第21話 女王陛下と近衛騎士

 翌朝王城に向かう。

 謁見の間に通されいつも通りにへーへーと待機。暫く待つと陛下がやって来た。


「報告書は読んだ。

 面をあげよ」


 開口一番そう言われた。

 頭を上げると何とびっくり女王陛下は普通に椅子に座っていた。いっつも立ってるのに。


「それで、蛮族掃討戦でお前は何故女子供を助けた?

 軍から正式に文句が来たぞ」

「はい、女王陛下。

 理由は私と決闘をした2人の蛮族との約束があるからです。近衛騎士の名を出し決闘をしたので、例え蛮族相手とは言え女王陛下の御親衛たる私がその名と名誉を汚す事は出来ません。

 あの村の男達は皆勇敢に戦い、子供とはいえあの中で最も年齢の高い少年ですら正々堂々私に立ち向かってきました。

 故に私も騎士として約束を果たさねばならなかったのです。

 そして、単純に私が掠奪が嫌いだからですねー」


 答えると、女王陛下はフッと口元を緩める。


「わたしはお前を勘違いしていた。

 やる気も愛国心も、名誉も、何なら人の心すら無いと思っていた」


 失礼過ぎて笑う。


「御言葉ですが、金貰って騎士として宣誓した以上は私は近衛騎士として最低限のやる気も愛国心も名誉も、人の心も持ちます」


 失礼な。


「ふむ、よし。

 お前を近衛銃砲騎士団の団長に任命する」

「はぁ?

 何ですか、そのじゅーほー騎士団とは?」

「銃と砲を装備する私直属の騎士団だ。

 本来はミュルッケンの所に銃士隊や砲隊を作ろうとしたが、ミュルッケン以下多くの者が拒否してな。

 で、この際お前を団長に置いて新しく銃と砲を装備した部隊を新編する事になった」


 はー……


「新米が一年足らずで騎士団長になってそれこそ反対出てきませんか?」

「馬鹿奴。

 ゴートデーモンを15分で殺し、近衛騎士団長に土をつけ、フル装備のドラクロア相手に1時間粘れる奴を団長にしないとなると、私が他の近衛騎士から恨まれる。

 それに、各団長から新米のお前が活躍すると他の近衛騎士の肩身が狭くなると文句も来ている」

「はぁ……そんなもんっすかねぇ?」


 よーわからん。


「そんな物だ。

 空を飛び火を吐き一晩で大都市を灰燼に還すドラゴンを恐れ敬う者は居ても嫉妬する者なぞ現らん。

 お前はそう言う存在だ」

「私はドラゴンと?」

「その通り」


 陛下は再びフッと笑う。


「近衛銃砲騎士団では少し名が酷い。

 近衛竜騎士団と名乗れ」

「はぁ……了解しました」


 何やろ、人を人でなしと呼んだかと思ったらドラゴンとか言い出したぞ。


「お前に団新編の権限を与える。

 王立軍からお前が使えると思う人材を引き抜いて来い。人員は砲を30と銃兵は300人で編成せよ」

「わかりました」


 何か凄い面倒臭い事になった。酷く嫌だ。

 砲兵隊ってどれくらいの編成なんやろ?てか、この世界の大砲ってパトリオットとかパイレーツオブカリビアンに出て来る奴だよなー

 丸い弾飛ばす。


「では、編成に付いて王立軍からの人員引き抜きの許可を書面にてお願い申し上げたく」

「ああ、任せろ」


 陛下はサラサラリと書類を一筆認めてくれた。これで面倒ごとは回避できるだろう。


「ありがとうございます。

 そして、待遇面での話ですが」

「うむ。

 王立軍は殆どが平民階級。近衛は最低限騎士階級だ。平民達は給料は王立軍の騎士と同じ額を与え、騎士は近衛騎士と同じとする。

 素行が悪い者は処刑する。良い者は一代限りでその地位を上げても良かろう」


 傍にいた家臣が非常に驚いた顔をする。そらそうだろう。一代とはいえ平民が騎士に、騎士が貴族になれる可能性があるのだから。


「それも書面に認めて頂きたく」

「うむ」

「しかし、当面は竜騎士団の隊舎はこの城に作れない。理由は分かるな?」

「はい。

 単純にスペースがありません」

「故に要塞に近衛竜騎士団を置く。それも認めよう」


 陛下は次々と書類を書いて私に渡す。

 うむ、これだけで十波乱近く起きそう!取り敢えず、そんな訳で謁見は午前中一杯掛かった。

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