第19話 女騎士と男の娘
蛮族の男の娘を手に入れた。
「チェスト族相手に何で王国軍騎士は負けたんだろうねぇ?」
私の鞍の前には蛮族の少年、ユーリが乗っている。薩摩隼人な攻撃方法をいなして顎を殴りつけてやった。一撃で気絶だ。で、彼の部族は生き残った物と捕まえられた女子供を引き連れて帰る事にした。
殿下にぶん投げてやる。
「小隊長。
あんな事して、歩兵達に恨まれますよ」
小隊軍曹が後ろから声を顰めて話しかけてきた。
「文明人の闘い方をしなよぉー
何の為に娼婦を連れて来てるんだい?
現地人とやるにしても金を払ってそれなりの礼儀を尽くさなきゃねぇ?」
馬を反転させて列を成して歩く歩兵達の横に。
「強姦は猿でもできる。
猿と人間の違いは何か?それは高度な文明を築けるかどうか、だ。
理性的に生きなよ。戦争だってルールはある。君達さぁ、積もり積もった恨みで背中刺されるぞぉ?」
ねぇ?とユーリを見るとユーリは何も言わなかった。
「君たちの大好きな殿下に聞いてみると良い」
ハッハッハッと笑い、馬を小隊の方に。
「さてユーリ君」
「何だ」
「君は見込みとかそういうのどうでも良いから私と同じ動きができる様になってもらいたい」
ユーリの頭をポンポンと撫でる。風呂にほとんど入らないのか、汚いので帰ったら速攻で風呂に入れよう。
「あと可能なら毎日風呂に入れ。君は汚い。
汚い男は嫌われるぞぉ?」
それから駐屯地に帰り、保護した原住民達を王都まで、正確には殿下の所まで届けろと告げる。
「今生の別れではないが、暫くの別れだ。
挨拶をしていいよぉ」
ユーリを馬から下ろしてやり、小隊を振り返る。
「はい、じゃーごくろーさま。
後は小隊軍曹の指揮で解散して良いよー」
バイバイと小隊を解散させる。ユーリを引き連れて私の部屋に。部屋は私の寝る場所に今まで使って無かった小姓が寝る部屋の二つあり、ユーリはそこに寝かせる。
小姓自体はほとんどの騎士が持っており、小姓が馬の世話や鎧をつけたりの手伝いをするのだ。
「さて、君の村は綺麗さっぱり焼かれてしまった。
服が無いのが困るなぁ」
取り敢えず私の服を持って来たが体格差のためにダブダブだ。
「取り敢えずこれでいいよ」
そう言ってユーリは長めの毛布の真ん中に穴を開けて貫頭着のように着て、腰にベルトをしてオッケーと言い出した。
「それは私が流石に怒られる。
部隊の兵士達が居る天幕地域を回って服を集めよう」
ユーリに合う服を探すと当たり前だが出てこない。最終的に聖騎士団に所属するシスター見習いの一人が着ていたシスター服の余りがピッタリという事で申し訳ないが着てもらうことにした。
当たり前だが、私が近衛騎士だからこんな前線の駐屯地でも部屋を与えられている。うちの小隊も私以外全員天幕生活してる。
「スカートしか無くてごめんねー」
「ん?何か変なのか?俺の部族は男も腰布を巻いてるぞ」
なるほど、スコットランドかー
「キルト柄のスカート用意してあげるねー」
「おう!」
そんな訳で本人的には民族衣装なのでスカートに抵抗は一切ないし普通に似合ってて可愛いので良しとした。
「しかし、君は私を恨んだりしてないのかい?」
「……んー恨むのは無い。アンタは強い。兄さんを負かしたし、俺も一撃でやられてしまった。
俺達の部族は一騎打ちで敗れたら遺恨は持たない。アンタは女だが関係ない。強いのは事実だ。寧ろ、俺はこうして命を助けられ奴隷でも無くアンタから剣を教えて貰える。
俺はコーサ族とガルムビルの名に掛けてアンタに尽くす」
「なるほどなー律儀だねー」
可愛い可愛いと頭を撫でようとして、風呂に入れてないのを思い出す。
「取り敢えず、君を風呂に入れるところから始めまーす」
小脇に抱えて湯船のある天幕に。中に入ると侍女達が風呂の準備を整えて待っている。
「この子洗うからー
ついでに私もお風呂ー」
着ている服を脱ぎ、ユーリを侍女達に渡す。
侍女達は止めろと騒ぐユーリを一瞬でひん剥くとドボンと湯船に放り込んだ。
私も湯船に入ると侍女がお湯をかけますと私とユーリの頭から湯をぶっかける。
それから液体状の石鹸を頭に掛けるので私がユーリの髪を洗ってやる。侍女の一人が私の頭をやる。
「ほら暴れるな。
目を開けるなよー」
「なんだこの液体!」
「石鹸だよ、石鹸。
なんか灰とかなんか混ぜると泡立つんだってー」
確か、灰にお湯注いでその後灰汁を取って獣脂と混ぜると出来るんだっけな?実家の近所で作ってたけどあんまり覚えてないや。
それにしても、ユーリはあんまり泡立たない。一度水をぶっかけ再度洗う。少し泡立つようになったがまだまだだ。数度髪を洗ってやると漸く綺麗になった。
そのご、体を洗ってやる。スポンジなんてものはないから手で擦るのだ。股間に手を伸ばすとそこは止めろと手を払われる。見ればユーリジュニアがボッキしてた。
「なんだー?私を見て欲情したかー?
