第18話 一騎当千のヤベー騎士

 さてはて、陛下にめっちゃ怒られて罰として前線に飛ばされた。近衛騎士の資格は剥奪されていないし、配置もそのままだ。


「でーまぁ、あれっすねぇ。

 なんか、陛下に怒られて最前線に飛ばされてきました。戦うのは好きなので正直あんまり罰になってねぇかなぁって思ってます。

 取り敢えず、バンバン敵陣突っ込んでいって功績上げましょーか」


 与えられた騎兵小隊を前に再度演説。


「小隊長殿は、近衛騎士をクビになったのですか?」


 小隊軍曹が私に不信感満載の目を見せる。失礼な奴め。


「いや、何かまだ近衛騎士だねぇ。

 んで、戦術だけどーそーゆーの分からないし敵は正々堂々戦うの好きだからー取り敢えず、名乗り上げて戦うって感じでー」


 敵は蛮族だ。我々の様な軍隊とは違う。部族って奴だ。


「出てこい!」


 上裸の男が叫んでいた。さっきから。私が演説してる時も。ずっと。

 で、騎士なら一騎打ちに出てこいとずっと叫んでおり王立軍の騎士をかれこれ3人ぶっ殺してる。凄い強い。故に誰もがしり込みしてる。


「ねー誰か戦いに行きなよー

 終わんないじゃーん」

「小隊長殿が行かれはどうでしょうか?」

「えー?

 私が出ても良いけど、そうするとさー王立軍の立つ瀬無くない?」


 ねぇ?とローサを見る。

 ローサはサブーリン様が行けば一発です!と微妙に会話になってない返答をしてきた。もうそろそろ日も暮れそうだし、王立軍の将軍の許に行くことにする。


「取り敢えず、将軍の所行ってくるね」


 馬の腹を蹴って歩みを進める。カッポカッポと音を立てながら歩きつつ上裸を見る。男は私に気が付くとニヤリと笑ってきた。


「そこの女ぁ!良い目をしている!」

「そりゃどーも」


 手を挙げてそれにこたえ、将軍に近付く。


「将軍」


 私の言葉に将軍は振り返る。

 ジャンヌダルク将軍だ。あの黒と白の。


「何よ」

「下がりなさい近衛騎士」

「いやぁ、私も下がれるなら下がりたいんですけどぉ。

 いつまでも此処でずーっとグダグダしてるのも時間の無駄なのでぇ私が行ってさっさとあの蛮族殺しちゃった方が速いかなぁ~って」

「貴女の手を借りるまでもありません」

「誰か我こそはと言う者はいないの!」


 白が断言し、黒が叫ぶ。居たら此処までグダついてないんだよなぁ~

 面倒臭いなぁ~


「我こそはと思わん騎士は前に出よ!

 あの勇敢な蛮族を討ち取った者には近衛騎士、サーシャスカ・サブーリンの名において金貨1枚の褒章を与える!」


 暫く待つが誰も居ない。ローサを見る。


「行く気ある?」

「金貨一枚は目が眩みますが、命の方が大事です」


 らしい。


「ん~……じゃあ、本当は嫌だけどこの手を使うかぁ」


 はーっと大きくため息が出る。

 そして、将軍達の前に。


「ジャンヌ・ダルク両将軍に近衛騎士サーシャスカ・サブーリンが問う」

「何よ?」

「私は恐れ多くも女王陛下直々に命を受けこの戦線に来ている。この戦いをさっさと終わらせろ、と女王陛下から言われているのだが……将軍は女王陛下の命をどのように心得ている?」

「何が言いたいの?」


 黒い方が睨んできた。


「簡単に言えばですねぇ将軍。

 貴女達、やる気ありますぅ?」


 馬をカッポカッポと参謀陣に向かいつつ大きな声で叫ぶ。


「近衛騎士サーシャスカ・サブーリンは、忠誠な騎士として王立軍が戦わない理由を女王陛下への不信にあるのではないか、と疑っている!

 私の目には、王立軍が女王陛下の命に反抗しているのでは無いかと疑っている!

 女王陛下の軍として!最高指揮官たる女王陛下の偉大なる命令に逆らうものは須らく縛り首になるぞ!さぁ!戦え王立軍!貴様等は望んで陛下の軍に入ったのだぞ!

 戦い方が分からないか!ならば私が見せてやる!」


 馬の腹を蹴って上裸の蛮族の前に。

 そして、馬から降りて男の前に。


「来い!」

「舐めるな女ぁ!」


 男は手にした斧を大上段で構えて突撃してくる。ふむ。これはアレだな。示現流だ。振り下ろされた斧を左手でいなし、そのまま右手で顎をチョップ。脳震盪を起こして男はそのまま気絶した。


「これが戦い方だ!

