蛮族の男の娘の感想。

 兄さんは俺たちの部族で最も強かった。母さんの血を濃く引いた俺は見た目が女の子みたいだと周りに馬鹿にされて毎日喧嘩していたが、兄さんだけは俺を一人の男として見てくれた。

 そんな兄さんは王国の女騎士に殺された。


「コイツ男だぞ!」


 俺たちの村は降伏せずに最後の一人まで戦うと言う選択をした結果、圧倒的な装備と兵力で蹂躙されていた。蹂躙される村では敵兵達が王国化と言う名目で男は殺し、女を犯すのだ。

 あの女騎士は来ておらず双子将軍と呼ばれる黒と白の双子とその配下の軍だけだ。僕等は捕まり、そして、僕は外見から他の女達と同じ様に犯されそうになっていた。


「えー何してんの君ら?」


 ゲスな笑いや悲鳴等が上がってる中で何故かその怠そうな声は耳に届く。その場に居た声の届く範囲の人間はみんな動きを止めて振り返ったり、驚いた顔で声の主を見る。

 昨日のあの怠そうな女騎士だ。


「小隊長、これは慣例です」


 女騎士の脇に控えていたおっさんが告げる。


「慣例、ねぇ……

 将軍に言われた命令は皆殺しでしょ?なんでレイプしてるの?」

「殺すぐらいならお、王国民の子を孕ませて生かしてやる方が国の為です」


 馬に乗らない偉そうな一人が答えた。

 女騎士はその鋭く細めた目を兵士から俺たちに向ける。馬から降りて俺の前に。


「君、男だったんだねー

 ごめんねーわからなかった。それで、君等男も犯すの?子供だし、孕まないのに?」


 女騎士が俺達の前に立つと振り返って兵士達を見回した。


「百歩譲って、反抗する連中の殺害は認めよう。仕方ない。抵抗をするのだから。

 だが、女子供を集めて犯すのは王国軍に相応しくない。この件は女王陛下にも報告する。私の記憶が正しければ、陛下はこの様な事を許可してはいない筈だ」


 女騎士は振り返って俺たちに告げた。


「君達は私の名の下に保護しよう。

 君、君はどうする?君が望むなら剣を君に渡して君達の選んだ最後まで戦うと言う望みを叶えよう」

「当たり前だ!

 兄さんの仇だ!」


 女騎士は頷いて脇にいた兵士から剣を奪うと俺に差し出して来た。俺が使っていた剣より上等な物だった。


「私が相手をする。

 君の望みは?」

「お、俺が勝ったら村の女や子供に手を出すな!」

「うん。

 負けたら?」

「負けたら、お前の好きにしろ」

「うん」

「で、出来ればこんな事はせずに殺すなら苦しまず殺して欲しい」

「良いよー保障しよう」


 女騎士はそれだけ言うと腰の剣を抜いた。剣は剣というより鉤爪の付いた棒だ。不思議な剣だ。


「なんだその剣は」


 思わず尋ねると女騎士は少し嬉しそうに凄いだろ?と笑う。


「見た瞬間にお気に入りになったんだ」

「そ、そうか」


 何故か少しうっとりと剣を掲げ出したので話を切り上げる。

 勝てる見込みは無い。振り返って叔母さんや近所のマーラー達を見る。母さんも居る。全員泣いていた。婆さん方は止めろと叫んでいた。


「しっかりやりなさい」


 母さんは静かにそういうと俺を抱き締めてキスをする。そして、背中を3回叩いた。


「準備おっけ?」

「ああ、俺はコーサ族のガルムビルが息子ユーリ!」

「王国近衛騎士団第五近衛騎士団団員のサーシャスカ・サブーリン」


 サーシャスカ・サブーリン。それが兄さんを討ち取った騎士の名前だ。

 剣を構え、そのまま大上段に振り上げる。一撃必殺。


「チェェリャァァ!!!」


 裂帛の闘志を吐き出しながらサブーリンに切り掛かった。

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