耳打ち。


「君も参加ねー

 当てたら何でも一つ言うこと聞いてあげるよー」

「やる!」


 それから十数名が現れて1人1発づつ撃っていく。しかし、誰も当たらなかった。敵のお偉いさんも5人目位で撃たれているのに気が付いたが誰も当たらないと見ると身を隠す何処ろか寧ろ城壁の上に立ち上がって挑発する有様だった。


「ユーリ、アイツに当てたらキスもしてあげる」


 ユーリに告げるとユーリは此方を見てから敵のお偉いさんを見る。

 ユーリは周りをキョロキョロ見てから何かを見つけそれを、じっと見る。何見てんだろ?と視線を辿ると敵の旗だ。

 それからユーリはその場に寝っ転がり、誰かの背嚢を枕に置くと狙いを定めた。


「何だその構え?」

「静かにぃー」


 暫くした後にユーリが引き金を引いた。

 望遠鏡を覗くとお偉いさんが壁から落ちる。


「当たったースゲー」

「マジかよ!」

「いいぞボウズ!」


 大喝采が上がる。


「当ててやったぞ!」

「皆蛮族の子供に負けるとは情けないぞぉー

 ユーリ、君は金貨5枚をやろう」

「そんなものはいらない!

 勝負だ!」


 ユーリが銃を脇に置くと剣を抜いた。


「はいはーい。

 みんなも暫く休憩してよ。アイツ撃ったから今日の仕事はおーしまい。

 どーせ明日もバンバンやるからさーいつかの突撃に備えてえーきでも養おう」


 ハッハッハッと笑い、腰に提げた剣を解く。


「ダガーかしてー」


 ローデリアが腰あたりに着けているはずのダガーを弄る。ローデリアは巨乳なのでたまにセクハラする。


「あ、ちょっと!?団長!」


 目的のものをゲットしてからユーリを見る。


「まだダガーかよ!」

「この一年で素手からダガーになっただけでも大したものだよー

 まぁ、ダガーでも十分過ぎるんだけどねー」


 ナイフでも十分捌ける。

 言うとユーリは両手で剣を持つと頭上に掲げる。チェストの構え。


「良いぞ小僧!」

「今のところお前が唯一団長に挑めるんだー頼むぞー」

「そうだ。

 お前が一度でも団長に勝てたら団長が犬の真似しながらお酌してくれるんだー」

「そうだぞユーリ!お前の為に俺達も銃の撃ち方とか教えてやったろー!」


 兵士達がワイのワイのとやり始めた。


「おーい、誰だー私が犬の真似しながらお酌するなんて嘘ついた奴ー」


 誰もそんな約束してねぇ。


「ころすぞー」


 兵士達を見ると全員黙った。


「はーい、私に犬の真似してお酌して欲しい人は私に勝ってねー

 それ以外は何もないよー」

「ゼァァァ!!!!!!!!」


 ユーリが切り掛かって来た。スピードも力も気合も良し。だが、相手が悪かった。振り下ろされる剣をダガーでいなし、そのままユーリの腹に蹴りを入れる。

 ユーリは吹っ飛ばされて剣を落とした。


「はい、負けー」


 ダガーをローデリアに返しつつ落ちた剣を拾い上げる。


「鞘貸してー」


 腹を抑えて立ち上がるユーリに告げるとユーリが鞘を投げて寄越した。


「じゃー皆、ちょっと稽古つけてあげる。

 掛かって来なさい」


 鞘に刀身を納め、抜けないようにしっかりと革紐で縛って構える。

 兵士達はお互いを見合う。


「ローデリア達も掛かって来なさい。

 私に犬の真似をしながらお酌させるとは、どう言うことか、皆んなにも体感して貰いまーす。拒否権はありませーん」


 それから半日かけて全員に少なくとも一発づつ入れて終えた。

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