第22話 砲兵大尉が皇帝になれる国もある。

 午後になり、要塞に戻る。そのまま殿下の許へ。


「殿下に謁見したい」

「何の御用でしょうか?」

「近衛竜騎士団の新設にあたり、王立軍より人員と装具の一部抽出に付いての相談だ」


 部屋の前にいる兵隊に告げると兵士は大慌てで中に入っていった。そして、扉がバンと勢い良く開くと満面の笑みの殿下が私に抱き着いてきた。


「良くやったぞ!

 姉上を説得してくれたんだな!」

「違いますが?」


 それから暫く小躍りしてるのに付き合ってから貰った書類を全部見せる。


「ふむ、何故銃兵が300なんだい?」

「さぁ?そのくらいで良いのでは?」

「どうせなら一個大隊にしよう。

 砲兵はこれで良いかな。あとは何処の部隊を出すか、だね」

「各部隊から二番目に優秀な者を。

 出自に限らずで」

「分かった。

 それで団長は誰が?ミュルッケン?」

「いえ、私です。

 部隊設置も王城にスペースないとかで此処に置いておきます。

 まぁ、改めてよろしくお願いしますねー」


 殿下は何とも言えない笑みを浮かべていた。

 因みに、出向して〜と言うのは当たり前だが無くなりそのまま近衛竜騎士団として団設置準備隊の団長になり一年の準備期間を持って近衛竜騎士団の設立となる。

 以上のことを小難しい感じに書いた命令がこの後陛下の名で出て周知されるのだ。その先遣隊で団長たら私が来たみたいな感じ。


「分かった、第五団長。

 私の監視任務は?」

「継続中ですねぇ〜

 多分、私の団が此処に設立されたのもスペースの簡単と謀反が起こった直ぐに制圧するためだと思いますぅ。

 なので謀反は起こさないようにお願いしますねぇ〜」


 死の刃を撫でると殿下は苦笑した。


「私は未だ姉上の信頼を得られないか」


 そう言う殿下の顔は少し寂しそうだった。


「そう言えば、今日初めて謁見の間で陛下が座って面会して下さいましたけどぉ、あれって何なんですかねぇ?」

「本当か?」

「えぇ、そうですねぇー」


 殿下は目を瞑り、背もたれに体を預けた。

 それから殿下は話を変えると部隊編成と装備の話をし始めた。めっちゃ話逸らすやんと思いつつどーでも良いので晒した先に乗ることにした。その方が楽だし。

 それから1ヶ月ほど書類上での話と団立ち上げの話が広まるのを待つ事になった。


「で、募集に応じた兵士は居ない。騎士枠は辺境の三男四男坊。

 魔術師も似たような者か」


 シューゴーと集めたら王立軍で言うところの士官層しか来なかった。


「じゃあ、約束通り殿下選定の兵士をお願いしますねぇー」


 さて、目の前に集まった騎士候補達を見てから篩にかける為に演説をぶち上げる事にした。


「じゃー此処に集まった人達は私が率いる近衛竜騎士団の騎士候補という認識でーいぃーすかねぇ?」


 全員を見まわし、それから1ヶ月間で準備した実に単純な試験を課す事にした。


「明日、近衛騎士団長と勝ち抜き戦してもらうのでぇー今日は確りと準備して下さーい。

 君達の戦い方次第で合否が決まりまぁーす。場所は王城の闘技場でー武器は何使ってもいいでーす」


 頑張ってねーと告げ、解散させる。

 因みにこの集団にはローサもいる。私は何処にいるか探し出せなかった。100人以上いるからねー仕方ないね。

 隣にいる殿下も前に出る。


「君達は王立軍で様々な経験をした筈だ。

 腕は近衛騎士に勝るとも劣らないと自負している。まぁ、サブーリンの様な化け物クラス程ではないが、私に付き従った諸君等の力を発揮して見事近衛騎士になってくれ。

 諸君等は平民が唯一騎士になれる可能性のある道を拓かんとしている。君達と、君の子供たちの為に全力を尽くす事を願う」


 あらー?この人自分が何言ってるのか分かってんのかしらねぇ?


「殿下、それは少し違いますよぉ〜」


 希望を持たせたところで申し訳ないがその希望を打ち砕かせてもらう。


「確かに陛下は私の騎士団で功を立てた者に一代限りの騎士階級への昇進を認めましたぁーが、それは騎士階級の人達と交流を持てる可能性をゲットしただけなのでぇー

 君達平民の子供が騎士階級になれるのはまぁ、無理かとー

 勿論、騎士階級になり何処ぞの騎士の娘か息子と結婚出来ればーですがぁ、正直、地方騎士の三男坊とか私みたいな男も生まれず婿養子探すみたいな所じゃないと多分子供が騎士になれる可能性はないかと思いまーす」


 私な言葉に全員がざわつく。


「まぁ、私も鬼ではないので陛下に凡ゆる戦乱に出陣して君達に功を立てる機会を作ってあげますー

 無茶を無理で押し通して無謀を行うつもりなので死ぬかもですねー」


 それでも良ければ着いてきてくださーいと注意しておくと全員が殿下を見た。殿下はそれ言っちゃう?と言う顔をしてこちらを見る。


「これは私の優しさですねぇー

 因みに私も地方騎士なのでぇ、絵物語に出てくる主人公ですねぇー吟遊詩人も私の歌歌ってくれても良いんですけどねぇ?」


 困った困ったと笑って全員を見るが誰も笑わない。なんだよ、今のは笑う所だぞ?

 まぁ、良いか。


「それじゃあ、また明日ー

 因みにー明日の試験で私と剣を交えれたら私の直属にしてあげまーす。頑張ってねぇー」


 解散と告げて部屋に戻る。

 部屋に戻ると騎士団長が居た。共周りの騎士も連れていない。ふむ。お忍びか?


「あ、団長」

「やぁ、サブーリン近衛竜騎士団長」


 元気にやっているかい?と笑っていた。


「ええ、ボチボチですねぇ。

 明日は宜しくお願いします」

「うん。

 実に楽しみだね」


 取り敢えず、コップに葡萄酒を入れて出す。


「エウリュアーレ殿下の口添えで随分と大きな騎士団になったね」

「ですねー

 まぁ、これで殿下の謀反が起きた際に素早く鎮圧出来るので良いかとー」

「うん。

 それと、我々近衛騎士からも志願者を募って君の団に編入させようと思う」


 団長を見ると相変わらずニコニコしているが、その目はしっかりと笑っていない。

 なーほーね。


「了解しましたー

 その騎士達は各小隊に配属しますねー私の周りにも1人置きましょー

 男ではなく女の子でー」

「うん。

 君は理解が早くて助かる。君が裏切るとは思わないが、一応ね」

「はいー

 そーですねー防諜の基本ですからねー私も知らぬ間に謀叛組に加わるのは嫌なのでー」


 近づき過ぎて疑われ出したかー残念。でもまぁ、仕方ない。団長から疑惑を掛けられたけど陛下からの信頼は勝ち得ている、と思いたい。

 まぁ、何とかなるよなぁー

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