第20話 女王陛下の近衛騎士

 やっとこさ城に戻って来た。

 やっとこさ戻ってきたのでユーリの身だしなみをどうにかしてやることにした。私の小隊には金貨を5枚ほど小隊軍曹に渡して暫く休めと別れさせた。

 ユーリに関してはスカートが伝統衣装というのでそれに準じた服装を作ってやることにした。近衛騎士なのでそこら辺は国軍より融通が効く。


「サブーリン」


 仕立て屋に採寸させているとユーリが話しかけてきた。


「どったの?」

「俺もあんたみたく強くなれるかな?」

「えー?知らんけど、その為の努力すれば、まぁ」


 知らんけど。


「取り敢えず、ドラクロア副団長に君を預けてー」

「あんたがやってくれんじゃないのか!?」

「えー?

 だって、私、人育てるとかやった事ないし。そう言うのドラクロア副団長好きそうだから君を預けるのさ」


 服は1週間分の7着、下着とかも頼み小脇に抱えて王城へ。城に向かい、女王に謁見を頼む。暫く待つと明日の午前に来いと言われるので第二近衛騎士団の部屋に向かう。


「ドラクロア副団長ー」

「何だい?」

「この子預けるから私の修行に付いて来れるくらい強くしてー」


 副団長の前にユーリを置く。


「何だいこの男か女か分からないひよっこは?」

「コイツのにーちゃんは王国軍の騎士を三人一撃で斬り殺したんだよねー」

「そうだ!

 兄さんは強かったんだ!」

「まぁ、私の敵じゃなかったけど」


 副団長の机の上に金貨を3枚置く。


「これは?」

「お金?」

「見りゃわかる。

 何の金かって聞いてんだ」

「副団長への信頼と約束を可視化した物?」

「何わかんねぇこと言ってんだい。

 まぁいい、任せな。期限は?」

「んー……」


 副団長を見てから周りを見る。そして、ユーリに目を落とす。


「本人が納得するまで?」

「何だいそりゃ?

 まぁ良い、一人前にしてやるよ」

「だってさー

 揉みくちゃにされると良い。君は蛮族だ。蛮族魂見せてやれ」


 ユーリの肩を叩き副団長に預ける。

 要塞に向かうかな?馬に跨り要塞に戻る。例によって下馬の場所で降りて部屋に戻る。部屋に戻って、服を脱ぎベッドに寝転がる。


「疲れたー」


 気が付いたら寝ていた。起きると日は沈んでいたのだ。空腹で起きたと言うのが正しいだろう。

 なので部屋から出て売店へ。要塞周りには露天とか一切無い。理由は防諜。殿下が厳しく規制しているのだとか。不満が出そうだが24時間営業の売店がある。

 そこでは様々なものを売っており厳格な審査を通り抜けた者が販売しているらしい。


「いらっしゃいませー」


 店に行くと丸い大きめのメガネをかけたソバカス顔の少女が本を読みながら店番をしていた。利用する兵士の姿はまばらで私を見ると大慌てで去って行った為に今は誰も居ない。

 何かの部屋だったところをぶち抜いて大きめのフロアを確保した様な作りで様々なものが置いてある。

 取り敢えず食べ物が欲しい。しかし、食料品コーナーは干し肉とかしか無かった。しかし、良い匂いはする。

 何処から匂ってるのか彷徨うと、どうやらカウンターだった。カウンターに向かうと手書きのメニューボードが掲げられている。


「ふむ……」


 取り敢えず、バーガーがあったのでそれをポテトと林檎のジュースと合わせて頼む。


「暫く待って貰っても?」


 頼むと店番はめんどくさーと言う顔で告げる。


「あー……君が作る感じぃ?」


 料理したことなさそう。


「ええ、そうですねー」

「ならいーや。

 すぐに出来るやつ」


 何か料理も下手そうだし。


「待って。貴女、私がバーガーすら作れないと思ったの?」

「えー?うん。

 良いよ無理しなくてー君も嫌そうな顔したさしさー」


 何でも良いから早くして欲しい。


「心外です。

 そこで待っていてください。貴女にとっておきのハンバーガーを出して見せます」


 そう言うのいらなーい。


「お腹空いたからさー何でも良いんだ。早く頂戴?」


 カウンターに金貨を投げる。金貨はいっぱいあるんだ。団長が毎月くれるから。


「君等さーお金貰って物売るのが仕事なんでしょ?

 君のプライドとかまーでも良いのほら、これあげるからさーから貰ってくよ」


 脇にあった干し肉の纏めたのを買って売店を後にする。この売店、めんどくさいのが居るから今後使わない様にしよう。干し肉を齧りながら馬で街に向かう。

 街に入ると武装した山賊みたいな連中が居た。なんだあれ?


「おーい、そこの武装集団」


 馬を武装集団の前に持っていく。剣持ってきてよかった。柄に手を置いて全員を視界に置く。馬の腹を軽く踵でリズム良く叩いて待機。


「俺たちの事か?」

「そうとも武装集団。

 君等は他国から来た冒険者とか言う連中かい?」

「そうだ」

「なんか文句あんのか?」


 何やら敵対的。何しに来たんだ?冒険者は武芸に秀でた者で素行が悪い者が多いと聞いた。問題を起こされても困る。何なら武器持ってるし。

 何してんだろーか?なんて考えていたら弓矢を持った奴が弓を手に持つ。それはあかんやろ。


「おい!

 弓から手を離せ!」


 剣を引き抜いて周囲を見る。すると警邏の兵士が走って来るのが見えた。冒険者達も剣を引き抜くと円陣を組み出す。魔術師は杖を構えてブツブツやり始めるので喉を潰してやろうか考えるが、それをやると皆殺しにしなくちゃいえなくなるので止めた。ダルイのは嫌いよ。


「弓を握ってるから注意して!」


 私が言うと警邏の1人が甲高い笛を吹き鳴らす。

 それに合わせて周囲から剣や槍を持った警邏が飛んできて囲う。あーあ、大ごとになった。


「武器を納めろ!」

「大人しくしろ!」


 警邏の兵士達は震えていた。まぁ、冒険者はなー自分らより良さげな鎧とか武器持ってるし。


「近衛騎士サーシャスカ・サブーリンが国軍騎士が来るで支援する!」


 声を張り上げて兵士達に告げる。


「つーわけでー暴れても良いけど、そうするとお前達は死ぬ事になるぞぉー」


 馬から降りずに冒険者を見る。ゆっくりと馬を歩かせて冒険者達の周りをクルクル。10分ほどして馬に乗った騎士達が飛んで来た。


「近衛騎士サーシャスカ・サブーリン。

 そいつ等に声をかけたら武器を構え出した。で、こうなった」


 素早く事情説明をする。国軍騎士はわかりましたと頷き、後を任せろと言うので私は後を任せて退場。

 近くの酒屋に向かうのだった。

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