第15話 所謂ボス戦
それから森を行軍する事三日。
道中にあるゴブリンだのオークだのという魔物の棲家を根刮ぎ潰し、一匹残らず殺していく。
軍隊というのは凄い組織であり、命令指示一つで完璧に物事をこなしてしまう。
「どうだい、私の作った軍隊は?」
エウリュアーレ殿下は自慢する様に聞いた。
私の作った、なるほどね。確かに国軍の基礎は彼女が作り上げた。十数年でここまでの物にした。
「陛下も満足なされるかと」
しかし、国軍は陛下の物だ。面倒くさい役廻りを押し付けられたかな?
そんな訳で進軍していると背後がドンと吹き飛んだ。なんの爆発?と振り返るとクソデカい蛇の尻尾が見えた。直後前方も爆発した。えぇ?と見ると今度はクソデカい蜘蛛の足。
「お、今回のメインターゲットだ。
陣を敷け!方陣だ」
殿下の命令はすぐに伝わり兵士達は動揺しつつも四角い方陣をつくる。周りの木々は何と魔術師達が吹き飛ばしてしまった。
魔術の無駄遣いー
「で、どうするので?」
「寄って来た所を殺す」
単純明快。嫌いじゃない。
「なるほど。シンプルで良いですね。
では、あれはどうするので?」
「あれ?」
上にはデーモンと呼ばれる様な悪魔が飛んでいた。そして、私が指差したのに気が付いたのかズドンと落ちてくる。殿下と私の間に。
「おお、なんか降って来た」
「私を見つけるとは、中々に冷静ですね」
デーモンは丁寧な言葉遣いだった。山羊の頭、人間の女の体、山羊の足。コウモリの様な羽を背負っている。
「貴方の名前は?」
「サーシャスカ・サブーリン。
お前は?」
「貴女達はヤギ頭の悪魔と言います」
「はぁ……殿下知ってますぅ?」
奥にいる殿下に尋ねると殿下はハッと我に帰る。
「全員外を警戒せよ!
中はサブーリンに任せよ!」
「えー?
やるんすかぁ?めっちゃ強そうじゃ無いっすか」
強そうだなぁ。めんどくさ。腰の剣を渋々抜く。
「私の名前を聞いても尚戦いますか?」
「そう言う命令出されちゃったんでぇ。
貴女が帰ってくれるなら良いんっすけどね」
「無理ですね。
仕方ありません」
直後、手に持った変な杖で殴られる。剣で去なすのが間に合わずまともに受けてしまう。衝撃波 は凄まじく普通に飛ばされる、方陣を組んでいた兵士たちの背中に激突。
「ごめーん。
私のせいじゃ無いよ」
やれやれと剣を見る。折れてはいないが、少し曲がってる。
「やーねー」
「今のを受けて尚かつわざと飛んでダメージを吸収したのですね?」
「そうそう」
「成程、殺すには惜しい。貴女は生き延びてくださいね?」
直後、凄まじい勢いで突きが繰り出される。1on1なら冷静に慣れば余裕で躱せるわ。
「おー凄い凄い。
中々に速いし強いし、ハッハッハッ」
「笑ってる場合か!!
お前が負けたら我々全員死ぬんだぞ!」
殿下は中々にビビり散らしているし殿下の側近達は剣を抜き庇う様に立っているが震えている。
「えぇ?私頼みはキツイなぁー
それより、周りの魔物も気をつけてくださいよ?」
「わかってる!そっちも対処してる!!」
殿下はビビり散らしながらも確りと指示は出している。
「私を前によそ見ですか?」
「ええ、まぁ」
「私だけを見てください。
貴女の相手は私ですよ?」
突きの乱打が終わるや否や山羊の足による蹴り。凄い強い。逸らしてやっても風圧みたいなので頬が切れた。
「あはー強いねぇー
束縛強いと嫌われるよぉ?」
ねぇ?と殿下に言う。
「真面目に戦え!頼むからぁ!!」
「えぇ?真面目だよ?本当に」
ねぇ?とヤギ頭の悪魔に言うと悪魔は此方を睨んでくる。
「私だけを見てと!言ってるでしょう!!」
口からビームが出る。それを避けたら後ろの陣にぶち当たり何人かが吹き飛んでいった。
「あ、ごめーん。私のせいじゃ無いよ!
ビームはずるくない?何それ?」
「魔力の奔流です」
「成程ー」
よく分からんから適当に流す。
剣を見ると、刃が所々かけていた。ふむ。この剣もいい奴なんだけどなぁ。まぁ、いいか。
杖による薙ぎ攻撃。芸がない。杖を跳ね上げる。そのまま一歩近づく。悪魔は返す刀で袈裟斬りの様な動作。下に逸らして地面を切らせる。
そして、さらに一歩近づくと後ろに飛んで逃げられた。
「強いねぇ、本当に。
初めて化け物と戦ったけど、こりゃ凄い。他国の冒険者ってのが崇められるのも分かるねぇ。
冒険者って見たことある?」
「ええ、有りますよ。
私の敵ではありませんでしたが」
「へー」
右手に持った剣をクルクル回しながらそれを歩いて追いかける。
「私だけを見てと言う癖に追いかけたら逃げるのか?」
「逃げてません」
「逃げてるじゃんよー」
雑な突きが来るので軌道を反らせて間合いを詰めていく。剣はヒビが入っていた。
「離れてください」
雑な薙払いを数回。全部跳ね上げて反らせてやる。
「えぇ?なんでさ?
仲良くしようよ。折角殺し合ってんだからさ。
目を見て話し合おうよ」
にっこり笑って攻撃を全て去なす。うん。余裕だ。モーションが全部わかる。
分かったところで、剣が折れた。
悪魔はニッと笑った。
「剣が折れましたよ?」
「うん。
まだ予備あるし」
火かき棒を引き抜く。
「何ですかそれ?」
「あ、やっぱ気になる?
私もさー一目惚れして買っちゃったんだよねー凄くない?」
突きが来たので逸らす。ヒビも欠けも起こらない。杖をトントン叩いてやり、遂にお互いまであと3歩の間合いになった。杖の内側だ。
「ハッハッハッ、まぁ、来世でやり直して来な」
そして、死の刃を投擲。山羊の悪魔の腹に深々と刺さった。
悪魔は一瞬驚き、その後すぐに穴という穴から血が出て来るとその場に倒れる。
「私を、殺した貴女の名前を……もう一度お願いします」
「サーシャスカ・サブーリン」
「我が主人、サーシャスカ……
私は貴女にこの身を捧げましょう」
「いらないでーす」
返事はなかった。
直後周囲からズダンダンダンダンと凄まじい銃声。見ると蛇と蜘蛛が襲って来ていた。そして、肉塊になって死亡。
「おーこの杖ってすごい軽いけど、滅茶苦茶硬い」
山羊の悪魔が持っていた杖を回収し、ついでにその豊満な胸を揉んでおく。
「サブーリン!」
殿下は私の方に寄って来た。
「良くやったぞ!!」
そして力一杯抱きしめられた。
良い匂い、かと思ったがオシッコ臭かったので漏らしたらしい。
「で、帰るので?」
「あ、あぁ!そうとも!
帰るぞ!帰るぞ!遺体を収容しろ!誰1人として残すな!
みんなで帰るぞ!」
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