 騎馬隊突撃よーい!!」


 馬に乗り、槍を構える。ローサと小隊軍曹が叫んだ。


「「突撃よーい!!」」


 そこからは一方的だった。

 馬を将軍たちの方に持っていく。将軍たちは凄い目で睨んできた。


「やる気、ありますぅ?」


 嘆息してから前線の方に戻る。

 それからはもう、前線は滅茶苦茶だった。取り敢えず、騎兵を横合いから突っ込ませて敵を壊乱。その後は銃隊を持って七面鳥撃ちだ。敵はものの数十分で居なくなった。杜撰だな。

 それから戦士達は皆最後まで抵抗して王立軍により殺された。降伏する者はいないらしい。


「戦争はやだねぇ」


 死体の片付けをしている光景を見ながらそんなことを独言ていると、背後から複数人が近づいて来る音。振り返るとジャンヌ・ダルク両将軍とローサに一騎討ちでボコした戦士が縄で縛られていた。


「どうしたんですかぁ?」


 尋ねるとローサが捕虜にお前の口から言えと男に告げる。


「戦いの結末は聞いた。

 皆が勇敢に戦って死んだのに、俺だけおめおめと生き残るのは戦士として情けない。

 せめて、お前の剣によって殺されたい」

「えー?

 捕虜を殺して良いんっすかぁ?」


 将軍達を見る。


「本来はダメに決まってるじゃない」

「でも、殺せ殺せと五月蝿いしコイツのせいで兵士が3人重傷なのよ」

「成程ぉ、つまり脱走しようとしたとか何とか書類上にしてしまえば良いと」

「そうよ」


 なら良いか。


「お前は相当強いみたいだけど、我々には降らないわけぇ?」

「降るつもりはない。

 我々は負けた。負けた者は死ぬのだ。それが自然の掟。さぁ、俺を殺せ」

「りょーかい」


 死の刃を抜く。


「そんなナイフじゃなくて腰の剣が良い」

「えー?ワガママー

 それにこれは死の刃って言う国宝級の魔剣らしいよー」

「だとしても、お前の日頃使っている剣が良いのだ」


 剣っつってもなぁー


「私の剣これだしー?」


 火かき棒。


「私の剣貸してあげるから、それで首刎ねてやりなさいよ」


 黒い方が呆れた顔で腰に提げていた剣を差し出して来た。引き抜くと禍々しい黒い炎を纏っていた。


「うわー……これで良い?」

「寧ろ、王国の双子将軍が1人、黒ジャンヌ将軍の剣だ。これ以上の名誉は無い」

「あ、そう。

 んじゃ、首だしてー」


 私の言葉に男はその場に膝立ちになり、頭を下げた。


「言い残すことは?」

「村の女子供には手を出さないでくれ。

 弟には約束を守れずにすまない、と」

「はーい」


 それから首を刎ねる。凄い良い切れ味だった。


「ありがとうございまーす」


 血払いをしてから剣を返す。

 さてはて、村かー


「明日は村を攻めるので?」

「そうよ」

「そこでサブーリンさん。

 降伏勧告しに行って下さいませんか?」


 えーめんどくさいなー


「んーまー良いっすかどぉ……」


 取り敢えず、刎ねた首を拾い上げてローサに渡す。

 首返してやれば言うこと聞くかなぁ?


「それ、明日使うから綺麗にしておいてぇー」

「へ、へぇ!?」

「これ、小隊長命令ねー綺麗に化粧とかもしてあげるのよー」

「わ、わかり、ました……」


 ローサが泣きそうな顔で首を受け取りおっかなびっくりに去って行った。


「死体も回収して布とかで包んで丁重に扱うよう指示して下さい。

 そして、馬車に乗せるように」


 そして、翌日。私はローサを引き連れて降伏勧告。村の前には年寄りや子供たちが武器を片手に立っていた。


「えーとぉ、私はー王国の近衛騎士サーシャスカ・サブーリン。

 貴方達に降伏勧告しに来ましたー」


 馬車を前にとローサに告げる。

 馬車を前に出して我々は後ろに少し下がる。


「その馬車にはあなた方の家族、つまりー父親とか兄貴とか弟とか旦那さんとか息子とかなんかそう言う感じの方々の遺体が乗ってまーす。

 取り敢えず回収してくださーい」


 そう告げて暫くするが誰も近寄ってこない。しょうがないのでとっておきの生首を取り出して村に。


「それ以上近寄るなら射殺す!」

「どうぞーどうせ当たらないのでー」


 ヒュンと矢が飛んで来て足元に刺さるので踏み折ってやった。

 次に矢が飛んで来て私の顔面直撃コースだったが、普通に剣で弾く。


「何だと!」

「下手くそー」


 矢を討って来た子供を煽るとさらに矢が飛んで来る。勿論落とす。

 そんなお遊びをして村の前に。


「はい雑魚乙でーす。

 これ、私と一騎打ちして死んだ戦士の首ねー」


 はい、と目の前で弓を射って来ていた女の子に差し出す。


「ッ!兄さん!!」


 あらー妹さんだった。


「貴女がお兄さんの言って家族ねー」


 はいと首を差し出す。


「降伏するか、皆殺しにされるか選んでなー

 明日の朝、もう一回私が聞きに来るからそれまでに答えを用意しておくこと。

 解答延期は無しねー降伏以外は皆殺しにするからねー」


 それだけ言って死体の山は荷馬車ごと置いて帰る。さーて、後はアイツらの決定を待つだけだ。

 帰ってから双子の将軍に報告して今日はもう終わり。

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