第13話 近衛騎士は容赦せん。
殿下に案内されて行ったのは高級娼館。
「……」
入り口でローサは私と娼館を交互に見遣り、本当に入るのか?と言う顔をしていた。
「まぁ、殿下が入ると言うのだから我々に拒否権はない」
それに私は別段女が嫌いではない。男より好きだ。中に入ると殿下は困った顔ですぐ入り口に立っていた。
「何をしておられるので?」
殿下に尋ねると殿下はアレをと指差した。指の先は小汚い男が1人立っている。
「アレが何か?」
「何だお前は?
何人来ようが今日は我々東風の槍が貸し切っているんだ。さっさと出て行け。それとも何か?お前達も相手にしてくれるのか?」
男が下品な目を殿下に向けたのでとりあえず殿下を見る。
「どうします?」
「どうもこうも、ねぇ?」
殿下は苦笑するので頷いておく。そして、取り敢えず火かき棒で男の顎を砕いてやった。
「何してんのさ!?」
「えぇ?殿下の許可が出たので取り敢えず不敬を吐く顎を砕いたのですが?
殺しても良かったので?」
顎を押さえて蹲る男の頭に火かき棒を振り下ろそうとすると、殿下が前に出る。危ないなー
すんだのところで火かき棒を止めた。
「止めろ!お忍びと言ったろうが!」
「ええ、ですがお忍びだろうが何だろうが王族に対する不敬は基本的にその場で斬り捨てます。近衛騎士団のルールに書いてあります」
「今の君は王立軍だろう!?」
「いいえ?普通に近衛です」
取り敢えず、火かき棒のフックに男を引っ掛けて外に放り出す。扉を壊してしまったがしょうがない。
「何を騒いでるんだ?
交代に来てやったぞ」
そして、男を外に放り出したところに髭面の男が両腕に娼婦を侍らせて階段を降りて来た。
「あ?何だお前ら?
ルークは何処だ」
「誰でも良いだろう。
お前こそ誰だ」
男は娼婦達に下がれと声色を固くして告げつつ腰の剣に手をかける。
「ひほふへほ!」
そこにルークだと思われる男がフラフラと這いずる様に外から戻って来た。顎が砕けてるのでほひほひ言って何言ってんのかわからんかった。
「何だ!?誰にやられた!」
ルークは私を指差した。
「下品な口は砕かれてもしょうがないでしょう?」
肩をすくめると男は腰に佩びていた剣に手を掛ける。
「それを抜くと言う事は、我々に危害を加えると言う認識になるが良いか?」
「やめろ!」
そこに階段の上から声が掛かる。見ると若い男が立っていた。
「何をしている!」
「リーダー!
このアマがルークの顎を砕きやがったんだ!!」
「なに?」
リーダーが階段を降りて来て私の前に。
「お前は……サブーリン!!
お前はサーシャスカ・サブーリンだな!!」
「そうだけど?」
誰だコイツ。
「お知り合いで?」
ローサが私に耳打ちをしてくる。
「知らない」
「忘れたとは言わせんぞ!
5年戦争でのブルーダム平原の話だ!」
知らねーよ。
「何だその戦争と平原は」
「何だって、君の名を女王陛下に伝えるきっかけになった戦争と戦いだよ」
「……えぇ?
どんな戦いでした?」
戦争とか行きまくったたから忘れたぞ。
「どんなって、君が十回連続一騎打ちした奴だよ」
「10回?あーあー!はいはい!
あれかー最後の1人と戦ってる途中に剣が折れて、しょうがないぶん殴って気絶させた奴」
「その相手は俺だ!」
リーダーが怒鳴った。
「へー良かったね生き残って」
リーダーが腰の剣に手を掛けるので、先に引き抜く。こっちは本物。私の腰には剣が2本にダガーが1本。
「抜いても良いが、次は死ぬぞー?
お前、素手の私に負けてるんだろ?そんな私が剣を抜いたらお前、完全に死ぬぞ」
抜き身の剣を肩に乗せて腹でトントンと叩く。リーダーの動きに合わせてカウンターを入れれるように待機。
リーダーはグッと歯を噛み締めて私を睨み付ける。
「やめなーホントに。
お前、私に勝てないんだからさー
戦場出て恨み買うのは仕方ないけどさーそれを売られたら私は買うし次は売られない様に徹底的にするよー?
それと、今の私は近衛騎士。それと、この方はエウリュアーレ殿下。そこの男は殿下に無礼な口を利いた。本来なら今ごろ頭と胴体が離れ離れだよ?
殿下の慈悲で顎を砕くだけにしたけどさー」
どうする?と再度尋ねるとリーダーは剣から手を離す。
「二度と喧嘩売るなよー
次は剣に手をかけた時点で殺すからなー」
脇に這いつくばっていた男を見る。
「お前も、言葉遣いに気をつけろー女だからって舐めてると次は頸刎ねるからなー」
剣を鞘に納め、殿下を見る。
「で、どーします?
殿下は娼婦館で何したいか知らんっすけど」
「気分が削がれた。
別の店に行く」
殿下は不機嫌そうに告げると館を後にしようとし、それからリーダー達に告げた。
「私のことを喋ったらそこの騎士にお前達の首を刎ねさせに行くから死ぬまで黙ってるようにな」
殿下の言葉にリーダー達は頷いた。
やれやれ。
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