私に勝てたらお前を婿にしてやってもいいぞー」
ワッハッハと笑い指でデコピンをしてやった。
「こんな辱めを受けたの初めてだ!」
ユーリが涙目で私を睨む。
「ハッハッハッ、死ぬ事以外は擦り傷だよ。
悔しかったら私より強くなると良い。挑戦はいつでも受けよう」
それから体の隅々まで洗うのは侍女に任せて自分の体の手入れ。体の隅々まで洗う。足の指とかそれから髪をすいて貰いノミとかシラミを取り除く。
ユーリも勿論やって貰ったら死ぬほど出て来た。一回お湯を張り替えたもん。水は真っ黒だった。
「ユーリ、君は風呂嫌いなのかい?」
「1週間に一度の水浴びはしてた!
お前らが攻めて来てから水浴びの日は8回流したけどな!」
つまり、二ヶ月風呂に入ってなかったのか。クソばっちいじゃん……
「なーほーね」
それからお互いに綺麗になり体の芯から暖かくなるまで湯に浸かってから上がる。
湯上がりは冷たい果汁ジュースだ。
この世界は魔法と言うか魔術が普通にあるのでお風呂とかは前世より楽に入れる。流石に無からの生成は効率が悪すぎるので水源を確保出来た状態でしかこんな大量の水は使えないが。
ユーリにジュースを飲ませ、食事をたんまり取らせる。それだけで日はもう完全に沈んでしまった。
「まぁ、帰るまではゆっくりしなさいよ。
帰ってから訓練するからさ」
「……うん」
「それと、吟遊詩人呼んで楽器を弾かせるから何か用がある時は大きな声で呼ぶかこっち来てね。
そっちの部屋だと声とか聞こえないと思うし。んで、喉乾いたら水差しで水飲みなよー」
「分かった」
じゃあお休みとユーリをベッドに寝かし、部屋を後にする。それから商人と付いてくる吟遊詩人の内、バイオリンみたいな楽器を持ってる奴を呼びつけ、テンポのゆっくりとした曲を2時間ほど弾かせた。
金貨を一枚くれてやったら一晩中でも歌うと言った。ユーリは多分泣いただろう。知らんけど。
翌朝、ローサに起こされてユーリを小脇に抱えて朝食。外にある長テーブルに腰掛けてローサが運んでくる食事を待つのだ。
ユーリは一緒に座っていたらローサがあんたはこっちと連れて行ってしまい居なくなった。
朝食が来るまでぼーっとしていると私の向かいに双子将軍が座った。
「おはようございますぅー」
「おはよ」
「おはようございます」
素気ない。
取り敢えずぼーっと座っておく。暫くするとローサとユーリが食事を乗せた盆と共に帰ってくる。
「おはようございます、将軍」
「ええ」
「おはよ」
ユーリがンっと私の前に盆を置くと私の隣に座る。
「はい、ありがとー
この二人が将軍ねー」
「?」
「一応は私の上司的なポジションの人」
「偉いのか?」
「私より少しねー」
朝はパンとスープ。スープにパンを浸して食べるのだ。
「ふーん。
強いのか?」
「さぁ?
そう言うの興味ないからなー」
答えるとユーリは不満そうだった。
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